長崎の被爆者が、核禁条約会議の開催地ウィーンで積極的な交流活動
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長崎の被爆者
核兵器禁止条約締約国会議がオーストリア・ウィーンで初開催されるのを前に、現地では長崎の被爆者が各国の参加者に直接、核兵器廃絶を訴えようと積極的な交流活動に乗り出しています。
オーストリアの首都ウィーンで開かれた核兵器禁止条約の関連イベントの会場入り口では18日土曜、長崎の被爆者で今年8月9日の長崎原爆の日の式典で被爆者代表を務める宮田隆さん(82)が、広島で被爆した祖母を持つ被爆3世の瀬戸麻由さんとともに各国の参加者と積極的な交流活動に乗り出しています。
宮田さんは「私は長崎の被爆者です。何でも質問してください」と英語で書かれた上着を羽織り、それを見て話しかけてくる各国の参加者に対し瀬戸さんの通訳を交えながらみずからの被爆体験などを伝え、核兵器廃絶を訴えていました。
宮田さんはこの日は、およそ1時間のうちに10人以上の各国の参加者と次々に会話を交わしていました。
「被爆者を救うためにイギリスは何ができますか」というイギリス人男性の質問に対しては、「イギリスは日本とともに平和活動の先頭に立ってほしい」と応じていました。宮田さんは会議期間中、現地で開かれる関連イベントでゲストとして被爆体験を語ることになっていますが、それ以外の時間はこうした交流活動も行い、核兵器廃絶の機運を盛り上げたいとしています。
また、「被爆者は珍しいと思われいるからこそ被爆者がこういう場所に来て話をすることが重要だと思う。われわれ被爆者が語れるのは全体の一部しかないが、相手には長崎・広島に来てもらい、被爆者との懇談をしてほしいと伝えている」とコメントしました。
宮田さんに話しかけた各国の参加者のうち、ノルウェー人の男性は「被爆者と話すのは初めてで彼の服に何でも質問できると書いてあるのを見て驚いたが、私たちにその時間を割いてくれることをありがたく思う。彼の話はとても刺激的で核兵器廃絶などの問題に取り組むうえでとても力になる」と話していました。
核兵器禁止条約の初めての締約国会議は今月21日からウィーンで開かれます。
しかし、日本政府は締約国会議への同国のオブザーバー参加を求める声が被爆者や広島・長崎両市、参加国などから上がっていたものの、政府はこうした声に応えず、核禁条約交渉会議への不参加に続いて、再び被爆者や「核兵器のない世界」を目指す各国・市民らを失望させました。
また、ICAN核兵器廃絶国際キャンペーンのベアトリス・フィン事務局長も、核軍縮を巡り対立する核保有国と非保有国をつなぐ「橋渡し役の資格はない」と批判しました。