トランプ米大統領が新たに国連を攻撃:事実への歪曲工作
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ドナルド・トランプ米国大統領が新たに国連を攻撃する発言を提起し、この国際機関を無力だとしました。
(last modified 2025-12-29T07:43:53+00:00 )
12月 29, 2025 16:41 Asia/Tokyo
  • 国連本部で演説するトランプ大統領
    国連本部で演説するトランプ大統領

ドナルド・トランプ米国大統領が新たに国連を攻撃する発言を提起し、この国際機関を無力だとしました。

【ParsToday国際】トランプ米大統領は28日日曜、自らが立ち上げたSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で国連を厳しく批判し、「この国際機関は無力だ」と非難しました。そして、ロシア・ウクライナ戦争に触れ、国連に対し世界平和の促進にもっと積極的に取り組むよう求めています。また「現在、紛争終結において国連の役割を果たしているのはアメリカだ」と主張しました。トランプ氏はこれに先立ち、世界で8つの戦争と紛争を終結させたと主張していたものの、世界におけるアメリカの好戦主義的な言動については全く触れていません。

トランプ氏の一連の言動は物議を醸しており、最近における「国連は非効率的」発言・主張は現実を反映しているのではなく、逆に世界的な危機に米国が関与している現実の歪曲を狙った試みだと言えます。国連の活動と米国の政策を綿密に検証した場合、国連の非効率性は国連の本質的な弱点というよりも、大国、特に米国の行動と、拒否権の手段的利用によるところが大きいことが分かります。

国連は第2次世界大戦後、壊滅的な戦争勃発の阻止および国際協力の基盤の構築を目的として設立されました。実際にこの国際機関は過去数十年にわたってい多くの紛争の拡大を阻止し、危機地域において平和維持活動を展開し、人権、持続可能な発展、そして疾病対策の分野における国際協力の枠組みを提供してきました。したがって、国連は全く機能を果たしていないという主張は誤りだと言えます。根本的な問題は、安全保障理事会の構造および、アメリカを含む5つの常任理事国が拒否権を持っていることにあります。これらの拒否権行使により、国連は繰り返し効果的な措置の実行を妨害されてきました。特に、拒否権保有国の一つである米国は、自国や同盟国の行動に対する非難を防ぐために、他のどの国よりも多くこの手段を行使してきています。

米国はここ数十年、世界的な戦争や危機の煽動に大きく関与してきました。その最たる例が2003年のイラク侵攻であり、これは安保理の承認を得ずに、大量破壊兵器の存在という虚偽の主張に基づいて実行されています。この侵攻は地域の安定を破壊した上、テロリスト集団の台頭を招きました。また2001年にはアフガニスタンがテロ対策を名目に占領された後、米軍が長期にわたり駐留したことが、恒久平和どころか、暴力と不安定な情勢の継続、そして数百万人もの人々の難民化を引き起こす結果となっています。

加えて、パレスチナ危機においてアメリカがシオニスト政権イスラエルを無条件に支持していることから、安保理では拘束力のある決議採択が繰り返し阻止されてきました。米国は80回以上にわたり拒否権を行使し、暴力の抑制とパレスチナ人の権利保護に貢献し得たはずの決議の採択を阻止してきています。一方でアメリカは、イスラエルへの大規模な軍事・武器援助提供により事実上、同政権によるガザ地区のパレスチナ人に対するジェノサイド実行や、地域諸国への攻撃を容認した格好となっています。

トランプ大統領は国連を非効率だと非難することで事実上、危機の責任を米国の双肩から降ろそうとしています。トランプ大統領は国連が機能していないと非難する一方で、自身とアメリカ歴代政権は、一方的な政策によって国連の役割を繰り返し毀損してきました。こうした政策の一例として、トランプ政権下のアメリカが国連人権理事会とユネスコから脱退したことが挙げられ、このことはアメリカが多国間主義を強化せずに、自国の見解を世界に押し付けようとしている現実を物語っています。こうした行動により、国連に対する世界の信頼が低下し、危機解決能力が制限されてしまっています。

現実として、国連は大国の協力なしには自らの任務を完全に遂行できなくなっています。トランプ氏が指摘する非効率性は、主に米国とその同盟国による妨害行為に起因します。こうしたアプローチの明白な例として、シリア危機におけるアメリカのテロ組織支援、そして特にガザ紛争における対イスラエル非難阻止を狙った度重なる拒否権行使が挙げられます。また、イエメン戦争においては、アメリカ製兵器のサウジアラビア向け大量売却が、戦争の継続と人道危機に直接的な関係しています。これらの事例は、米国が危機解決に貢献しなかったのみならず、自ら危機を創出し、悪化させる主因の一つであったことを裏付けています。そしてもう一つの例が、シオニスト政権による去る6月の対イラン12日間戦争に米国が直接加担・参加したことであり、これは国連安保理の常任理事国による公然たる国際法違反の例です。

一方、国連は人道・開発問題において依然として重要な役割を果たしています。世界規模でのワクチン接種、気候変動対策、難民支援、人権擁護といった分野における国連のプログラムが挙げた成果は、決して無視できないものです。米国をはじめとする主要国が国連を弱体化させるのではなく、安保理の構造改革や拒否権行使の抑制に向けた措置を講じれば、国連はより効果的に機能する可能性があります。したがって、危機の扇動における米国の関与に言及せずに国連を無力だと断言することは、一種の政治的はぐらかしだと言えるでしょう。

トランプ大統領による国連攻撃は決して正当な批判ではなく、世界的な戦争や危機へのアメリカの関与の隠蔽を狙った工作であるように思われます。構造的な限界はあるものの、国連が世界の平和と安全を維持する上で最も重要な国際機関の1つであることに変わりはありません。真の非効率性は、大国、特に米国が自国の利益のために国連を利用し、拒否権を行使して国連の効力ある行動を阻害するときに生じています。したがって、真に批判されるべき対象は国連ではなく、世界的な危機の主な元凶たるアメリカの一方的な政策および、拒否権の乱用だと言えるでしょう。

 

 


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