視点;モハンマディー解説員
制裁下で経済成長を達成したイラン
IMF・国際通貨基金は、イランの経済成長が事前の予測を大きく上回ったと報告しました。
IMFの最新の報告によると、世界経済の成長率は2.6%、先進国だけでは1.5%にとどまったのに対し、イランは5.4%の成長率を記録しました。
IMFは以前、イランの昨年の経済成長率を3%と予測していました。しかし、過去1年の石油生産量が1日あたり270万バレルを突破し、それまでよりも70万バレル多くなったことから、今回予測を大幅に上回る経済成長を達成したとしました。IMFは今年のイランの経済成長率についても3.7%と予測しました。
石油産業はイラン経済の牽引役として、現ライースィー第13期政権発足後、西側諸国からの制裁にもかかわらず大幅な増産を達成したほか、新たな輸出先の開拓にも成功し、国の予算削減を補う形で経済・産業の発展に貢献しました。
イラン石油省と国営石油会社は以前、困難な交渉の末、前政権期から残っていたタンカー積載の石油9000万バレルの売却に成功し、石油と液化ガス売却による外貨収入を国家経済につぎ込むことに成功しました。
イラン中央銀行の公式統計によれば、イラン経済の成長に占める石油・天然ガス産業の割合は20%となっています。イランには現在、確認されているだけで原油換算で3400億バレルに相当する石油・天然ガスが埋蔵しており、これは今後100年にわたって生産が可能な量です。こうした石油・天然ガス産業がイラン経済を大きく支えています。
しかし、イランの政府責任者は、イランが原油市場だけを追求することはないと繰り返し表明しています。特に原油価格の低下や西側諸国によるイラン石油の禁輸制裁をうけ、近年においてイラン経済は抵抗経済・脱石油経済の方向へと掻き立てられています。
過去1年間でイランが石油化学産業で160億ドルの外貨収入を得、GDP・国民総生産を大きく成長させたことはこうした観点から評価されるべきなのです。
今回のIMFの報告は、イラン経済の前向きな動向を示すものとして評価できますが、イランのような国には石油以外にも鉱山、貿易、観光、物流など様々な分野でポテンシャルがあり、それぞれが抱える障害が解消されれば、最短期間で経済発展の下地を拡大できるということを、視野に入れておく必要があるでしょう。