政治化されたカンヌ映画祭
(last modified Wed, 01 Jun 2022 12:10:50 GMT )
6月 01, 2022 21:10 Asia/Tokyo
  • カンヌ映画祭
    カンヌ映画祭

このたび開催されたカンヌ映画祭は、再び物議をかもすことになりました。それは、発表された各賞の受賞者選出において専門的なアプローチが考慮されず、芸術より政治的見解が優先される様が見られたためです。

2022年のカンヌ映画祭については、4つの重要な点が挙げられます。

第一の点は、カンヌ映画祭の明白な政治化と、西側の政治的傾向と利益が芸術を超越していたことです。

このような側面の頂点といえたのが、映画祭開会式でのウクライナのゼレンスキー大統領によるスピーチでした。この開会式では、世界の映画祭や芸術祭に存在する慣習や規則に反して、同大統領がオンラインによって参加し、戦争と映画という題目のもとに、ロシアとの戦争で自国やその国民にもたらされた惨状ついて語りました。実際のところゼレンスキー大統領は、いち芸術家として戦争を扱う映画について語るのではなく、ロシアに対抗し西側の支援を受けている指導者として語ったのです。このようなアプローチは、アメリカやヨーロッパ諸国がこの数ヶ月の間続けている、反ロシア政策の一部といえます。

第二の点は、映画の評価において芸術的・専門的な要素は無視されていることです。

基本的に、映画祭をはじめとした芸術イベントにおける哲理は、世界各国のすばらしい輝かしい作品を芸術的かつ専門的に競い合わせることにあります。しかし、長い歴史を持ち今年で75回目を迎えたカンヌ映画祭は、私たちが進歩しているとしても、時が経つにつれ、映画祭としての芸術的価値や専門的側面が瓦解していく様を見せています。上映される映画の一部、特にイランの監督や俳優が出演している映画では、その内容や構成に芸術的要素があまり見られず、それよりも、イラン社会の歪められた破壊的イメージを提示している点が目に付きます。このようなイメージは、今日の現実社会とかみ合わないものであり、イラン人社会からは、このような映画やカンヌ映画祭のアプローチに反発する反応が、多方面で示されています。

第三の点は、フランスで開催された今回の第75回カンヌ映画祭において、特にヨーロッパ諸国を中心とする西側の反宗教的アプローチが続けられていたことです。

今回コンペティション部門で上演され女優賞を受賞した映画『ホーリー・スパイダー(HOLY SPIDER)』のアプローチは、小説『悪魔の詩』を書いたインド出身の元イスラム教徒、サルマン・ラシュディや、ヨーロッパ諸国でイスラムの聖典コーランに火を点ける人々の行為に連なるものでした。

この映画では、イラン北東部マシュハドにあるイスラム教シーア派8代目イマーム・レザーの聖廟が侮辱されています。イスラムを求める声は実のところ、ヨーロッパ諸国の人々の間で拡大しています。このような傾向に追い詰められているヨーロッパ政府は、イスラム教の預言者ムハンマドやシーア派の歴代イマームへの侮辱のようなさまざまな形で、反イスラム主義を広めようとしています。そのために、内容がないうえに芸術的創造性がより低く、明白たるイスラムの宗教的領域を侮辱することのみを目的とした、このような映画の制作・上映は、世界中のイスラム教徒、特にイランのイスラム教徒の感情を傷つけているのです。

第四の点は、カンヌ映画祭のような国際的芸術イベントに関するこの数年の実績をみると、それらが各国政府の政策から切り離されておらず、主な運営者が西側政府であるという結果が出ていることです。したがって、映画の評価や受賞者決定にも、西側政府や強い影響力を持つシオニスト政権イスラエルのロビーの見解や政策が大きく反映されています。このような背景によって、西側が信奉する各宗教の尊重や反宗教差別を、基本原則や受け入れ難い人権侵害として挙げているにもかかわらず、第75回カンヌ映画祭では、反宗教的かつシーア派第8代イマームを侮辱する映画が上映され、賞賛を受けたのです。

今回のカンヌ映画祭での様子は、西側が口先では人権に気を配っているとしながらも、実際の行動ではそれを明らかに西側大国の政治や利益のための道具にしていることを、改めてはっきりと証明して見せることになりました。

 


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