朝鮮半島における安全保障上の対立;米国からの戦争指揮権奪還を目指す韓国
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ピート・ヘグセス米国防長官(左)と安圭伯・韓国国防相
米軍が韓国に駐留するようになってから70年以上が経過した現在、韓国はアメリカから「戦時作戦統制司令部」、すなわち作戦統制権の奪回をより真剣に模索しています。もしこれが実現した場合、韓国の防衛の独立性に新たな1ページが刻まれることとなり、長年の同盟国である米韓間の安全保障関係が再定義されると見られています。
アジア歴訪で既に日本、マレーシア、ベトナムを訪問しているピート・ヘグセス米国防長官は、3日月曜に韓国・ソウル入りしました。2日間にわたる今回の訪韓は、韓国がアメリカからの戦時作戦指揮権の移管の迅速化を目指している中でのことです。韓国の安圭伯(アン・ギュベク)国防相とヘグセス米国防長官は、4日火曜日にソウルでSCM第57回韓米安全保障協議会に出席することになっています。
【ParsToday国際】今回の会合の議題には、朝鮮半島における米軍の戦略的柔軟性や戦時作戦統制権(OPCON)の奪還計画など、両国同盟の主要課題の検討が含まれています。韓国ヨンハプ通信によりますと、韓国政府は、2030年までの李在明大統領の5年間の任期中に、完全な指揮権移譲のプロセスを完了させると表明しています。
歴史的依存から軍事的独立への努力まで
朝鮮戦争(1950~1953年)後、米国と韓国は相互防衛条約を締結し、戦時における軍事作戦の指揮権は在韓米軍に移譲されました。当時、韓国軍の能力は限られており、また北朝鮮の強大な権力により、韓国の軍事的独立は事実上不可能でした。現在もJFC統合軍司令部は米軍将軍が指揮を執っており、この体制は韓国の安全保障における米国への依存の象徴と見られています。しかし、李在明現政権は「韓国は戦時において自国の軍事力を完全に指揮できる能力水準に到達した」と宣言しています。
韓国、防衛協力の見直しを要求
米国防長官のソウル訪問に伴い、北朝鮮政策の調整、包括的抑止力、海軍の近代化、先進軍事技術における協力など、様々な議題が議題に上がると予想されています。関係筋によれば、韓国は脅威に対しより積極的な役割を果たすため、米国との安全保障同盟を維持することで、独立した指揮統制体制を強化しようとしています。
米韓防衛当局間の会談は、ここ数ヶ月において朝鮮半島での軍事的緊張が高まる中での開催となりました。北朝鮮は核・ミサイル開発を進める一方で、ロシアとの軍事協力を深め続けており、先月には新型大陸間弾道ミサイル「火星20」を公開しました。このことは、韓米の安全保障上の懸念を引き起こしています。
米中の競争と同時期に重なる韓国の政策
ヘグセス米国防長官の韓国訪問は、アジア太平洋地域における軍事駐留の拡大、及び日本やベトナムを含む主要な地域パートナーとの同盟強化を目指すという米国の新たな戦略に沿ったものです。ヘグセス国防長官は今月2日にマレーシアとベトナムでアジア諸国の政府関係者と会談した後、東南アジア諸国との軍事協力の拡大を訴えました。もっとも、中国政府はこれを、中国の影響力抑制策の一環と見ています。
この点に関して、李在明(イジェミョン)韓国大統領はAPECアジア太平洋経済協力首脳会議の場でドナルド・トランプ米大統領に対し、韓国の通常型潜水艦への核燃料提供に同意するよう求めました。この提案は、米軍の作戦負担を軽減し、韓国の防衛能力を高めることを目的としています。
戦時作戦司令部の将来:同盟国間の信頼の試金石
専門家らは、戦時作戦司令部の再開は韓国の防衛能力の試金石となるだけでなく、アジアにおける米国のパートナーに対する信頼の尺度にもなると指摘しています。司令部の移管には、指揮系統、通信システム、共同訓練、そして韓国の情報能力の評価について、慎重な調整が必要になると考えられています。
一部の米国当局者は、北朝鮮に対する抑止力の弱体化を避けるため、共同管理を維持するべきだと主張していますが、韓国政府はこのプロセスを戦略的かつ国民的な独立に向けた必要な一歩と捉えています。またアナリストらは「今後の協議で戦作権移管の明確なロードマップを描くことができれば、米韓軍事関係は対等かつ協力的な関与という新たな段階に入るだろう」と指摘しています。
総括すると、米国防長官のソウル訪問と戦時作戦指揮権移譲交渉は、米韓両国の安全保障関係における重大な転換点となります。70年にわたる防衛面での依存を経て、韓国は今、米国との長年にわたる同盟関係を維持しながら、より自立した軍事アイデンティティを確立しようとしており、この動きは朝鮮半島の安全保障のみならず、東アジアの勢力均衡をも変化させる可能性があります。

