May 18, 2023 18:20 Asia/Tokyo
  • サウジアラビアとアメリカの国旗
    サウジアラビアとアメリカの国旗

サウジアラビア指導部は、同国を訪問したアメリカの使節団がイランとの国交回復の見直しを求めたのに対し、これを拒否しました。

ニュースサイト「アサース・メディア」によると、サウジ当局は最近同国を訪問した米使節団に対して、イランとの国交回復を見直す考えはないとし、世界のどの経済的・政治的大国との関係構築も自国や地域の利益に基づいて決めると伝えたということです。

ここで2つの疑問が湧いてきます。

1つ目は、アメリカはなぜサウジとイラン、さらには抵抗の枢軸との和解に反対するのか2つ目は、長年対米依存を続けてきたサウジがなぜここにきて米国の要求に抗うのかということです。

 

1つ目の疑問への回答としては、いくつかの理由を挙げることができます。

1つ目に、アメリカの政策がシオニスト政権イスラエルの政策・利益に追随しており、シオニスト政権の姿勢は抵抗の枢軸の壊滅であるという点があります。現在、アメリカは、イランと抵抗の枢軸はあらゆる分野において勝利を収めており、サウジがこれらと和解することは、その勝利と持続可能性の安定に寄与することになると見ています。

2つ目は、米民主・共和両党の姿勢が、シオニスト政権とアラブ諸国との関係正常化の継続にあり、それにより西アジアから東アジアへシフトして中国をけん制することで生じる権力の空白を埋めようとしていることにあります。しかし、現状、アメリカは西アジアに留まり、これまでと同じようにシオニスト政権の利益を自らの利益に優先せざるをえなくなっています。

 

一方、2つ目の疑問についてもいくつかの要因が挙げられます。

第一に、アメリカとサウジの関係は第二次世界大戦後、サウジが石油を提供するかわりにアメリカが安全保障を担うという形で築かれました。しかし、近年になって、米国内でシェールオイルが採掘されるようになると、サウジへの石油依存は徐々に低下しました。また、2001年の同時多発テロに関して、アメリカはサウジ政府の関与を指摘しており、事件の報告書の機密部分はサウジからみかじめをとるのに利用され、現在も続いています。

第二に、イランと抵抗の枢軸は、あらゆる陰謀や計画をはねのけ勝利してきた一方、サウジがアメリカやイスラエルに同調するコストは日ごとに増してきました。サウジは、イエメン、シリア、イラク、レバノン、その他の国々おける紛争で数十億ドルを費やしただけでなく、シオニスト政権との関係正常化の憶測も流れたことで、アラブ・イスラム諸国内での地位が危うくなりました。

第三に、サウジ指導部はアメリカの覇権が凋落しつつあり、かわりに中国やロシアといった米国の競争相手の覇権が台頭していることを正しく認識したがゆえ、東方重視の政策をとるようになりました。イランとの関係正常化を仲介したのも中国でした。

第四に、サウジは、その長期計画「サウジビジョン2030」の実現が地域諸国との和解と東方重視の政策によって可能であり、アメリカはトランプ前大統領が言ったように、サウジをミルクを出す牛として見ており、その資金をどのように、どういう口実で盗み出すかしか考えていないという結論に至ったのです。

 

サウジイランとの国交回復見直しを求めるアメリカの要求を退けたことの戦略性に鑑みれば、来年の米大統領選で仮に共和党候補が勝利したとしても、サウジがこの方針を見直す可能性は極めて低いと言えます。なぜなら、サウジは過去数十年の間、米民主・共和両党の振る舞いを検証した結果、両党ともサウジを道具として見ており、みかじめをとる方法が違うだけだという結論に至ったからです。

 


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