8月 23, 2023 20:53 Asia/Tokyo
  • イスラム諸国での米映画『バービー』の上映禁止
    イスラム諸国での米映画『バービー』の上映禁止

バービー人形は、60年以上前にアメリカで発売開始されてより売れ続けている人気商品です。この人形が世界各地の少女たちの間で大人気を集めたことから、これまでにもバービーを題材とした映画やアニメが数多く制作されてきました。しかしその一方で、この人形が子供たちの生活様式に成人後まで非道徳的な影響を与えていることから、心理学者たちは長年にわたって、バービーというキャラクターを批判の対象としてきました。

映画『バービー』は、北アフリカ・アルジェリアで上映か始まったものの、「同性愛や道徳の逸脱をひろめるもので、我が国の宗教的・文化的価値観に反する」ことを理由に中止されました。

また、クウェートでも既に『バービー』の上映が禁止されているほか、サウジアラビアアラブ首長国連邦バーレーンでは、一部が検閲されたうえで上映されています。

サウジアラビアは当初、『バービー』の上映は不可能だと発表したものの、最終的に一部のシーンを削って上映しましたが、様々な反応に直面することになりました。一例として、サウジの反政府ジャーナリスト、トゥルキ・アル・シャルフーブ(Turki Al Shalhoub)氏はこの映画について、「映画『バービー』の中には、女性の商品化、家族の破壊、トランスジェンダーの登場人物、極端なフェミニズム、同性愛といった要素が存在する」と述べています。

 

レバノンでは、文化大臣が「映画『『バービー』は、同性愛の拡大や家族というベースの重要性低下を助長し、信仰や倫理的価値観の対極にある。また、反道徳的行為や性転換を奨励し、さらに家父長制を否定し母親の役割も揶揄していることから、レバノンの倫理的・宗教的価値観に反している」と強調しています。

クウェートでも、情報省報道官が映画『バービー』について、「クウェートの社会や公序良俗と相いれない思想や考え」を広めるものだと指摘しました。

 

これ以前には、パキスタン・パンジャーブ地方でも『バービー』が「不適切な内容」であることを理由に上映が停止されています。

さらに注目すべき点は、映画『バービー』の上映禁止はイスラム諸国だけにとどまらないことです。ベトナムでは、映画の中で中国の主張に基づく南シナ海領域を示す地図が映されたことから上映禁止になったほか、フィリピンでもこの地図が問題になり、該当シーンを削除した上でようやく上映されることになりました。

 

グレタ・ガーウィグ監督の映画『バービー』は、2023年7月にアメリカで封切られたファンタジーコメディで、映画『オッペンハイマー』との同時公開となったことで、SNSユーザーの注目を集めました。

この映画は、アメリカの玩具メーカー・マテル社が販売する着せ替え人形、バービーが主人公となっていますが、映画の中には個人主義的なフェミニズム以外の哲学は存在していません。この点は、英紙デイリー・メールの女性記者も映画での男性の描かれ方を評して、「これは非常に反男性的な映画だ。男性の登場人物は皆、愚か者、偏見に満ちた者、哀れで悲しい敗者のいずれかである。『バービー』は、明らかに侮蔑的・性差別的であり、女性の権利を守るという名目でわざとらしく、女性による搾取や利用を許容させようとしている」としたことからも明らかです。

 

これまでの映画に出てきたバービーのキャラクターは、映画が男性向けのものだった時代に生みだされました。当時、映画館に行くのは主に男性であり、女性は自宅のテレビで連続ドラマを観るものとされ、映画の各シーンには色とりどりの半裸の女性が頻繁に登場していました。このような背景のもとにバービーは、男性にとっては手に入れたい理想、そして女性にとっては自身が近づきたい理想として、カルチャー市場に参入したのです。

 

バービーは1つの大衆文化のうちの人形バージョンであり、トレンドの創始者ではありませんでした。この人形は、映画ではマリリン・モンロー、アニメーションでは白雪姫、シンデレラ、オーロラ姫、アリエル、ベル、ジャスミン、ラプンツェルといったディズニー作品のプリンセスによって象徴される、大規模かつ恒久的なフェスティバルの一部でした。ほっそりした体と大きくカールした金色の髪、純粋な素朴さと人形のような美しさを備えた女性は、男性の最高の資産の一つと考えられていました。これらの愛らしいブロンドは、いわゆるアメリカの生活様式を推進しました。そうした女性は受動的で美しく、従順で身なりが良く、無邪気で、非政治的かつ非社会的で、一言で言えば、イデオロギー、自分軸的な意見、行動が欠如しています。

