イスラエル、ガザ侵攻拡大の代償:大使館員射殺から野党による批判まで
(last modified Sat, 24 May 2025 10:01:17 GMT )
May 24, 2025 19:01 Asia/Tokyo
  • ネタニヤフ政権の方針を批判するイスラエル民主党のヤイル・ゴラン党首
    ネタニヤフ政権の方針を批判するイスラエル民主党のヤイル・ゴラン党首

今月18日にイスラエルがガザ地上侵攻の拡大を発表して以降、これまでイスラエル支持の姿勢を続けてきた欧州各国から制裁行使をちらつかせる声まで出てくるようになりました。また、アメリカもトランプ大統領が西アジア歴訪の訪問先からイスラエルを外したことで、米・イスラエル関係にかげりが出てきているとも言われています。そんな中発生した在米イスラエル大使館員の射殺事件は、イスラエルが自らの被害者性を訴える機会として利用され、事態は混沌としてきています。

【ParsToday西アジア】首都ワシントンで現地時間21日夜、市内のユダヤ博物館近くで銃撃があり、イベントに出席していたイスラエル大使館職員2人が射殺されました。

警察は殺人容疑でエリアス・ロドリゲス容疑者(30)を逮捕しました。警察の発表によると、事件は午後9時過ぎに発生。ロドリゲス容疑者は博物館近くで待ち伏せ、イベントが終わって出てきた4人組に発砲しました。その後館内に入り、警察を呼ぶよう自ら警備員に依頼。駆け付けた警察に犯行を自供し、逮捕されたということです。

目撃者らの話によると、ロドリゲス容疑者は「フリー・パレスチナ」「ガザの人々のために」などといった文言を叫んでいたということです。

事件現場付近

事件を受けて、トランプ米大統領は自身のSNSに「反ユダヤ主義にもとづくものであることは明らかだ」とし、「アメリカにヘイトと過激主義の居場所はない」と非難しました。

また、イスラエルのネタニヤフ首相も声明を発表し、「我々は、反ユダヤ主義や反イスラエル扇動の恐ろしい代償を目撃している。血は血でしか償えない。我々は(反イスラエルの)息の根を止めるまで戦い続ける」としました。

ネタニヤフ首相はまた、各国にあるイスラエル大使館に安全対策を強化するよう指示しました。

事件現場を訪れたイェヒエル・ライター駐米イスラエル大使(左)とパム・ボンディ米司法長官(右)

さらに、イスラエルのサアル外相は「我々の代表は常に、特に現在のような状況では、このような危険に晒されている」とし、米当局と事件の原因究明などについて話し合ったと明かしました。

クリスティー・ノーム米国土安全保障長官は自身のXに「我々はこの凶悪な犯人を必ず処罰する」と記しました。

ロドリゲス容疑者は22日、殺人などの疑いで起訴されています。

 

こうした中、イスラエルでは事件をめぐり、政治的内紛が起きています。

エルサレム問題・遺産相のアミハイ・エリヤフ氏は、野党「民主党」のヤイル・ゴラン党首を名指しして「ゴラン氏の手は(殺害された大使館職員2人の)血で塗れている」と非難しました。

ゴラン氏は20日、ネタニヤフ政権の方針について「イスラエルに理性があれば、乳幼児を娯楽のために殺害したりはしない。イスラエルは今、かつて南アフリカがたどった国際的孤立の道を歩んでいる」と痛烈に批判しました。

また、ベングヴィル治安相も、ゴラン氏を念頭に「(大使館員射殺の)犯人は一部のイスラエル政治家から影響を受けている。我々の兵士たちを公然と非難する者たちだ」と述べました。

こうした非難に対してゴラン氏は「ネタニヤフ政権の政策が反ユダヤ主義やイスラエル嫌悪を世界中で強めてきた。その結果、世界中のあらゆるユダヤ人に危害が及ぶ可能性が高くなった」と反論しました。

イスラエルのオルメルト元首相

また、オルメルト元首相も現在のネタニヤフ内閣にいる極右派閣僚を批判し、「ベングヴィル治安相やスモトリッチ財務相のようなテロリストを阻止すべきだ。彼らのような侵略志向・傲慢さはイスラエルを悲劇に導くことになる」と述べました。

そして、「現在のような政策では、イスラエルやユダヤ人が世界で孤立するばかりか、完全に国際社会から断絶されることになりかねない」と警鐘を鳴らしました。

こうした内紛を受けて、イスラエルのヘルツォグ大統領は「イスラエルが様々な脅威にさらされている今、国内の政争はやめるようすべての関係者に望む」とする声明を出しました。

 


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