視点;ディーンヤーリヤーン解説員
西アジアにおける米の矛盾した政策
パレスチナ・ガザ地区に対するシオニスト政権イスラエルの戦争が続く中、ブリンケン米国務長官がここ数カ月で5回目となるイスラエル占領地テルアビブの訪問を行いました。
ブリンケン長官は「私の訪問は、ガザ地区での新たな停戦の実現および、イスラエルとパレスチナ・イスラム抵抗運動ハマスの捕虜交換協定の履行に向けた取り組みによるものである」と主張しています。
ブリンケン氏は最近、サウジアラビア、カタール、エジプトを訪問するとともに、これらの国の当局者らと会談し、ガザ戦争について協議してきました。
英ロンドンを拠点とするアラビア語新聞、アルアラビー・アルジャディード紙はこれについて、「ハマスが拘束している残りの捕虜の解放と、ガザ民間人向け人道支援物資の送付を可能にする人道的停戦合意を目指して、交渉が続いている」と報じています。
ブリンケン氏は、仏パリ会議で提示された提案の実現を目指すものと思われ、その提案の内容は、パレスチナ人捕虜の釈放と引き換えでの6週間の戦闘停止とイスラエル人捕虜の釈放を盛り込んだ停戦を土台にしていると見られています。
アメリカ当局は実際、ガザの危機的状況の終結を迫る世論の圧力が強まっていることから、表面的にでも、イスラエルの犯罪停止や戦争の一時停止について話すという態度をとっています。
一方、エジプトの新組織アル・アフラム研究所のウマル・ハーシェム・ラビーウ氏は「イスラエルは戦争開始時に約束した成果が出せていないことを懸念している一方で、国際社会の怒り、そして内輪もめによる自政権内閣の崩壊を危惧している」との見解を示しています。
これまでに出た複数の報道からは、ハマス当局がこの新たな停戦案をめぐり、ガザ住民の帰還や避難民向け措置などの条件を提示したことが分かっています。
パレスチナ当局が念頭に置いている主要事項には、ガザ再建や分離壁の撤去、難民の帰還などが挙げられ、停戦確立もその一つに入っているのは確かです。しかし、停戦はそれだけで十分ということはなく、後にはイスラエルが行った大規模な破壊で廃墟となった各地の再建という問題が続きます。
ブリンケン長官はどうやら、地域の緊張緩和を迫る国内外の圧力を受けて、イスラエル政権とガザの間での一時的な停戦確立を画策しているようです。しかしイスラエル政権当局は、こうした小さな事柄にさえも同調しないばかりか実のところ相変わらず戦争継続を主張しており、アメリカの要求がネタニヤフ・イスラエル首相の姿勢を変えさせているようには見えません。
したがって、昨年10月7日のパレスチナによる対シオニスト作戦「アクサーの嵐」以来5回目となる米国務長官の西アジア地域訪問は、失敗はしないまでもそれほど大きな成果は得られないと予想されます。