視点
IAEA理事会での対イラン決議採択と、イランの断固たる反応
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IAEA理事会
IAEA国際原子力機関理事会の定期会合において、アメリカと英独仏3カ国が提唱した対イラン決議案が8日水曜、ロシアと中国の強い反対にもかかわらず採択されました。
この決議は賛成30票、反対2票(中国とロシア)、そして棄権3票(インド、リビア、パキスタン)で採択されています。
ロシアのウリヤノフ在オーストリア・ウィーン国際機関常駐代表は、「IAEA理事会での対イラン決議採択は、同国とIAEAの協力改善にとっての助けにはならず、対イラン核合意復活を目指すウィーン協議の妥結にも全く効果がないだろう」と語りました。
在ウィーン中国国連事務局の王群代表も、今回のIAEA決議に反対を表明し、対イラン圧力行使を狙いとした西側諸国の動きに懸念を表明しています。
また、「アメリカは現在のイラン核問題をめぐる危機を生じさせた側として、可及的速やかに政治的な決断を下し、ウィーン協議での合意成立に向けイランの合法的な懸念事項に前向きに答えるべきだ」としました。
IAEA決議において、西側諸国は「イラン国内の未申告の核施設3箇所において核物質が発見された」という捏造された主張を提起して懸念を示すとともに、イランに対しIAEAとの完全な協力を求めています。
アメリカとこれに同盟する複数の欧州諸国により提出されたこの決議案の採択は、この時期における西側諸国の姿勢の明白なしるしとなっています。この決議案の起草者は、ウィーン協議の現在の行き詰まり、そして制裁解除やイラン・イスラム革命防衛隊のテロ組織リストからの削除というイランの権利要求を米が執拗に拒むことにより、政治的な圧力を通してイランに自らの不当で過剰な要求を呑ませられる、あるいはイランに自らの法的な権利を断念させられる、と思い込んでいるのです。
こうした政治化は、グロッシIAEA事務局長の同調、そして事実上シオニスト政権イスラエルから提供された情報による強欲な報告の提出による、同事務局長の根回しをもって実行されています。しかしこうした中、イランは私欲にまみれた決議案に対し、断固たる警告的な反応を示しています。
IAEA理事会での採決実施前の最初の段階で、イラン原子力庁は「IAEAによる非合法アプローチ」と呼ばれる行為への対抗措置として、IAEAの監視カメラ2機の作動を停止し、「IAEAはこれまで、イランの幅広い協力を評価しなかったばかりか、ある意味でこうした協力を義務とみなしている」と表明しました。
また、「もっとも、現在作動しているIAEAの監視カメラ全体のうち、80%以上は保障措置にもとづくもので、それらはこれまでどおり作動が継続される」としています。
IAEA理事会にて対イラン決議が採択された後も、イラン外務省は声明を発表し、「今回の決議は、IAEA事務局長によるバランスを欠いた性急な報告、そして、イスラエルにより捏造された虚偽の情報に基づいてなされたもので、その結果は、イランとIAEAの協力のプロセスの脆弱化以外にないだろう。イランは、IAEAの非建設的なアプローチおよび、今回の決議採択を理由とし、最新鋭の遠心分離機の設置および、保障措置外の監視カメラの作動停止といった、現実的な対抗措置に出ている」と表明しています。
こうして、イランはアメリカを筆頭とする西側諸国の不当な要求を呑まない意向を示したほか、IAEAによる政治化措置および、イランに対抗する立場や措置に出ているイスラエルと歩調を合わせたIAEA事務局長の私欲的な立場に対し、断固たる措置に出ています。国内の核施設に設置されているIAEAの監視カメラ2機の作動停止は、そのほんの序の口に過ぎません。
同時にイランは、自らの平和目的の核計画の組織的な方向性に関するイスラエルと西側諸国の疑惑が、単なる口実探しおよび、対イラン敵対行為の強化を狙ったものに過ぎないことを強調しています。
アミールアブドッラーヒヤーン・イラン外相は「アメリカと西側諸国は、イランのイスラム的な信条においては核爆弾が何の位置づけももたず、イランが核爆弾を追求していないことを熟知しており、このような無益な口実をもって、イランによりイスラエルを認めさせ、自らの目的を達成させようとしていた」と語りました。