知事選候補に空包投げつけ… 沖縄のチョウ研究家が訴える米軍廃棄物問題
(last modified Tue, 13 Sep 2022 08:37:12 GMT )
9月 13, 2022 17:37 Asia/Tokyo
  • 知事選候補に空包投げつけ
    知事選候補に空包投げつけ

先月26日、沖縄知事選候補の佐喜真淳氏(自民・公明推薦)が那覇市内で街頭演説をしていたところ、聴衆の中にいた女性から空包を投げつけられる事件がありました。女性は沖縄本島北部にある「やんばるの森」に生息するチョウの研究家で、空包は米軍が森に捨てたものでした。女性は今もSNS上で米軍廃棄物問題を訴え続けています。

投げつけられた空包は、佐喜真陣営の県議2人と運動員1人の胸や手に当たりましたが、けが人は出ませんでした。事件翌日の先月27日には、沖縄県警が空包を投げつけた女性の自宅を家宅捜索しました。また、28日には自民党沖縄県連がこの女性を刑事告発しています。

メディアはこの女性の名前を報じていませんが、「アキノ隊員」というツイッターアカウントが空包投げつけを自らの行為と認めています。このアカウントは本名を「宮城秋乃」と名乗っています。宮城秋乃氏は、沖縄県内に住むチョウ研究家で、米軍北部訓練場跡地(通称:やんばるの森​​​​​​)でチョウの生態を研究するとともに、米軍が廃棄した弾薬などが大量に残されたままになっている現状を訴えてきました。

北部訓練場は沖縄県国頭郡の国頭村と東村にまたがる米海兵隊の訓練場で、「やんばるの森」と呼ばれる沖縄本島でも貴重な生態系の残る森林の中にあります。

2016年12月22日、北部訓練場のうち4010ヘクタールが日本側に返還され、総面積はそれまでの7500ヘクタールから3500ヘクタールに縮小しました。

米軍用地が日本に返還される際は、跡地利用特措法にもとづき、国は土地の原状復帰をした上で所有者に引き渡す義務を負っています。北部訓練場についても国・沖縄防衛局は返還後に廃棄物の撤去などを行ったとして、1年後の2017年12月25日に所有者に土地を引き渡しています。

しかし、宮城氏が引き渡し後にやんばるの森に入ったところ、米軍が残した弾薬などが多数発見されました。また、土壌からは微量ではあるもののDDTやPCB(ポリ塩化ビフェニル)による汚染も確認されました。

宮城氏はその後も未使用の弾薬などが見つかる度に、県警に通報して回収を依頼しました。県警は当初回収に応じていましたが、2019年10月頃から、土地がすでに所有者に引き渡されていることを理由に、所有者以外からの通報には対応しないという方針をとるようになります。

その後も米軍廃棄物の発見は続き、2020年10月には放射性物質・コバルト60を含む通信機器機材が、昨年1月には未使用の実弾1発も発見されました。沖縄防衛局は昨年12月と今年6月に、北部訓練場跡地の廃棄物調査の入札公告を出していますが、現時点ではまだ数多くの米軍廃棄物が残されたままとなっています。

宮城氏が県知事選候補に投げつけたのは、そうした米軍廃棄物の空包だったのです。

昨日12日、宮城氏はツイッターで、公職選挙法違反で書類送検されたと投稿しました。

宮城氏とともにやんばるの森を調査し、7月の参院選で「沖縄の米軍基地を東京へ引き取る党」から出馬した中村之菊氏は、ツイッターで、「(空包を)投げた人が裁かれるのであれば、同時に放置した自公政権も、廃棄した米軍という組織も法に則って裁かれるべきです」と投稿しています。

玉城デニー氏の再選で幕を閉じた沖縄県知事選。玉城氏は普天間基地の名護市辺野古への移設工事を認めない方針を改めて示しました。一方で、政府は「辺野古が唯一の選択肢」といった従来の文言を繰り返しています。

沖縄がどれだけ民意を示し、対話を要請しても、政府は無視あるいは形だけの対応に終始し、時には露骨なアメとムチを行使してきました。宮城氏による空包投げつけ事件は、安倍晋三元首相射殺から日が浅いこともあり、強い批判を招きました。「暴力ではなく言論で」 宮城氏に向けられる批判は、では沖縄が発する言論はどれだけ見向きされてきたのかという問題を逆照射しています。

 


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