ルート砂漠、イラン自然遺産初のユネスコ登録
(last modified Wed, 03 Aug 2016 07:59:26 GMT )
8月 03, 2016 16:59 Asia/Tokyo
  • ルート砂漠、イラン自然遺産初のユネスコ登録

ユネスコ世界遺産委員会の第40回会合は、イランのルート砂漠の登録によって幕を閉じました。

トルコのイスタンブールで開催された、文化的な景観や自然に関して話し合うユネスコの会議は、3日に渡って続けられる予定でした。しかし、イスタンブールでクーデターが発生したため、その続きは10月のパリでの会合に持ち越されました。

ユネスコ世界遺産委員会の第40回会合の終わりに、イランのルート砂漠が世界遺産に登録されました。ルート砂漠は、イラン南部のケルマーン州の5つ目の世界遺産となります。数日前にも、ケルマーン州の3つのカナート・地下水路が登録されました。これ以前にも、バムとその文化的景観、メイマンドの文化的景観、マーハーンの庭園が世界遺産に登録されていました。今回のルート砂漠の登録により、ケルマーン州は、イランで最も多くの世界遺産を有する州となります。

ルート砂漠は、世界遺産に登録されるための明確な基準を有していました。ユネスコの専門家でさえ、報告の中で、この点を指摘していました。会合の際にも、ルート砂漠の映像は、参加していた全ての人を感嘆させました。ルート砂漠は、イランで初めて世界遺産に登録された自然遺産であり、イランで21個目のユネスコ世界遺産となります。

イランは、領土の広大な範囲を砂漠に覆われている、世界でも数少ない国のひとつです。イランの領土のおよそ65%が、砂漠性の条件を持つ乾燥地帯となっています。この現象は、緯度の関係によって生じています。この緯度では、水の蒸発量が、降雨量を上回っているため、乾燥が進みます。

ルート砂漠は、面積およそ17万5000平方キロメートルで、ケルマーン州の北東に位置しています。この砂漠は、南ホラーサーン、スィースターンバルーチェスターン、ケルマーンの3つの州にまたがり、イランの総面積のおよそ10%を占めています。ルート砂漠の80%は、ケルマーン州にあります。この砂漠は、東のナフバンダーンと西のナーイバンドの2つの断層の間に位置しています。北から南にかけてはおよそ900キロ、西から東には、およそ300キロあります。ルート砂漠で最も標高の低い場所は、海抜190メートルです。

ルート砂漠では、これまで、大きな地震が発生してきました。この広大な砂漠につながる山々の裾野では、紀元前4000年頃から、人間が生活を営んできた痕跡が見て取れます。ルート砂漠で最も人口が多い地域は、シャフダードです。また、最も美しく緑が豊かな景観を持つのは、スィールチと呼ばれる渓谷とその一体の住宅地です。

ルート砂漠の一帯は、2008年を除く、2004年から2009年の間、地球上で最も気温の高い地点でした。中でも2005年には、70.7度を記録しました。研究者らは、このような気温の高さは、地表面の色の濃さと乾燥により、太陽の熱を吸収しやすいことが原因だとしています。

ルート砂漠の文明の歴史は、紀元前3000年期にさかのぼります。この地域で発見されたおよそ3000点の文化財や遺物は、この地域の5000年の歴史を物語っています。この地域には、城砦、隊商宿、貯水池、類まれなる自然などの何十もの歴史的な遺物が残っています。

ルート砂漠は、地理的に、北ルート、中央ルート、南ルートの3つの部分に分けられます。南ルートは、この砂漠の中でも最も植物が多い部分です。この広大な地域では、歴史的な遺物と共に、自然の魅力、希少な植物や動物を目にすることができます。

ウィーン大学の地理学者は、1931年から33年に、ルート砂漠を研究するために自動車を利用した最初の研究者でした。この地理学者は、ルート砂漠の気候やこの砂漠による自然現象などの問題について、ドイツ語で数多くの書籍を記しています。中でも、「砂漠の周辺での闘い」と題する書籍では、イランの砂漠の状況と熱帯乾燥地域の気候について取り上げています。

ルート砂漠は、砂漠の最も驚くべき現象を持つ自然の象徴です。この砂漠には世界で最も規模の大きな、土でできた町が存在し、遠くから見ると、大きな都市の廃墟のように見えます。世界で最も標高の高い砂のピラミッドも、ルート砂漠にあります。世界で確認されている最も高い砂のピラミッドは、最大で標高300メートル、リビアにありますが、ルートでは、高さが480メートルに達するピラミッドもあります。この他、ルート砂漠では、赤茶色や灰色、黒の砂の丘や玄武岩が見られます。

ヤルダンとは、風食作用によって砂地などの表面にできる不規則な畝状のくぼみで、世界では、類まれなる現象として知られています。これらのくぼみの壁に湿気を与える上で、塩水のシュール川が大きな役割を果たし、その風化を進めています。この地域は、シャフダードと呼ばれる場所から43キロのところにあり、145キロかける80キロの範囲に広がっています。この壁を風化させているのは、スィースターンの120日間の風です。これらのくぼみとくぼみの間の土地は砂で覆われ、砂がない場所は、粘土となっています。

ルート砂漠の東部には、およそ100キロかける50キロの範囲に砂丘が見られます。これらの砂丘の高さが、500メートルに及ぶ場所もあります。

南ルートは、植物が最も多く見られる場所です。シャフダードからおよそ20キロの場所には、ギョリュウの潅木が見られます。これは、土と水と植物の驚くべき共存の例と見なされています。この植物は、砂の上に生えていて、そこにある湿度だけで、この植物が生育するには十分です。この他にも、ルート砂漠では、何種類かの植物が見られます。

 

写真 イランのルート砂漠

写真 イランのルート砂漠の位置

写真 ルート平原

写真 ルート砂漠

写真 ルート砂漠のシャフダード地区の町

写真 暑さのために赤茶色になったルート砂漠の表面

写真 ルート平原の砂丘

写真 シャフダードの岩山

写真 砂漠のギョリュウ

写真 ルート平原の夜の満天の星