今回は、体の健康の指標について考えるとともに、魂の健康の要素としての満足感やプラスの感情についてお話しましょう。

前回は、イスラムにそった魂の健康においては、すべての存在物が創造世界の源、即ち神のもとで意味を見出すということについてお話しました。このことが、人間にとって意味や目的のある状態を作り出す事になります。この時間は、そうした指標の一部についてご紹介してまいります。

人間は、自己を形成し、自分に関するプラスの行動や美徳を強化することによって、成長することができます。逆に、道徳的に卑しい行動に走り、醜悪な性質が定着してしまうと、退廃に陥ります。一方で人間は、集団の中で生活し、あらゆる存在物と関係を持っていることから、ほかの存在物に対する人間の行動も、その人が成長するか、あるいは退廃するかに影響を及ぼします。

実際に、人間は自らの社会生活や他人との交流を通して、自らの不足を補い、物的、精神的なニーズを満たします。そしてそれにより、自分の才能の多くを発揮する下地を作るのです。そして、他の人々の成長、あるいは退廃にも、同じような役割を果たします。さらに、人間は動植物や無生物をはじめとする周囲の環境とも関わりあい、相互に関係を及ぼしあっています。

魂の健康は、特別な重要性を持つだけでなく、様々な点から、健康の他の側面にも影響を及ぼします。そうした影響のうち、最も重要なものは保健衛生面の行動に及ぼすものです。宗教的な約束事を守る敬虔な人は、心と体の健康を大切にします。敬虔な人は、心と体を神からの預かり物とみなしています。このため、そうした人は、自分の健康の維持と増進に責任を持つべきだと考えています。これについて、イスラムの預言者は次のように述べています。

“間違いなく、あなたは自分の体に対して義務を負っている”

イスラムでは、一つの宗教法上の基盤として、「有害なものはすべて禁じられる」とされています。これについて、現代のイランの思想家で哲学者でもあった、故モタッハリー師は次のように述べています。

「間違いなく、イスラムの教えは体の健康の維持と増進に基づいている。多くの事柄が禁じられている理由は、それらが人間の体にとって有害だからである。イスラム法学で明確に定められている事の１つは、これらの多くは、人間の体にとって有害であるために禁じられているということだ。イスラム法学では、人間の体にとって有害であることが確認されるすべてのものは、絶対に禁じられるという、１つの全体的な原則が提示されている。イスラムの視点から見て禁止されないが、回避する事が望ましいとされるものもあるが、確実に有害であることがはっきりした場合には、イスラムの視点からも完全に禁じられる」

イスラムでは、健康の維持が極めて重視されており、たとえば断食といった宗教上の義務であっても、それがその人の体にとって有害である事がはっきりした場合には、義務から削除されるのみならず、そのような断食は禁じられます。

このため、イスラムにおける多くの習慣や義務は、人間の体の健康の維持を目的に定められています。例えば、伝承の中では、歯を強くする、あるいは病気を排除する、などの理由で、食べることが望ましいとされる野菜や果物が紹介されています。

さらに、体の健康の維持と強化のために神が求めている事柄の１つに、イスラム教徒の祈祷があります。ある祈祷には次のようにあります。

“たくさんの日々の糧、体の健康、そして強靭な体力を与えてください”

魂の健康において決定的な要素のひとつは、精神生理学です。つまり、宗教の教えから得られる満足感やプラスの感情は、自律神経システムを通して伝わり、心臓や血管、消化器官、内分泌線、免疫システムなどをはじめとする体の組織が好ましい形で機能するようになります。

魂の健康に驚くべき効果を与える要素の１つに、希望があります。実際に、神への信仰心にはこの上ない力が備わっており、宗教を持つ人にある種の精神力を与えます。コーランに頼り、新興を大切にすることは、人間の生活に意義を与えるとともに、不安やストレスを拭い去り、結果としてうつ病や自殺といった有害な影響を防止することになります。

とはいえ、宗教を信じ、信仰心を持っているからといって、そうした人が決してストレスを抱えたり、うつ病に陥ったりすることはない、とは言い切れません。しかし、複数の調査結果からは、信仰心を持つ人はそうでない人に比べて、精神的に不安定な状態からの立ち直りが速い事がわかっています。それは、そうした人々が、全知全能の神が支配する世界に生きていることによります。神は、すべての創造物に注意深く気を配り、奇跡を起こし、敬虔な人々に無限の恩恵や美徳を与えてくださいます。こうした世界においては、難病や経済的な破綻などをはじめとするすべての出来事が、何らかの意味を持っています。絶対的な存在としての神を信じる敬虔な人であれば、最悪の状態や逆境をも、プラスの経験に転じさせることができるのです。