パレスチナで続く「スタンフォード監獄実験」
(last modified Sun, 01 Jun 2025 09:17:00 GMT )
6月 01, 2025 18:17 Asia/Tokyo
  • パレスチナで続く「スタンフォード監獄実験」
    パレスチナで続く「スタンフォード監獄実験」

1970年代にスタンフォード大学で行われた悪名高い「監獄実験」。それが今もなお続けられている場所があります。パレスチナです。

【ParsToday国際】1971年、スタンフォード大学での実験において、学生たちは看守役と囚人役に分けられました。数日で、この実験は制御不能になりました。看守たちは囚人を侮辱し始め、囚人たちは服従あるいはリタイアしました。看守役には無制限の権力が与えられ、その結果は恐ろしいものでした。この心理学の実験は、組織的暴力を理解する糸口となりました。この実験の映画化作品を観ると、そのシミュレーションの結果がパレスチナの現実生活と酷似していることに気付かされます。

実験室では大学生が支配側の看守の役割を演じましたが、ガザやヨルダン川西岸では、その支配が日常的に行われており、その代償は実際の命です。

どちらの場合も、最初は秩序に見えたものが、より破壊的な何かを隠し持っています。構造は行動を形作ります。実験の看守たちは最初からサディストではありませんでした。彼らがそうなったのは、環境がその行動を促したからです。占領も同じです。暴力が常態化し、服従が平和の代わりに押し付けられる状況を生み出しています。

イスラエルによるパレスチナの占領体制は、水、電力、移動、さらには死の時間さえも管理しています。ガザの人々は封鎖された生活を強いられています。彼らの監獄は物理的、官僚的、そして心理的なものです。パレスチナ人は土地だけでなく尊厳も失っています。この構造は彼らを打ち砕くために設計されています。

同時に、情報の検閲がこの危機を複雑にしています。イスラエルは外国人記者のガザ入域を阻止し、世界はガザ市民自身の語りに頼らざるを得ません。この措置は、「どのような真実がこれらの障壁の背後に隠れているのか?」という疑問を呼び起こします。

この問いに答えうる声の一つが、ガザに住む28歳の詩人、作家、翻訳家のモハメド・アブ・レブダさんです。彼はこれまでに5回の戦争を生き延びたと語っています。彼はこう書いています。「私たちは普通の家族で、平和に生きることに慣れていました。愛に満ちた心で、小さな温かな家で。すべてを失いました。家も仕事も。何も残っていません。」

数カ月の不気味な沈黙の後、彼はある記者にワッツアップで痛ましいメッセージを送り、謝罪しながら助けを求めました。「数日前にメッセージを送りたかったのですが、ここはまったく安定していませんでした。今が最も困難な時期です。空腹のとき、安全は意味をなさないのです。機会はありますか? あなたが必要とするどんなプラットフォームでもよいのですが?」

これは悲劇の中から書く者の証言です。最も才能ある者たちが、生き残るために言葉より先に懇願しなければならないとき、封鎖と検閲によって強いられる沈黙は許されません。

 

スタンフォード実験の6日間、パレスチナの70年

スタンフォード実験が6日間で明らかにしたことは、70年以上にわたりパレスチナで起こっていることです。この比較は演出的な効果を狙ったものではなく、ある集団が無制限の支配を他の集団に及ぼすときに起きることです。スタンフォード実験は1週間足らずで中止されましたが、パレスチナの非情な占領は続いています。

 

共犯者としてのアメリカ

これに関して、アメリカは無実の傍観者ではありません。資金援助と政治的支援により、イスラエルの人道に対する犯罪の継続を助長しています。

歴代のアメリカ政府は、世界が目覚めてイスラエルの残虐行為に抗議する中でも、イスラエルへの武器供与を絶やしていません。

政治指導者たちが言葉のやり取りを議論している間に、ガザの子どもたちは瓦礫の下から引き出されています。これらはすべて、アメリカの税金で支えられるシステムの直接的な結果です。

 

パレスチナは比喩ではなく、試練

スタンフォード監獄実験は、発見だけでなく、その倫理的崩壊でも記憶されています。参加者は実際の苦痛を経験し、研究者は中立を失い、観察するはずの役割に溶け込んでしまいました。

しかし、パレスチナ人は「囚人」の役割を選んだわけではありません。彼らの制限は自発的な役割ではなく、生まれたときから課せられた状況です。彼らの家は比喩ではなく、悲しみは理論ではなく、抵抗は象徴でもありません。

それでも彼らは立ち続けています。抹消のために設計されたシステムの中で、パレスチナ人は見られ聞かれることを求めています。結婚し、子を育て、詩を詠み、奪われた土地と生活を取り戻すために闘い続けています。

 


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