6月 03, 2024 18:01 Asia/Tokyo
  • 米紙コラムニストが、非現実的論理でイランに対するイスラエルの優位を主張
    米紙コラムニストが、非現実的論理でイランに対するイスラエルの優位を主張

コラムニストのブレット・スティーブンス氏は、米紙ニューヨーク・タイムズに寄せた「イスラエルとイラン:どちらがよりトラブルを抱えているか?(Who’s in More Trouble: Israel or Iran)」と題する文章において、非現実的かつ的外れで説得力のないレトリックを展開しました。ここでは、同氏のこのコラムにおける主張の一部を見ていきます。

スティーブンス氏は、コラムの冒頭でまず1948年と1979年というの2つの年を強調しました。1948年は西側の植民地主義によりパレスチナ人の土地にイスラエル政権が樹立された年であり、1979年はイランで西側寄りのパフラヴィー王朝が倒され、数千年にわたる君主制の歴史の末に共和制が敷かれた年です。

スティーブンス氏が記したように、地域においてこの2つが共存できないというのは事実です。ただし同氏は、共存できない理由の根本が、植民地主義の見本である政権とそのような主義を否定する共和制の国という部分にあることには触れていません。一方のイスラエ政権は、西洋からユダヤ教徒を移民させて作られたまがいものの政権であり、他方のイランは、イラン高原と同じだけの歴史を持ち元からその土地に根付いている国であるため、両者が折り合えないのは当然と言えるでしょう。

しかし、イスラエル政権が抱える問題は、そのまがいものという本質のみではありません。同政権のネタニヤフ首相は先日、国際刑事裁判所より戦争犯罪を行ったという理由で逮捕状を発行されています。

これに関してスティーブンス氏は、核兵器および強力な諜報機関を持つ政権の指導者を世界の諸国が逮捕することはないだろうとしています。

同氏のこの主張が脅しかどうかははっきりしません。しかし、パレスチナ・イスラム抵抗運動ハマス、レバノンおよびイエメンの抵抗組織、加えてイランは、いずれも自身が核兵器を保持しないながらイスラエル政権の軍事拠点への攻撃を行っており、ネタニヤフ首相を逮捕するだけの力を持っていると言えます。

スティーブンス氏は、戦争犯罪を理由としたネタニヤフ首相への逮捕状発行の目的を、同首相の合法性を無くして国際的に孤立させることにあると説明しています。

同氏はさらに、ネタニヤフ首相の名前がハマスのようなパレスチナ抵抗運動指導者と並べて挙げられていることは同首相およびイスラエル政権の戦争大臣の地位を低く見せているという、奇妙な主張による抗議を行っています。しかしこのような抗議は、「ヒトラーの名前をナチスに対抗したフランス軍と並べて挙げるのはなぜか、彼の地位はもっと高いものだ」と言っているも同然でしょう。

なぜなら、イスラエル政権軍はネタニヤフ首相の指示のもと、パレスチナの土地で3万5000人以上の人々を虐殺しているからです。

スティーブンス氏はコラムの続きで、イランの大統領および外務大臣が亡くなったヘリコプター墜落事故に触れ、この出来事により同国が弱体化したと主張しました。

同氏が故ライースィー大統領について、1979年のイラン革命直後に活動したテロリストやイラクの旧サッダーム政権軍に協力してイラン本土を攻撃した者たちに対し真剣に対処していたことを暗に非難し、国内で穏やかかつ献身的な人物として知られている同大統領を暴力を好む人物かのように主張しており、これは驚くべきことだと言えます。

スティーブンス氏はこのコラムでさらに、戦争を好むアメリカのプロパガンダを担う者としての顔を見せながら、イランが核兵器獲得を望んでいると主張した上、同国では現在権力闘争が起きているがハーメネイー師の後継には同師の息子が就くことになると、虚偽の情報を披露しました。これは全くの嘘であり、最高指導者の選出を担うイラン専門家会議の手順に照らし合わせても不可能なことです。核問題についても、イランの科学力は現核保有国のパキスタンと比べてもはるかに高く、現時点ではこのような兵器は同国の防衛計画に位置づけがないものの、本気で望めば容易に核兵器を獲得できることが示されています。

さらに、スティーブンス氏がイランに存在する共和制の強力な構造を見ていないことも、驚くべき点です。もし西アジア地域がこのような状況にある中で他の国が今回のように大統領と外務大臣を一度に亡くせば、間違いなく多数の暴動が起こるはずですが、イランは、共和制が持つ強力な精神によって、このような事態を緊張も発生させず容易に乗り越えられることを示しました。そして同国は周知の通り、すでに新たな大統領選挙を行う準備を整えています。

このようにスティーブンス氏の主張は、イランが今日問題を抱えており植民地主義政権イスラエルの状況の方がまだましであるかのように見せようとする企みの一部であると言えます。

イスラエル政権はもはや、合法性を世界的に失い、経済的・政治的にも安定を欠き、イランが訓練に協力した各抵抗勢力に対抗する力を持っていないのです。

 


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