「世界ゴッツの日」に際してのイラン最高指導者の演説
イランイスラム革命最高指導者ハーメネイー師が、7日金曜、パレスチナとの連携を目指す「世界ゴッツの日」に際し演説を行いました。
イスラム教徒のラマザーン月の最後の金曜日は、イスラム共和国の建国者故ホメイニー師により、パレスチナの虐げられた人々への支持を示すことを目的とした「世界ゴッツの日」に制定されており、今年のこの日は7日金曜に当たります。
ハーメネイー師の演説の内容は以下の通りです。
慈悲深く慈愛あまねき神の御名において
全世界の主なる神に称えあれ。われらの神の預言者たるムハンマドを祝福し平安あれと祈る。預言者ムハンマドのしるしとすべての創造物の中で最も尊敬されるもの、彼の善良で純粋なる一族、彼の選ばれし仲間、そして最後の審判の日まで彼らに従った人々を伴った。
パレスチナ;イスラム共同体の最も重要かつ現実的な問題
パレスチナの出来事は依然として、イスラム共同体共通の最も重要かつ、現実的な問題である。圧政的で残虐な資本主義体制の政策は、1つの国民の手をその住処や祖国、先祖代々の土地から引かせ、そこに外部の人間によるテロリスト政権を居座らせている。
シオニスト政権イスラエル創設の論理
シオニスト政権イスラエル創設の空ろな論理より根拠が欠如し、またさらに脆弱なものとは何か?ヨーロッパ諸国は自らの主張に基づき、第2次世界大戦期間中にユダヤ教徒を迫害した。これゆえ、西アジアにおいて1つの国民を難民化させ、その国における大惨事的な虐殺を働くことで、ユダヤ教徒の仇をうったのである。
このことは、西側諸国の政権がシオニスト政権への狂気的かつ惜しみない支援によってこれに依拠してきた論理である。かくして、彼らは人権や民主主義に関する自らの虚偽の主張を捏造したことになる。そして、この笑止の沙汰に等しく、かつ嘆かわしい出来事はこれまで70年以上にわたり続いており、それには折あるごとに新しい1ページが追加されている。
シオニスト政権との戦い;万人の責務
シオニストは、強奪されたパレスチナを初日からテロリズムの拠点に転換していた。イスラエルは一国にはあらず、パレスチナ国民およびそのほかのイスラム教徒の諸国民に対抗するテロリストの一大拠点である。この残虐な政権との戦いは、圧制およびテロリズムとの戦いであり、これは万人の責務である。
イスラム共同体内の弱点および内分裂;パレスチナ強奪の引き金
注目すべき1つの点は、1948年に強奪政権が発足したものの、イスラム圏中でもこの重大な地域への侵入の前哨戦が、その何年も前から開始されていたことである。その時期・期間はちょうど、西側諸国の傀儡政権あるいは、専制的・自己愛的な政権の発足および、世俗主義や盲目的で過激なナショナリズムの支配を目的に、西側諸国が盛んにイスラム諸国に干渉していた時期に当たっている。イランやトルコ、そして西アジアや北アフリカのアラブ諸国における当時の出来事を紐解いていくと、イスラム共同体内に潜む弱点や内分裂が、パレスチナ強奪の引き金となり、覇権主義世界によりこの打撃がイスラム共同体に及んだ、という苦い現実が明らかになる。
パレスチナ強奪問題において、シオニスト資本家との相乗効果を挙げた東西陣営
当時、資本主義と共産主義の両陣営がシオニストの大富豪と一緒になって相乗効果を挙げるに至ったことは教訓的なものである。陰謀の根幹を練り、追求したのはイギリスであり、シオニストの資本家らは金銭や武器をもってのその実行役を担った。そして、違法な政権の成立を正式に承認し、大量のユダヤ人をそこに派遣してきた最初の政権は、旧ソ連であった。強奪政権はイスラム世界における状況の産物である一方で、他方でこれははヨーロッパの侵略や陰謀でもあったのである。
イスラム世界に有利となった現代世界でのパワーバランスの変化
今日、世界の状況はもはや当時のようなものではない。我々は常に、この現実を認識し視野に入れておく必要がある。今日、力の均衡・パワーバランスはイスラム世界にとって有利なものに変化している。欧米諸国での様々な政治・社会的事象により、世界にとって西側諸国における構造・行政管理・モラル面での奥深い弱点や対立が浮き彫りになった。アメリカでの選挙問題、自らの正当性を主張してやまない傲慢なその上層幹部のスキャンダルという大試練、さらには欧米諸国での1年以上に及ぶ新型コロナウイルス対処での失敗や、それに伴う恥辱的な出来事、最近のヨーロッパ所要国での政治・社会的な混乱、これらはすべて西側陣営が凋落の一途をたどっていることを示すものである。
