ChatGPT、日本の個人情報に照準? 政府は警戒心ゼロ
欧米では規制の動きが日増しに高まっているChatGPT。しかし、日本ではそれとは真逆に、政府自らが積極利用する方針を早々と示しています。開発企業のCEOが来日し、総理とも直々に会談するなど、ChatGPTは日本の何を狙っているのでしょうか?
今月10日、ChatGPTの開発・運営企業であるOpenAI社のアルトマンCEOが来日し、岸田首相と会談したほか、自民党の会合に出席し、プレゼンテーションを行いました。
ChatGPTの公開後、アルマトン氏が外国を訪問するのは今回が初めてです。その訪問先が日本で、しかも国のトップである総理や与党との会談を持ったことは世界でも注目を集めました。
その理由は、ChatGPTをめぐる姿勢が欧米と日本で180度違うことにあります。欧州では先月31日に、イタリア政府が個人情報収集の適法性がないとしてChatGPTの利用を一時的に禁止しました。OpenAI社がある米国でも、非営利団体がChatGPTの商用利用の差し止めを求めています。ほかにも、テスラやツイッターのCEOであるイーロン・マスク氏やアップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアック氏など、テック業界の第一人者からもChatGPTをはじめとする人工知能をめぐる拙速な動きを批判する声があがっています。
欧米のこうした動きとは対照的に、日本ではほぼ無批判にChatGPTへの評価が広がっています。14日の衆院内閣委員会で松野官房長官、高市総務相ともにChatGPTを規制する考えはないと明言しました。アルトマン氏が来日した翌日の11日には、西村経産相が国会答弁の作成にChatGPTの利用を検討する意向を示したほか、河野デジタル相も7日、官公庁での利用を「積極的に考えていきたい」と述べました。
こうした中、日経クロステックは14日付の記事で、農林水産省が今月中にもChatGPTを業務に導入する方針を固めたと報じました。それによると、農水省は電子申請システムのマニュアル改訂作業にChatGPTを利用する計画だということです。日本の省庁がChatGPTを業務に利用するのはこれが初めてです。
お互い示し合わせたかのように相思相愛ぶりを見せるOpenAI社と日本政府。その背景を探ると、日本の個人情報保護法の抜け穴があります。
個人情報保護法や著作権法に詳しい弁護士の杉浦健二氏は自身のブログで、日本の個人情報保護法とEUのGDPR(欧州一般データ保護規則)を比較し、GDPRが個人情報データの処理にあたって本人の同意や生命・公共の利益などを適法化条件として定めているのに対し、日本の個人情報保護法はこうした条件を定めず、利用目的の明確化と通知公表を行いさえすれば、個人情報はいくらでも収集が可能であると指摘しています。イタリア政府がChatGPTの利用を禁止したのは、まさにこのGDPRが定める適法化条件をクリアしていないと判断したからでした。
仮に今の状態で、ChatGPTが日本に進出すれば、個人情報をほぼ無制限に取得できることになります。
アルトマン氏は出席した自民党の会合で、日本関連の学習データの割合引き上げや政府公開データの分析、機微データの国内保全のための仕組みの提供などを提案し、将来的に日本法人の設立も検討していると述べました。
ChatGPTへの批判や懸念が各国から出る中、ひとり前のめりになっている日本の姿勢は際立っています。個人情報保護を当の政府がおろそかにすれば、とりかえしのつかない被害を受けるのは国民です。