 

その当初から、そしてこのキャラクターの多大な宣伝に注目し、多くの人が「バービーの存在や、このキャラクターが女性らしさの象徴や基準となることは、女性に対する根本的な侮辱である」と考え、抗議しました。また、心理学者はバービー人形が子供たちに与える危険な影響を指摘し、メディア関係者はバービー人形を反文化的な要素とみなしたのです。

 

しかし今、私たちは違う時代を迎えており、バービーは新しい政策の推進者としての自らの役割を発表し、新しい時代への突入を発表しようとしています。そこへ現在、バービーが出現し、同性愛、蔑視、家族排斥、フェミニズムなどを象徴する存在となっているのです。

『バービー』は、一部の少女たちが赤ちゃん人形を使って母親ごっこをする場面で始まり、その次に「太古の昔から、原始人の少女が出現した当初から、人形は存在していました。しかし、人形は常『赤ちゃん』であり、それらの人形で遊ぶ女の子は母親ごっこを楽しむでしょうが、それは一定期間面白く感じるだけです」と説明が続きます。

 

そして映画は、この人形を見た少女たちが、自分の持っている人形をドアや壁にぶつけるシーンへと移ります。

2023年の『バービー』は、母親であることを「一種の時代遅れ」「女性の進歩にとっての障害」と表現しています。この映画のナレーターも、「母親であることは楽しそうに見えるかもしれないが、楽しいのは一時的なものである」と述べています。

 

映画が進むにつれて、紹介されたパートナーであるケンに対するバービーの果てしなく冷たい態度がより明確に見えてきます。それはバービーがケンを好きではないというだけではなく、彼女がそもそもどの男性をも好きではないということです。この映画は、女性たちを母や妻であること、そして相手としての男性がいるあらゆる関係から遠ざける軌道上を常に進んでいます。実際、バービー人形のスポンサーと制作者は、女性がそのようなものへの好みを恥じ、彼女たちを同性の存在の方へ掻き立てようとしているのです。

 

しかし、この問題はこの映画に限ったものではありません。今日米ハリウッド映画は、同性愛の過剰な宣伝と、この現象が社会で通常の出来事にしようという根底からの変革に直面しています。これはまさに、家族制度を辱め、弱体化させるために始まった動きに他なりません。歴史を振り返ると、ほとんどの時代に同性愛が議論の的になり、こうした逸脱に関与してきたのは社会のごく少数の人々だったことが分かります。しかし、西洋文化の国際化という舞台を注意深く見渡してみると、私たちは「同性愛」に関するこの運動が過剰に宣伝されているのを目の当たりにしています。

 

たとえば、世界最大のエンターテイメント企業の 1 つであるウォルト ディズニー社は、自社の製品における LGBTQIA のキャラクターの大幅な増量に取り組んでいることを明らかにしています。ディズニー社の総合エンターテインメントコンテンツディレクターであるキャリー・バーク氏は、トランスセクシュアルの子供(性転換)とパンセクシュアルの子供(相手の性別に関係なく性的コミュニケーションに興味がある!)を持つ母親として、より多くのLGBTQIAのキャラクターを持つことを支持するとし、ディズニーキャラクターの少なくとも 50% がこれらの性的アイデンティティであることを望んでいます。

 

ディズニー社は数年前からアニメーションで同性カップルを描いており、その代表的な例は『アナと雪の女王2』『トイ・ストーリー4』です。しかし、より凶悪で残忍な形の性的逸脱の一部が一般化プロジェクトの対象となり、激化しているという兆候が見られます。

過去2~30年の間に、テレビ番組は同性愛者同士の関係を一般化させるのに一役買い、またSNSも同性愛者の団体や個人のための基盤・拠り所となり、映画も徐々にこの潮流に加わりました。これらのメディアは、こうした人々の権利を共感を込めて実現させるべく、さまざまな分野で多くの作品を制作しようとしています。

 

人々の生来の性別を正式に認めないことは、一部の西側諸国で公式かつ法的に導入されている新しいアプローチであり、その結果、ハリウッドはこの問題をより一般的に普及させるべく長年にわたってアニメーション作品や映画の制作に取り組んできたことに留意する必要があります。映画とは別に、西側諸国の教育制度では、子供の性別に対する疑問が常態化しつつあります。しかし、映画はこのプロセスのであると考えられており、『バービー』のような作品の製作と上映は、多くの倫理的逸脱を日常茶飯事化し、家族制度の破壊や弱体化を狙う道をまっしぐらに進んでいるのです。

 


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