イラン最高指導者がメッカ巡礼者にメッセージ
イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師が、メッカ・カアバ神殿への巡礼者に向けたメッセージの中で、「パレスチナの処遇をめぐる“世紀の取引”なるものは必ず失敗する」と語りました。
ハーメネイー師は10日土曜に発表されたメッセージの中で、「過去数世紀で最大の圧政がパレスチナの地で起こっている」と強調し、「パレスチナ問題はイスラム世界の最重要課題である。宗派、人種を問わず、全イスラム教徒の政治的な問題の筆頭に掲げられるべきだ」と述べました。
また、「アメリカとその同盟国がまとめた“世紀の取引”という策略は、人類に対する犯罪に等しい」と強い口調で非難しました。
さらに、「メッカ巡礼で多神教徒への嫌悪を表す儀式は、あらゆる時代における偶像崇拝者や圧制者の残忍さや暴虐、卑劣さ、あらゆる腐敗、さらには全ての時代の覇権主義者の専横ぶりや理不尽な行動に対する抵抗を意味する」とし、「今日、アメリカを筆頭とする不信人者や多神教、覇権主義者の戦線への嫌悪は、ISIS等のテロ組織、米軍事企業ブラックウォーター等のテロの拠点への非難、被抑圧者の殺害や好戦主義への嫌悪、子供殺しのシオニスト政権イスラエルやその支持者に対するイスラム共同体の叫びである」としました。
さらに、「多神教徒への嫌悪は、西アジア・北アフリカという緊迫した地域に展開するアメリカとその手先の好戦主義を非難することを意味する」とし、「メッカ巡礼での嫌悪の儀式は、地理、人種や肌の色などを理由に差別することへの嫌悪、イスラムがすべての人々をいざなう公正かつ信あふれる行動に対する侵略的で不和を誘う大国の恥ずべき邪悪な行動への嫌悪を意味する」としました。
10日土曜に発表されたハーメネイー師のメッセージの内容は以下のとおりです。
慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において
賞賛は神のみのものである。預言者とその善良で清らかな一門、預言者の善良な教友たちに平安あれ。
毎年のメッカ巡礼の儀式は、イスラム共同体に対する創造主なる神の慈愛あふれる約束の場である。コーランの節、「人々をメッカ巡礼・ハッジに誘いなさい」というコーランによる呼びかけによって、歴史を通して、全ての人々がこの神の宴の席へのお招きにあずかっている。神を求める人々の精神、そして彼らの思想や見解は、この宴の恩恵を享受し、メッカ巡礼で得た教訓は、大勢の人々によりイスラム世界全域に伝えられる。
メッカ巡礼においては、人々や社会の教育や発展における主な要素となっている神への服従や、神を思い起こすという行動が、統一された共同体のシンボルである団結、一神教の基本にそった共同体の動きと努力を示し、共通の目的をもったルートあるいはカアバ神殿という共通の中心の周りを回ること、そして、巡礼者が差別なく平等の機会にあずかり、同じ立場にあることなどが、小さなシンボルの中でイスラム社会の支柱の集合体を示している。
巡礼行為に見られる、体に白い衣をまとうこと、タワーフと呼ばれるカアバ神殿の周りを回る儀式など、その1つ1つはイスラムが自らの好ましい集合体を提示する様子の主要部分の一部なのである。
世界の津々浦々からやってきた多様な人々の間での情報や知識の交換、経験を移転すること、互いの状況について知り合い、誤解を解消すること、各人が心を接近させること、共通の敵への対抗を目的とした力を蓄積することは、メッカ巡礼による重要で大きな成果であり、それらは通常の会合や集まりを何回重ねても得られないものである。
メッカ巡礼での多神教徒への嫌悪を示す儀式は、あらゆる時代における偶像崇拝者や圧制者、残忍さや暴虐、卑劣さ、腐敗の全て、さらには全ての時代の覇権主義者の専横ぶりや理不尽な行動を忌み嫌うことを意味するものである。今日、アメリカを初め多神教や覇権主義者への嫌悪を示すことは、ISISなどのテロ組織やアメリカの軍事企業ブラックウォーターといったテロ拠点への非難、被抑圧者の殺害や好戦主義への嫌悪、子供殺しのシオニスト政権イスラエルやその支持者をめぐるイスラム共同体の叫びなのである。
これはすなわち、西アジア・北アフリカという緊迫した地域における、アメリカやその手先の好戦主義を非難することである。こうした好戦主義は日々諸国民の苦しみを最大限にし、彼らに甚大な災いを与えている。この嫌悪を示す儀式はすなわち、イスラムが常に呼びかけている公明正大さや威信あふれる行動に対抗する、侵略的で不和分裂を狙う超大国の邪悪で覇権主義的な行動を嫌悪することを意味する。
これらは、純粋なイスラムがわれわれに呼びかける預言者イブラーヒームが残したメッカ巡礼による恩恵の氷山の一角でしかない。そして、これはイスラム社会の理想の重要な部分の具体的なシンボルであり、毎年イスラム教徒らによってメッカ巡礼の形で重要な意味概念をもって盛大に執り行われている。それはあたかも、言葉によって全ての人々にこうした社会の形成に向けた努力を呼びかけているかのようである。
今すでに世界各地からメッカ巡礼の儀式に参加している多くのイスラム世界のエリートたちは、重大な責務を担っている。これらの教訓は彼らの努力やイニシアチブにより、諸国民や世論に伝えられる必要がある。彼らの手によって、知識、経験、動機、思想面での精神的な情報交換が実現されなければならない。
今日、パレスチナ問題はイスラム世界の最重要課題の1つである。宗派、人種を問わず、全イスラム教徒の政治的な問題の筆頭に掲げられるべきである。最近数世紀における最大の圧政がパレスチナで発生している。この痛ましい出来事においては、1つの国民の領土、住居、農作地、財産や威信、アイデンティティなどが没収されている。しかし、パレスチナ国民は神の恩寵により、敗北を受け入れてはいない。今なお立ち上がって昨日よりも今日、より情熱をもって勇敢に舞台に参加している。そうではあるが、この参加が奏功するにはイスラム教徒全員の支援が必要とされる。
圧政者たるアメリカと、背信的なその追従者により仕組まれた、「世紀の取引」と名付けられた策略は、パレスチナ国民のみならず、人類社会に対する犯罪行為に等しい。我々は全ての人々に対し、この陰謀や詐欺行為を打ち砕くため積極的な参加を呼びかける。神の力によってこの陰謀や覇権主義戦線によるその他の欺瞞行為は、抵抗戦線の信仰心と意志の前に失敗に終わると考える。
至高なる神は仰った。
それとも(あなたに対して)策を巡らす積もりか。だが背信者たちこそ、策謀にかかるであろう。
(コーラン第52章アッ・トゥール章トゥールの山、第42節)
最後に、すべてのメッカ巡礼者に対し神の祝福と慈愛、恩恵のあらんことを切に願ってやまない。
セイエド・アリー・ハーメネイー
2019年8月5日
イラン暦1398年モルダード月14日
イスラム暦1440年ゼルハッジャ月3日
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