視点
対イラン制裁の効果の乏しさを認めた米財務長官
イエレン米財務長官が、イランに対するアメリカの各種制裁の効果が、自分たちの求めていたものよりはるかに乏しさかったことを認めました。
イエレン長官は今月23日、米議員らとの会議において、「制裁は果たして、イランの行動をアメリカが求めていたものに転換させたのか」ということについて、それがアメリカの期待していたものよりはるかに小さかったと述べました。
イエレン長官はまた、「アメリカは対イラン制裁を強化する方法を模索している」としたものの、制裁がイランの政策と行動に米国が望んでいたような変化をもたらしていないことを認めました。
イランは、これまで40年間以上に渡ってアメリカの一方的な制裁を受けてきています。
トランプ米前大統領がJCPOA包括的共同行動計画(通称:対イラン核合意)からアメリカを離脱させ、最大限の圧力政策を開始した後、トランプ前大統領の在任中に行使された対イラン制裁は、前例のない新しい側面を帯びました。トランプ氏は、イラン国民に対しこれ以上ない最も厳しい制裁を行使し、米国の不合理で違法な要求にイランが屈することを期待しました。もっとも、これは不首尾・失敗に終わっています。
クリス・マーフィー米民主党上院議員は様々なツイートやコメントにおいて、核合意離脱によって一層強力な対イラン合意に達する可能性がある、というトランプ氏の主張を誤りだとし、「核合意からの離脱は、過去50年間のアメリカの外交政策の中で最も愚鈍な決定だった」と断言しています。また、イランに対するトランプ氏の最大限の圧力行使や制裁からは何も得られておらず、アメリカの核合意離脱によりイランがさらに強くなったことを認めています。
しかし、バイデン現政権も、過去に失敗済みの同じ政策をこれまで続行しています。バイデン大統領は、過去のスローガンや謳い文句とは逆に、就任以来最大の圧力行使政策を続けており、さまざまな口実で折りあるごとに対イラン追加制裁を発表しています。ここで重要な点は、バイデン政権の当局者と多くのアメリカの政治家が、対イラン最大圧力キャンペーンの失敗を繰り返し認めていることです。
もう1つの問題は、「イラン国民に同情し、彼らを支持している」というアメリカ政府の主張が事実とは食い違っていることです。新型コロナウイルスの大流行、そしてこの致命的な感染症に対処するための医薬品や医療器材をイランが緊急に必要としていた時期でさえ、米国はイラン国民への支援提供を妨害してきました。実際に、これらの製品のイランへの提供を実際に禁止する二次的な制裁が行使されたことから、企業や銀行はイランとのやり取りができなくなりました。
同時に、米国は、国連を含む国際機関の対イラン制裁解除の要請に応じず、常にこれを拒否してきました。ここで重要な点は、米国の非人道的な対イラン制裁の主な犠牲者が、特に地中海貧血・サラセミアやEB表皮水疱症に苦しむ患者などの特殊なな疾病の患者であり、これはイラン国民に対するアメリカの敵意の強さを如実に物語っています。国連は、特にコロナ流行中に、米国がイランに対して一方的な制裁を課したことを繰り返し批判しており、禁輸対象者であるイラン国民が基本的必需品や医薬品・医療器材を容易に入手できるようにすべく、制裁の解除または縮小を求めています。
国連人権理事会の特別報告者であるアリーナ・ドゥハン氏は、「一方的な制裁は、国連の権威を弱め、国際協力や法の支配の分野における恐れや懸念を招くことになる」と語っています。
基本的に、アメリカのやり方はその人権主張とは逆に、広範で一方的な制裁行使とその継続を含む、あらゆる手段を駆使したイランへの圧力行使です。こうしたやり方を取ることはイランの屈服にはつながらず、かえって同国は反覇権主義的な立場を死守し、最大限の抵抗政策という枠組みの中でアメリカの支配・覇権への反対を強めています。イランは自国内の能力可能性を拠り所とし、以前では欧米に依存していた多くの分野や領域で自給自足の度合いを高め、制裁回避により、アメリカの制裁の悪影響を大幅に緩和できています。そして現在では、イエレン米財務長官もこのことを認めざるを得なくなっているのです。