アメリカの対シリア攻撃、前車の覆轍
数日にわたる討論と検討の後、遂にアメリカ軍がイギリス、フランスの支援を得てシリア攻撃に踏み切りました。
アボルファトフ解説員
アメリカのトランプ大統領は、シリア・ダマスカス近郊の東グータ地区の町ドゥーマで、同国の政府軍が化学兵器による攻撃を行っているという口実で、同国への軍事攻撃を命じました。シリアの反体制勢力は、この化学兵器による攻撃で少なくとも70人が死亡、500人が被害を受けたと発表しています。反体制派は、この攻撃の責任が政府軍にあるとしていますが、これまでにいずれの独立筋もこの主張を承認していません。
アメリカとその同盟国がシリア攻撃に踏み切るわずか数時間前に、国際視察団がシリアに到着しましたが、まだその調査活動は終了していませんでした。言い換えれば、アメリカは、一部のグループが塩素ガスの被害を受けた人々の治療に当たっていると報じる、数分間のテレビ映像だけを鵜呑みにし、国連に加盟している独立国の1つを攻撃したことになります。世界の平和と安全の保障に務める国連安保理は、決して今回の軍事攻撃を許可しておらず、こうした性急な行動は、全ての国の国家主権を正式に承認している国連憲章や、国際的な全ての法律に反するものです。
もっとも、アメリカが誤った情報やメディアの世論操作に乗せられて独立国を攻撃したのは、今回が初めてではありません。15年前にも、当時のアメリカ政府はイラクが大量破壊兵器を保有していると主張し、これを口実にイラクという独立国を軍事的に占領しています。しかし、アメリカはイラク国内をくまなく調べ上げたものの、結局イラク国内で大量破壊兵器の存在の痕跡を突き止めることはできませんでした。それからしばらく後、イラク攻撃当時のアメリカ国務長官だったパウエル氏は、2003年4月の国連安保理での会合で行った自らの演説が、虚言でしかなかったことを認めています。アメリカの政府関係者によるこうした虚言や欺瞞行為は最終的に、イラクの破壊や100万人もの人命の喪失,そしてアメリカ国民に対する7兆ドルもの重税、そして西アジア地域での混乱につながりました。
昨年にも、現在の出来事に類似した主張により、トランプ大統領はシリアに対するミサイル攻撃を命じ、彼自身はこれをシリアの町ハーンシェイフンに対する化学兵器での攻撃への報復だとしています。しかし、アメリカのこうしたミサイル攻撃は、シリアの軍事的なバランスに変化を起こさなかったのみならず、その後シリア軍が目覚しい成功を収める結果にいたっています。このため、昨年のアメリカのシリア攻撃は成果なしと見なされており、それと同様に一部の政治家や軍事評論家の間でも、14日土曜未明のシリア攻撃も効果のないものだとの見方がなされています。アメリカ下院民主党議員のペロシー議員は、次のように述べています。
「一晩の空爆で、シリアの戦略的な地域を押さえることはできず、トランプ大統領は議会に出頭して軍事手段の行使の許可を得るべきである」
しかし、過去の過ちがアメリカの政治家にとって教訓になるとは断言しがたいといえるでしょう。