週刊イラン
この1週間に起こった主な出来事です。 イラン大統領が、アゼルバイジャンとトルクメニスタンを訪問しました。 この2カ国訪問の結果について見ていきます。 サウジアラビアが、イエメンの状況を巡ってイランに対し、根拠のない非難を行っています。 アメリカの核合意に反する政策を振り返ります。
イランのローハーニー大統領が、先週、トルクメニスタンとアゼルバイジャンを訪問しました。
今回の訪問で行われた協議では、二国間関係を強化するための政治協力、民間部門の協力による経済的な可能性の利用、カスピ海や地域の問題に関して話し合いが行われました。
トルクメニスタンのアシガバードでは、ローハーニー大統領とトルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領の立会いのもと、両国の高官の間で、13の協力に関する文書や覚書が調印されました。ローハーニー大統領は、訪問のしめくくりとして、バクーを訪れ、イランとアゼルバイジャンのアスタラ間の鉄道ラインの開通とハザル自動車工場の稼動開始を宣言しました。
アゼルバイジャンの施設で、イランの自動車メーカー、イランホドロー社の生産ラインが、年間生産台数1万台で稼動を開始しました。この生産能力の拡大により、年間の生産台数は1万5000台に達する予定です。
また、イランとアゼルバイジャンのビデオを通じた経済会合では、両国の都市アスタラ間を結ぶ鉄道ラインが稼動を開始しました。両国のアスタラをヨーロッパ諸国と結ぶ鉄道ラインは、地域に大きな変化をもたらします。この鉄道ラインが、イラン北部のラシュトまで伸び、ラシュト・アスタラ間の鉄道ラインが完成すれば、イランの北と南を結ぶ鉄道の往来が活発になるでしょう。
ラシュトとアスタラの鉄道ラインによる北と南の移送ルートは、イランとアゼルバイジャンにとって、地域諸国やアジア、ヨーロッパ、アフリカとの距離を縮め、安価な移動を可能にするものです。アゼルバイジャンのアリエフ大統領は次のように語っています。
「カスピ海のエネルギーやラシュト・アスタラ間の鉄道といったプロジェクトを通じたイランとアゼルバイジャンの協力は、相互尊重と信頼に基づく両国の関係を、ますます強化することになる」
アメリカは、常にさまざまな手段を用い、イランにダメージを与えようとしています。このような敵対は、現在、イランのミサイル能力への懸念を理由に、核合意へのトランプ大統領の反対によって続けられています。
トランプ大統領は、議会が承認した法により、5月12日までに、核関連のイランに対する制裁の停止を延長するか否かについて決断を下すことになっています。こうした中、トランプ大統領は、核合意の修正を求めており、この合意に変更がなければ、アメリカはこの合意を離脱すると警告しています。
政治評論家や専門家は、核合意に混乱が生じれば、その影響は、国際社会全体にとって深刻なものになると語っています。アメリカの118人の政治、軍事関係者が、先週、声明の中で、アメリカの核合意遵守の継続を訴えると共に、「アメリカの核合意からの離脱が、アメリカの国家安全保障上の目的に貢献することはなく、政治的な不信を招くことになる」としました。
核合意は、国際レベルの合意であり、安保理決議でも認められ、地域や世界の安全保障と直接、関係しています。アメリカのニコラス・バーンズ元国務次官は、ツイッターで、アメリカの元国家安全保障関係者100人以上が、トランプ大統領にイランとの核合意の維持に関する書簡を送ったことに触れ、次のように語っています。
「私は、元軍関係者や外交関係者と共に、この書簡に署名したことを誇りに思う。我々は、アメリカの安全保障は、核合意に留まることによって、よりよい形で確保されると考えている」
先週、イランは、ウズベキスタンで開催されたアフガニスタン和平会議に出席しました。この会議は、「アフガニスタンの和平、安全保障協力、地域のつながり」をテーマに、ウズベキスタンの首都タシケントで先月27日に開催され、ウズベキスタンとアフガニスタンの大統領の他、世界25カ国と地域・国際機関の代表者が出席しました。
イラン外務省のアラーグチー政治次官は、この会合で、アフガニスタンの現在の状況は懸念すべきものだとし、ウズベキスタンとの協力により、アフガニスタンに平和と安全を確立するためのイラン政府の用意を強調しました。
ローハーニー大統領も、トルクメニスタンのアシガバードを訪問した際、同国のベルディムハメドフ大統領と会談し、アフガニスタンの平和と安定の確立や発展への支持を続けるためのイランの用意を明らかにしました。イランとトルクメニスタンは、この会談の共同声明で、「アフガニスタンの政治、社会、経済の発展に向けて、この国の国民が選んだ道を尊重する」としました。
サウジアラビアの関係者は、他国に対して根拠のない非難を繰り返し、イエメンでの自分たちの度重なる敗北を覆い隠そうとしています。サウジアラビアは、アラブ首長国連邦をはじめとする一部のアラブ諸国と共に、3年前から、イエメンのハーディ元大統領の復権を狙い、この国を攻撃し、陸、空、海から封鎖しています。この3年以上に及ぶ攻撃により、数万人が死傷、数百万人が難民となり、インフラが破壊されました。
サウジアラビアは、アメリカのゴーサインと一部のアラブ諸国の支援により、イエメンを攻撃し、短期間のうちに、この国の全土を占領できると考えていました。ところが、このような考え方により、サウジアラビアは大きな敗北を経験することになりました。サウジアラビアのイエメン攻撃は、2015年3月末から始まりました。サウジアラビアのこの攻撃の目的は、バーブ・アルマンデブ海峡を支配することでした。
イギリスは、アメリカ、フランス、サウジアラビアと共に、この数ヶ月、イエメンへ武器を移送しているとしてイランを非難しようと多大な努力を行ってきました。こうした中、サウジアラビアは、イエメンへの武器の密輸を阻止するため、この国を空、陸、海から封鎖しており、食料や医薬品、燃料などの搬入も防いでいます。
イランのホシュルー国連大使は、先週、国連の事務総長と安保理議長に書簡を送り、サウジアラビアが主導する連合軍の報道官の非難に抗議し、「このような非難や脅迫は、武力の行使や脅迫を禁じた国連憲章の内容に反する」と語りました。
ホシュルー大使は、サウジアラビア軍によるイエメンの封鎖に触れ、イランが弾道ミサイルをイエメンに密輸しているとする主張は根拠がないとし、「サウジアラビアの政府高官による非難の目的は、イエメンでの自分たちの犯罪から世論の目を逸らすことにある」としました。
サウジアラビアとその同盟国によるイエメンへの攻撃で、これまでに数万人のイエメン人が死傷し、数百万人が住む家を失っています。国際人権団体、ヒューマンライツウォッチのケネス・ロス代表は、次のように語っています。
「サウジアラビアは、イエメンの住宅地に対するクラスター爆弾の使用を正当化することはできない」
イランのザリーフ外務大臣は、ツイッターで、イエメン戦争へのアメリカの関与を非難し、次のように語りました。
「アメリカは、イエメン戦争で、サウジアラビアの戦闘機に燃料を供給したり、武器を供与したりすることで、イエメンでの世界最大の人道的な悲劇において、サウジアラビアの犯罪の最大の共謀者になっている」
ザリーフ外相はこのツイッターでさらに、「アメリカは現在、イエメンの戦争を誘導することで、中東における対立を拡大し、自分たちの利益を確保しようとしている」と続けました。