一方で、最も一触即発なイスラム圏における抵抗軍の成長、彼らの防御・攻撃的能力の成長、イスラム教徒の諸国民における自己認識と動機付けおよび希望の成長、イスラムおよびコーランに即したスローガンへの更なる傾倒、諸国民の間での自立や独立主義の増大、学術的な発展、これらはすべてよりよい将来という吉報を告げる喜ばしい兆候である。
パレスチナと聖地を主軸としたイスラム諸国の相乗効果・相互発展の必要性
このめでたき将来においては、イスラム諸国の相乗効果的な相互発展が1つの主だった根本的な目的となる必要がある。そしてこのことは決して、それほど実現が困難であるとは思われない、この相乗効果・相互発展の主軸は、国全体を意味するパレスチナの問題と、聖地ベイトルモガッダス・エルサレムの運命である。この事実によってこそ、イランイスラム革命の創始者ホメイニー師の光明な御心は、イスラム暦ラマザーン月最後の金曜日を、パレスチナ人との連帯を示す「世界ゴッズの日」に制定することに導かれたのである。
聖地を主軸としてイスラム教徒が相互発展を遂げることは、シオニストやこれを支持する欧米諸国という敵の悪夢である。アメリカ提唱の一方的かつ失敗した、パレスチナ問題解決案としての「世紀の取引」そしてその後に成立した複数の弱小アラブ政権とイスラエルの関係正常化工作は、こうした悪夢から逃避するための最後の悪あがきでしかなかったのである。
私は、こうした工作が何の結果にも至らず、また、敵たるシオニスト政権の滅亡に向けた凋落への動きが始まっており、それが絶え間なく続くであろうことを断言する。
将来を決定する要素;被占領地における抵抗の継続および、パレスチナ人聖戦士に対するイスラム教徒の世界規模での支援
将来を決定する2つの重要な要素は、以下のとおりである。第1に、何よりも重要な要素としてパレスチナ領内での抵抗の継続、殉教と聖なる戦いの戦線の強化が指摘できる。そして第2に、パレスチナ聖戦士に対する全世界のイスラム教徒の諸国民と各国政府による世界規模での支援である。
政治家、知識人、宗教学者、政党やグループ、情熱的な若者など全員がこの世界的な運動の中で自分たちの立場を見つけ、役割を果たす必要がある。これはまさに敵の策略・陰謀を粉砕し、次のような神の約束のために他ならない。それは、「それとも、あなたに対し策謀しようとしているのか。だが、不信心者たちこそ策謀にかかるであろう(コーラン第52章、アッ・トゥール章『山』第42節)」、そして「神は、ご自分の思うところに十分な力をお持ちであられる。だが、人々の多くは知らない(コーラン第12章、ユースフ賞『ヨセフ』第21節)とあるとおりである。
私は、少しアラブの若者たちと彼ら自身の言葉で話したいと思う。
慈悲深く慈愛あまねき神の御名において
すべての気高きアラブの人々、特に若者たちに平安あれ、パレスチナと聖地ベイトルモガッダス・エルサレム(ゴッツ)の抵抗する人々、そしてアクサーモスクを守る人たちに平安あれ。
抵抗運動の殉教者たち、およびこの道において自らの命を捧げた数多くの聖戦戦士たちに平安あれ。とりわけ殉教者シェイフ・アフマド・ヤースィーン氏、セイエドアッバース・ムーサヴィー氏、ファトヒー・シャカーキー、エマード・モグニエ、アブドルアズィーズ・ランタスィー、アブーマハディ・アルムハンディスイラク民兵組織副司令官、そして抵抗運動の特に傑出した殉教者ガーセム・ソレイマーニーイラン革命防衛隊司令官、彼らはみな実りある祝福された人生の後、自らの殉教でもって抵抗運動の現場に大きな影響を残したのである。
パレスチナ人たちの聖戦と抵抗運動の殉教者たちの清浄な血は、この祝福された旗を高く掲げ、パレスチナ聖戦の内なる力を何百倍にも高めることができた。パレスチナの若者は、かつては石を投げることで自らを守り、今は高精度ミサイルを発射することで敵に報復している。パレスチナと聖地はイスラムの聖典コーランにおいて「聖なる土地」と名付けられている。何十年もの間、この清浄な土地は最も汚らわしく最も醜悪な一味の人間たちによって占領されている。気高い人々を殺しまわり、そして悪びれることもなくそれを喧伝する悪魔たち。70年以上にもわたって土地の主たちを虐殺や略奪、投獄に拷問でもって痛めつけてきた人種差別主義者たち。しかし、神のおかげで彼らはパレスチナ人たちの意志を砕くことはできなかった。
