トランプ大統領は中央アジアで何を追求しているのか?
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米国が、中央アジア諸国との関係拡大を目指しています。
(last modified 2025-11-04T06:02:53+00:00 )
11月 03, 2025 19:15 Asia/Tokyo
  • トランプ米大統領と中央アジア諸国
    トランプ米大統領と中央アジア諸国

米国が、中央アジア諸国との関係拡大を目指しています。

【ParsToday国際】米ワシントンで近く、ドナルド・トランプ米大統領と中央アジア5カ国の首脳との会談が行われる中、この地域では天然資源と戦略的地位をめぐる世界大国の競争が激化し、米国はロシアや中国の近隣地域における影響力の強化および、重要な鉱物の確保を狙っています。

中央アジア・米国の首脳会合は、今月6日にワシントンで開催されます。米国関係者の中央アジア諸国訪問を含めて、この首脳会合に向けた準備は、ドナルド・トランプ米大統領が地域諸国との関係強化に真剣に取り組んでいることを示しています。米国国務省は声明で「アメリカ政府関係者の訪問の目的は、米国と地域との関係強化にある」とし、「我が国は、中央アジアのパートナー諸国と引き続き連携し、貿易関係の拡大と関係強化に努めていく。我々は協力拡大および、『中央アジア5か国プラス1(C5+1)』プラットフォームへの参加10周年を祝うことを楽しみにしている」としました。

トランプ政権は、中央アジアにおける米国の地政学的影響力の強化および、中国とロシアの封じ込め、重要な鉱物資源へのアクセス確保を目指している模様です。この点において、この地域の指導者らとの今後の首脳会談は、この戦略的地域における自らの立場の強化を目指すという米国の努力を反映していると言えます。

中央アジアはカザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの5カ国で構成され、その地政学的位置と豊富な天然資源により、国際競争のカギを握る地域となっています。また中国、ロシア、アフガニスタンに隣接しているとともに、エネルギー、レアアース、輸送ルートの面で極めて重要な位置づけにあります。こうした中で、トランプ政権は政治的・経済的交流の拡大を通じて、この地域におけるアメリカの影響力強化に全力を挙げています。

中央アジアにおける米国の目的は以下のとおりです;

第1の目的;中国とロシアの影響力の封じ込め

中央アジアにおけるトランプ大統領の主要な目標の一つは、中国とロシアに対するこの地域の依存度を低減することです。中国が「一帯一路」構想と巨額投資を通じて経済的影響力を拡大する一方、ロシアはCSTO集団安全保障条約機構やEAEUユーラシア経済連合といった組織を通じて、政治的・安全保障上の自らの影響力を維持しています。トランプ大統領は、ワシントンで5プラス1首脳会議などの会合開催により、中央アジアのこれらの諸国に代替案を提示しようとしています。アメリカにとっては、ロシアと中国の地政学的な「裏庭」における自らの立場を強化することは極めて重要です。これらの諸国は所謂「中央回廊」に関与しており、中央アジアにおけるアメリカの存在力を高めることは、中国の「一帯一路」構想への圧力行使手段として活用される可能性があります。

第2の目的:重要鉱物資源へのアクセス

トランプ政権は、バッテリー、軍事装備、半導体などの先端技術の製造に使用される材料である希土類元素を特に重視しています。現在、これらの元素の供給網の大部分を支配しているのは中国です。トランプ大統領は、中央アジアの指導者をワシントンに招いて、同地域からのこれらの資源の直接供給ルートを確保し、中国に対する自国の依存を減らそうとしています。スコット・ベッセント米国財務長官は中国を、多くの分野で「信頼できないパートナー」とみなし、「米国は希土類元素などの重要資源に対する中国の覇権への依存から脱却する必要がある」と述べています。トランプ大統領は一貿易商として、「中央アジアには中国に代わる巨大な資源基盤があり、米国のIT大手は希土類金属の供給を必要としている」と考えています。

第3の目的:安全保障と軍事協力の強化

トランプ氏は地域、特にアフガニスタン国境におけるテロの脅威を踏まえ、中央アジア諸国との安全保障協力の強化を目指しています。この協力には、治安部隊の訓練、情報交換、さらには臨時の軍事基地の設置が含まれます。これらの措置の目的は、過激派グループの影響力への対抗および、中国とロシアの国境付近での軍事駐留の確立です。トランプ大統領がアフガン・バグラム基地への米軍の復帰を目指していることを考えると、アフガンと国境を接するタジキスタンおよびトルクメニスタンとの緊密な関係構築は極めて重要となる可能性があります。

第4の目的:投資誘致と軍事力以外の影響力

トランプ大統領は、投資、技術移転、文化協力を通じて、この地域におけるソフトな(軍事力によらない)アメリカの影響力の拡大にも努めています。これらの施策には、奨学金の提供、教育プロジェクトの支援、そしてアメリカ企業の地域市場への参入促進などが含まれます。これらの政策は、外交関係の多様化を目指す一部の中央アジア諸国から比較的歓迎されています。

一連の課題と中央アジア諸国の反応

トランプ大統領の努力の一方で、中央アジア諸国はこうした交流に慎重な姿勢を崩していません。彼らは世界の大国間の競争の犠牲者にはなりたがらず、アジア・欧州間のバランスの取れた政策の追求を望んでいます。また、一部のアナリストは、アメリカの介入、特に西側とロシアの二者択一を迫られた場合、地域のさらなる情勢不安を招きかねないと考えています。

結論

以上のことを踏まえ、トランプ大統領は中央アジアにおいて、中国とロシアに対抗するための米国のより広範な政策に合致した、地政学的、経済的、そして安全保障上の一連の目標を追求していると言えます。しかし、これらの政策の成功は、地域諸国がアメリカに寄せる信頼の度合い、米国が魅力的な選択肢を提示できるか否か、そして中国とロシアといったライバル国との競争にいかに対処できるかにかかっています。中央アジア諸国にとって、米国との緊密な関係は収益を上げ、外交政策を多様化する機会となるものの、中央アジア5カ国は米国との関係にとどまらず、ロシアやトルコ、中国、EU欧州連合などの勢力との関係を今後も引き続き拡大させていくと考えられます。

 

 


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