イランの自然;ルードバールガスラーン
イランは、多くの見所を有し、美しく多様な自然に溢れています。イランのどこを訪れても、異なった気候条件から生まれる、自然の絵画を目にすることができるでしょう。
大都市テヘランの近郊では、あちこちに美しく気候のよい避暑地が見られます。今夜のシリーズでは、テヘラン近郊にある高原気候の地、ルードバールガスラーンをご紹介いたしましょう。
ルードバールガスラーンは、テヘランの北に位置し、テヘランの多くの人々には、ウーシャーン、あるいはファシャムと呼ばれています。テヘラン市の北、30キロから50キロのところにあるこの地域には、山岳地帯特有の、緑豊かな美しい村落が20以上存在しています。これらの村は、アルボルズ山脈の中腹に輝くダイアモンドのように、神から与えられた自然の恵みを表わすものです。中でも良く知られているのは、ウーシャーン、ファシャム、アーハール、アンマーメ、メイグーン、そしてシェムシャクの村々です。またこの地域には、流れの速い8つの河川があり、そこからは、数多くの澄んだ小川が流れています。これらの河川には、一年中、澄んだ水が流れ、これらが合わさったものは、ジャージュルードと呼ばれ、テヘランの飲料水は、主に、この川の途中にあるラティヤーンダムから供給されています。
ルードバールの高山地帯は、標高およそ1500メートル以上となっており、シェムシャクなど、北部の村は、2800メートルに及びます。このため、この地域の村々の気温は、冬になるとマイナス20度にまで下がり、夏は日中でも、22度位までしか上がりません。夏の夜は、涼しく気持ちよい気候となっています。また、この地域は、山岳地帯であることから、農耕地が非常に限られており、地元の人々は、多くが、牧畜、園芸、観光サービス業などによって生計を立てています。ルードバールガスラーンの街道には、多くのレストランがあり、年間を通して多くの観光客を受け入れていますが、最も繁盛するのは、夏の間です。それでは次に、この地域の幾つかの村について、詳しくご紹介致しましょう。
●ルードバールガスラーン・シェムシャク村
ルードバールガスラーンの美しい避暑地の中でも、シェムシャク村は、スキー場があることから、寒い冬にも、多くのスキーヤーたちがやってきます。実際、シェムシャクは、年間を通して、自然を愛する人々の観光地となっています。様々な資料によると、シェムシャクの歴史は、200年以上前に遡るとされ、それ以前は、北部のマーザンダラーン州とテヘランの間にある小さな休憩所となっていました。この道は、マーザンダラーン州の町を出発し、この地域の高地を抜け、シェムシャクの美しい自然へと至るもので、そこからさらに、ルードバールガスラーンを通ってテヘランへと続いていました。シェムシャクは、テヘランからそれほど離れておらず、夏は非常にすごしやすい気候を有し、今もなお、その美しさと静寂を保っています。
シェムシャクとディーズィーンを結ぶ道路の南側からは、山裾に広がるシェムシャクの村全体を見渡せるようになっています。シェムシャクの最も低い部分には、古い家が多く、上に行くに従って、モダンな家が建ち並んでいます。村の北部には、設備の整ったホテルがあり、多くの旅行客に利用されています。シェムシャク村は、山岳地帯にあり、急な斜面が多く、平らな土地はほとんどありません。このため、農業や牧畜には適さないことから、住民の多くは、スキーに関連した事業で生計を立てています。シェムシャクの周辺には、サルクチャールやコルーンバスタクといった山の頂上に至る途中に、氷河があり、その氷は一年中、解けることはありません。夏には、緑の自然、白い雪、そして真っ青な空が広がります。
●ルードバールガスラーン・メイグーン村
ルードバールガスラーンには、また、メイグーンという村があります。この村は、シェムシャク街道沿いの、緑豊かな気候のよい渓谷の間に位置し、その周りは、赤土の山で囲まれています。メイグーンという名は、この山々の赤土からきていると言われています。この村の真ん中には、村と同じ名前の河川が流れ、この川の水は、地域の庭園に供給されている他、地域の気候の調整に、重要な役割を果たしています。シェムシャクやディーズィーンへ行くのに、このルートを通る人々の多くは、特に夏、メイグーンやその周辺に立ち寄り、この村の美しい自然や心地よい空気を楽しみます。また、メイグーンの東側にある観光客用の施設には、3階建てのホテル、小屋、レストラン、喫茶店の他、子供たちが遊べるスペースがあり、多くの人々が訪れています。
●ルードバールガスラーン・アーハール村
この他、ルードバールガスラーンには、アーハールと呼ばれる、緑豊かで小さな村があります。この村は、雪で覆われた山々に囲まれており、この山から、冷たい風が吹き込むため、真夏でさえも、冬のような気候となっています。「アーハール」とは、水を意味するアーブと、反抗的な、厳しいという意味のハールという言葉からきています。これは、この村を流れる、冷たく流れの速い川を意味し、元々は、アーブハールと呼ばれていましたが、次第にアーハールになりました。水の溢れる泉、広大な土地、さくらんぼやくるみなど、様々な果実のなる果樹園、農業や産業に適した条件、さらに、その歴史の古さが、この村独自の特色です。アーハールの歴史は、イスラム以前に栄えた、サーサーン朝時代にまで遡り、村の北西部にある険しい山々のいただきにある廃墟は、この時代から残る、この地域で最も古い遺跡です。アーハール村のこのような特色から、休日になると、この地には、自然を愛し、安らぎを求める人々がやってきます。
●ルードバールガスラーンの山々
ルードバールガスラーンには、4000メートル級の5つの山が存在します。これらの山は、テヘランに近く、比較的、容易に訪れることができるため、登山家たちに親しまれています。また、これらの山の多くは、ルードバールガスラーンの北側に位置しています。