7月 18, 2018 21:02 Asia/Tokyo

人間の生活に欠かせない問題のひとつが、エネルギー資源です。人間は昔から、尽きることのないエネルギー資源を手に入れることを願ってきました。数百年も前から、そのための努力が行われています。

この時間は、エネルギーを保護し、持続可能な開発を支援するためのイランの人々の芸術と技術の成果や努力についてお話ししましょう。

 

経済的で豊かなエネルギーは、現代文明の静脈とも言えます。そのため、石油やその他の化石エネルギーの価格の変動は、世界各国の指導者たちを悩ませる問題になっています。IEA国際エネルギー機関は、2030年までにエネルギーの需要は50%まで増加し、石油が現在の形で使用され続ければ、世界の石油は40年後に枯渇してしまうため、長期的な解決策を見出す必要があるとしています。

 

世界のエネルギー消費量を見ると、全体のおよそ48%が建物の中で消費されていることが分かります。人間は人生の70%を屋内で過ごし、その間に多くのエネルギーを消費します。そのため、消費量の少ない建物を建設するための投資が、エネルギーの消費量を減らすための最良の方法となっています。

 

建物のエネルギー消費を減らすための方法を見出す努力は、1970年から始まり、新たなデザインや資材の利用が優先に据えられました。

 

さまざまな研究により、現代の人間は、毎日平均して、農業の時代の60倍以上、1950年代の6倍以上のエネルギーを消費していることが分かっています。都市、特に屋内の毎日のエネルギー消費は、世界を地球温暖化やオゾン層の破壊、酸性雨といった危険にさらしています。一方で、職場や自宅などの建物の利用者の快適さの追求が、エネルギーの大量の消費を招いています。

 

これまでの活動にも拘わらず、現在、エネルギーの状況はこれまでにない危機に陥っています。そのため、環境を考えたエネルギーの合理的な利用と建築の問題は、各国の計画の最優先事項となっています。

 

実際、世界各地の建物や都市の設計は、地球の環境の破壊や改善の原因となりえます。そのため、これらの影響の関係を考慮した上で、エネルギーの節約と環境保護を考慮した建物を設計することが、建築家の最も重要な責務となっています。

 

建築産業は、地球の資源とエネルギーの消費量や廃棄物の量が多いことから、環境問題に大きく関わります。また、再生可能なエネルギーの消費量と、温室効果ガスなどの生産量が多くなっています。

 

環境を破壊する要因の増加により、建物で消費するエネルギー量も増加しています。これにより、建物や建築に必要なエネルギー量をはかることが重要になっています。建築産業は、多くの国で、消費エネルギー全体の25%から40%を占めています。

 

世界のエネルギー消費量の管理に注目することは、2つの点から重要になっています。一つは、化石燃料の消費量を減らすことで、二酸化炭素の生産量も減り、地球の温暖化の速度を緩めることになります。もう一つは、エネルギー、特に化石燃料や再生可能なエネルギーの消費量を抑えることを、すべての世代の責務と見なすことができます。このようにして、地球のエネルギーの限られた資源を保護するとともに、未来の人々もこれらの資源を利用できるようになるのです。

 

イランは、地理や気候の条件により、この数百年、太陽光エネルギーや風力エネルギーなどの天然資源の利用を利用することで、環境におけるエネルギー消費を節約してきました。イランの都市、特に砂漠地域で、エネルギーの節約に効果的だったのは、気候条件に沿った伝統的な建築における原則の存在、その環境にあった建築資材の使用です。

 

イランの建築において、気候条件は根本的な影響を及ぼしています。住民を暑さや寒さから守る、気候条件に合った建物は、その中でも快適に過ごすことができ、経済的な負担もありません。イランの伝統建築は、建物の外観や使われる資材に工夫が凝らされています。内部の熱が外に逃げるのを防ぐ分厚い壁や、通路の影の確保や周囲の環境にあった資材の利用が、こうした建築の特徴となっています。

 

ヤズドは、イラン中央高原に位置し、国の要衝にあり、古い歴史を持つ都市です。ヤズドの乾燥した気候や厳しい自然は、忍耐強い人々や地下水路、その条件に合った建築を生み出してきました。

 

ヤズドは900ヘクタール以上の面積を有し、風採り塔・バードギールの町、貯水槽の町として知られています。ヤズドは熱帯の砂漠地帯に位置していますが、暑い夏でも、壁によって作られた影の下や路地の涼しい風の中を歩くことができます。

ヤズド・バードギールの町

 

ヤズドの建物のエネルギーの消費量の少なさは、エネルギーの危機を抱えた現代のモデルです。そのため、ヤズドは粘土の建築の傑作と呼ぶことができるでしょう。2016年7月、ユネスコの会合で、ヤズドの歴史的な都市が世界遺産に登録されました。

 

ここからは、ヤズドのエネルギー保護に関するイラン人の芸術と技術の成果についてお話ししましょう。

 

ヤズドの自然に合致した建築により、この町は持続可能な世界エネルギー都市となっています。風採り塔の技術、地下水路・カナートのシステム、地域の資材の利用などが、ヤズドの建築の重要な特徴で、持続可能なエネルギーにおいて重要な役割を担っています。

 

世界のエネルギー機関であるエネルギーグローブのニューマン氏は、最近、イランを訪問しました。ニューマン氏は、ヤズドは世界のエネルギーの持続可能性の首都として紹介できるとし、「ヤズドはこの数年、持続可能な環境都市となっている」と語りました。

 

ニューマン氏は、ヤズドを訪問した際、この町を実際に目にして、ヤズドの持続可能性の物語が始まっていることを悟ったとし、「なぜ35年前からヤズドを訪れ、その情報や技術を世界に紹介できなかったのか悔やまれる」と述べました。