スナップバックが失敗するであろう理由とは?
https://parstoday.ir/ja/news/iran-i129612-スナップバックが失敗するであろう理由とは
アラーグチー・イラン外相が、「対イラン核合意に定められたスナップバック・メカニズム(対イラン制裁の再発動を可能にする仕組み)は失敗するだろう」と強調しました。
(last modified 2025-09-27T09:54:22+00:00 )
9月 27, 2025 17:53 Asia/Tokyo
  • イランのセイイェド・アッバース・アラーグチー外相
    イランのセイイェド・アッバース・アラーグチー外相

アラーグチー・イラン外相が、「対イラン核合意に定められたスナップバック・メカニズム(対イラン制裁の再発動を可能にする仕組み)は失敗するだろう」と強調しました。

【ParsTodayイラン】アラーグチー外相は26日金曜夜の国連安保理会合後に記者会見し「軍事攻撃が失敗したように、スナップバックも失敗するだろう」と強調しました。また、イランが決して圧力に屈しないことに触れ、「論理に外れた圧力が法に取って代われば、我々は成果を得ることはない」としています。そして「スナップバックの発動は違法であり、外交への道を閉ざすことになる。さらに、IAEA国際原子力機関との合意の履行を阻害するものであり、欧州諸国による今回の行動は我々の対IAEA協力に影響を及ぼすだろう」と語りました。

アラーグチー外相は加えて、安保理会合においても「決議案は外交推進ための誠実な努力だ」とし、「アメリカは外交を裏切り、欧州3カ国はJCPOA包括的共同行動計画(通称;対イラン核合意)を葬り去った」と述べています。

ロシアと中国が対イラン国連制裁の再発動阻止を狙い提案した決議案を審議・採決する安保理会合は、26日に開催されました。安保理決議2231号を技術的に6か月間(2026年4月18日まで)延長する内容の同決議案は、欧米諸国の妨害により必要な票数を獲得できず、賛成4票(中国、ロシア、パキスタン、アルジェリア)、反対9票(フランス、英国、米国、シエラレオネ、スロベニア、デンマーク、パナマ、ソマリア、ギリシャ)、棄権2票(ガイアナ、韓国)という結果に終わっています。

この決議案の否決により、決議2231第11項に基づくいわゆるスナップバック・プロセスは最終段階に入り、2015年の核合意成立後に停止されていた対イラン制裁は自動的復活の寸前を迎えました。しかし、こうした措置とは裏腹にイランは全ての責務を遵守していると繰り返し表明しており、しかも現状を招いた主要因は明らかに米国のJCPOAからの一方的な離脱および、欧州諸国の約束不履行であることに疑いの余地はありません。

過去7年間、一方的な政策と違法行為によってJCPOAを脆弱化させてきた米国と欧州3カ国(英独仏)は、今や安保理のメカニズムを悪用し、イランに対する政治的・経済的圧力を強めています。こうした中で、IAEAはイランの核活動が平和的であることを繰り返し確認しており、またイランとIAEAは最近エジプト首都カイロで合意に達しています。

イラン政府高官は、西側諸国の威圧的な行動とスナップバックの違法な発動手続きを非難する一方、「我が国は決して威圧や圧力に屈することはない」と強調しました。イラン政府は常に「制裁の真の解除と相互尊重に基づく対話に引き続き応じる用意がある。しかし、わが国はあらゆる圧力行使や脅迫政策に対し断固たる対応を取るだろう」と表明してきています。

所謂欧州トロイカと呼ばれるドイツ、フランス、英国は先月28日にスナップバック・プロセスに着手していました。安保理は26日金曜、ロシアと中国が出した対イラン制裁再発動延期提案を却下しており、国連制裁は28日日曜に再発動される見通しです。しかし、「スナップバック」は公表されている目的を達成できておらず、これにはいくつかの理由があります。それらの理由とは、一斉実施に関する世界規模での合意が得られていないこと、イランの主要な収入源(特に東アジア向け石油輸出)が長年にわたり制裁を回避していること、国連の執行手段が限られていることなどです。実際に過去の経験から、イランが西側諸国からの圧力に対し、核協力の縮小で対応してきたことが判明しています。

第1の点を明確に説明すると、スナップバックの成功の基準が「イランの外貨収入の大幅減少、及び同国政府に対する核開発計画の撤回の強要」であるとすれば、数々の証拠は、スナップバックだけではそれほど大きな変化は見られない可能性を示唆しています。西側諸国のアナリストらも「スナップバックによる経済効果は米国が課す厳しい一方的制裁に比べれば限定的であり、主に政治的かつ象徴的な効果にとどまる」と予測しています。

2番目の問題は、石油輸出の継続です。イランへの圧力が高まっている現在においても、中国は石油輸入の大部分がイランからのものであると公言しており、様々な形でこの傾向を維持しています。石油貨物追跡データによれば、2025年における中国のイランからの原油輸入は日量平均143万バレルとなっています。

そして第3の問題は、対イラン国連制裁の再発動をめぐりその実施の足並みが揃わないこと、及び実施に関してアジアと西側が二手に分かれていることです。スナップバックはすべての国連加盟国に対して法的拘束力を持つものの、実際の実施は各国政府の意思、司法制度、そして監視能力に左右されます。このため、中国やロシアといった主要国はこのプロセスに賛同しておらず、制裁の実施に協力ではなく、逆に反対すると考えられます。

第4の問題は、国連の手段が抱える本質的な限界です。安全保障理事会は米国のような「二次制裁」手段を有していません。即ち、ドルやSWIFT国際銀行間通信協会へのアクセス遮断などを示唆することで、西側諸国以外の銀行、第3国の船会社、あるいは西側諸国の管轄区域外にある石油会社に対し、統一的な措置として制裁を強制することはできません。一方、イランは近年、制裁を回避する方法を習得し、これを効果的に駆使しています。圧力を受けながらも、イランの2024年の石油収入は高く、推計では輸出に占める石油の割合は増加しているとされています。つまり、イランは制裁に合わせて予算と国際収支構造、割引、相殺といった手段を適応させているのです。スナップバックの発動は、最終的には石油割引の増加につながる可能性はあるものの、石油輸出がゼロになることはないと見られます。

第5の問題は、スナップバック発動に対するイランの反応です。イランは、スナップバックが実施された場合、IAEA国際原子力機関との新協定を破棄すると警告しています。IAEAは2025年6月以降、イランの核施設に対する「情報の流れ」とアクセスを遮断すると繰り返し発表している。したがって、スナップバックの圧力が高まれば高まるほど、イランが核の透明性を低下させる可能性が高まります。これは、西側諸国が求めていると主張する、イランの核活動に関するいわゆる「保証」目標とは正反対なものです。

結論として、イランに対する今回のスナップバックの実施に当たり、イランの核および地域行動の変化、そして対外収入の大幅な減少を基準とするなら、それは「失敗する」だろうと言わざるを得なくなります。その理由としては、国連制裁に関する西側とアジアの深刻な相違を考えた際に国連制裁の完全な一斉実施が望めないこと、対イラン制裁を回避するネットワークがすでに出来上がっていること、国連の執行力に限りがあること、そしてイランが対抗措置としてIAEAとの核協力を縮小するだろうということが挙げられるのです。
 

 


ラジオ日本語のソーシャルメディアもご覧ください。

Instagram Twitter