パレスチナは生きており、聖戦を続けている。そして神の助けでやがて忌まわしい敵に打ち勝つことができるだろう。偉大なゴッツとすべてのパレスチナはそこに住む人々に属するものであり、彼らのもとに還されるであろう、インシャーアッラー。そしてこれは神にとってみれば難しいことではない。パレスチナ問題においては、すべてのイスラーム諸国の政府および国民が責務と責任を負っている。しかしながら、聖戦の柱はパレスチナの土地内外に住むおよそ1400万のパレスチナ人たち自身である。この集団の団結と統一された意志があれば、大きな仕事を成し遂げることができるであろう。今日、団結はパレスチナ人たちの最も大きな武器である。パレスチナ団結の敵は、シオニスト体制イスラエルとアメリカ、その他の強大な政治的権力である。しかし、パレスチナ社会の内側から団結を挫くようなことがなければ、外の敵たちは何も為すことはできないであろう。この団結の支柱は内なる聖戦と敵を信用しないことである。パレスチナ人たちの主たる敵、つまりアメリカ、イギリス、邪悪なシオニスト体制をパレスチナ政治の土台に据えてはならないということである。パレスチナ人たちは、それがガザの住民であれ、ゴッツであれ、ヨルダン川西岸であれ、1948年領土であれ、ひいては難民キャンプであれ、みなが団結し、結束の道を歩まなければならない。
どの集団も他の集団を擁護し、彼らが困難に陥った時は持てる道具を駆使しなければならない。勝利への希望は、今いつにもましてあふれている。権力のバランスはパレスチナに有利な方へ大きく変化している。シオニスト体制は年々弱体化してきている。シオニスト軍は自らを「敗北を知らぬ軍」と名乗っていたが、レバノンでの33日間戦争やガザでの22日間戦争および8日間戦争の経験を経て、「勝利を目にすることのない軍」へ変わった。政治状況は2年の間に4回も総選挙をせざるを得ず、安全保障環境はますます敗北に苛まれている。そして日に日に増えるユダヤ人の逆移住の傾向は、この自称ばかりの体制の面子をつぶす要因となっている。アメリカの援助への要請やいくつかのアラブ諸国との関係正常化といった努力は、この体制の脆弱さのもう一つの象徴である。もちろんこれも彼らへの助けにはならない。これよりも何十年も前にはエジプトと国交を樹立した。その日から今日までシオニスト体制は非常に脆く貧弱になった。これらをもってしても、いくつかの弱く取るに足らない国々と関係を樹立することが彼らへの助けとなることがありうるだろうか? もちろんそれらの国々にとっても、このシオニスト体制との関係は何ら得るものがないのである。敵であるシオニストはこれらの国々の財産や土地に浸食し、退廃と不穏さをもたらすであろう。こうした事実をもって、シオニスト体制の行為に対するイスラーム諸国の重大な責務を忘れてはならない。
イスラーム教徒やキリスト教徒の聖職者たちは、シオニスト体制との関係正常化と宗教的禁忌と言明し、知識人や誇りある人々は、パレスチナに後ろから矢を放つようなこの裏切りの結果をすべての人々に説明すべきである。シオニスト体制が衰退する中で、抵抗運動の戦線能力が上がっていることは輝かしい未来への兆候である。防衛・軍事能力の向上、有用な武器の自給、聖戦への自信、若者たちの日増しに深まる自覚、パレスチナ全土およびその外へ広がる抵抗の輪、アルアクサーモスク防衛のための最近の若者たちの蜂起、世界中の地域の世論にパレスチナ国民の聖戦と苦難が反映されていることがそれである。パレスチナ抵抗の論理は、イラン・イスラーム共和国を通じて国連の文書として採択されている。それは先進的で魅力的な論理である。パレスチナの抵抗運動者たちは、パレスチナの本来の住民による国民投票を提案することができる。この国民投票は国の統治体制のあり方を定め、あらゆる部族・宗教に属する本来の住民、特にパレスチナ難民が参加するものである。そしてその統治体制は難民たちを国内へ帰還させ、入植者たちの運命を明らかにする。
この要求は、世界で受け入れられている一般的な民主主義にもとづくものであり、誰もその先進性を疑うことはできない。パレスチナの聖戦戦士たちは、略奪体制がこの要求を受け入れざるをえなくなるまで、その合法的・倫理的抵抗を続けなければならない。
神の名のもとに前へ進めよ、そして「必ず神は自ら助くる者を助く」と知れよ。
諸君に神の慈悲と平安あれ。
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