4200万人の米国民が飢餓に苦しむ中でマスク氏は1兆ドルの報奨獲得;正義か矛盾か?
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数百万人もの米国民が日々の食糧の購買に苦労する中、テスラの株主はイーロン・マスク氏に対して前例のない1兆ドルの報酬供与を承認しました。一個人が伝説に残る巨額の富を得ることに対する数百万人もの人々に広がる貧困は、米国の所得格差の現実を如実に物語っています。
(last modified 2025-11-08T12:10:51+00:00 )
11月 08, 2025 19:41 Asia/Tokyo
  • 米国民4200万人が飢餓にあえぐ中でマスク氏は1兆ドルの報奨獲得;正義か矛盾か?
    米国民4200万人が飢餓にあえぐ中でマスク氏は1兆ドルの報奨獲得;正義か矛盾か?

数百万人もの米国民が日々の食糧の購買に苦労する中、テスラの株主はイーロン・マスク氏に対して前例のない1兆ドルの報酬供与を承認しました。一個人が伝説に残る巨額の富を得ることに対する数百万人もの人々に広がる貧困は、米国の所得格差の現実を如実に物語っています。

【ParsToday国際】アメリカは、2025年11月に経済格差の最も顕著な象徴の一つを目の当たりにすることになります。米電気自動車(EV)大手テスラの株主は、同社CEOのイーロン・マスク氏への1兆ドル規模の巨額報酬パッケージを75%以上の賛成率で承認しました。このパッケージは、テスラの時価総額を8.5兆ドルに引き上げ、数百万台のヒューマノイドロボットと自動運転サブスクリプションの販売という野心的な目標に基づいて設計されており、現在約4730億ドルと推定される資産を持つマスク氏を世界初の兆長者の座に押し上げることになります。マスク氏には固定給はなく、これらの業績目標を達成した場合にのみ、1兆ドル相当の株式を段階的に受け取り、持ち株比率を13%から25%に引き上げる仕組みになっています。

この決定は、テスラの取締役会によってマスク氏という「エリート」を保存する手段として正当化されましたが、こうした中で、同じアメリカでは数百万人もの市民が飢餓危機と闘っているのが現実です。

最近の報告によれば、アメリカでは推定4700万人が毎日十分な食料を入手できず、さらにそのうち4200万人以上が食料不安に陥っている世帯の人々とされています。

この著しい落差は単なるニュースの出来事ではなく、世界最大の経済大国における所得格差の拡大をも象徴しています。

アメリカの所得格差は数十年にわたり構造的な課題として認識されてきましたが、近年急速に拡大しています。所得格差の標準的な指標であるジニ係数は、2025年には米国で0.42に達すると予想されており、この数値は富裕層への過度な集中を示すものです。ちなみに、この指数は0(完全な平等)から1(絶対的な不平等)までの範囲で示され、米国では先進国の平均(約0.30)よりも高く、1980年代の0.38から上昇しています。

米国国勢調査局と世界銀行のデータによれば、2023年におけるアメリカのジニ係数は約0.41で、今後も上昇傾向が続くと予測されています。

この上昇の根本原因には新自由主義的な経済政策、すなわち富裕層への減税、労働組合の弱体化、そして利益を公平な分配ではなくエリート層のポケットに入れるという、テクノロジー投資への集中が挙げられます。

連邦最低賃金は2009年以降横ばいですが、テクノロジー株の急騰に伴い、マスク氏のような億万長者の資産は倍増しています。

今、マスク氏に対するテスラの報酬パッケージにより、その格差が拡大しています。このパッケージを支持する人々は、マスク氏は「目標達成なしには何も得られず」、彼の成功は株主の利益になると主張しています。しかし、労働運動家を含む批判派はこれを「合法的な窃盗」だとしています。マスク氏は最初の目標をいくつか達成しただけでも、数千億ドルもの利益を手にすることになります。一方、年収平均2万ドルから3万ドルのテスラ従業員は、3~4%のインフレと食料価格の高騰に苦しんでいるのが現状です。

連邦政府の食糧支援プログラムの年間予算を上回るこの報奨金は、オプティマスロボット100万台生産といった運用目標に基づいて設定されていますが、そのリスクは社会が負うことになります。テスラの失敗は数千人の雇用を奪う可能性があり、成功は富の集中をさらに助長することになります。

マスク氏のこの贅沢とは対照的に、同じアメリカでは4200万人の市民が飢餓の危機に直面しています。この数字には1400万人の子どもが含まれており、過去10年間で最悪の数字となっています。この深刻な問題の主な要因は、2020年以降20%に達する食料インフレ、サービス部門における隠れた失業、そしてSNAP補充的栄養支援などのプログラムへの予算削減です。

アーカンソー州などの州では食料不安率は18.9%にも達し、黒人やラテン系のコミュニティでは60%を超えています。こうした飢餓は健康を脅かすとともに、貧困の悪循環を永続させることになります。

マスク氏が自らのロボットで「世界の貧困を終わらせる」と語る一方で、数百万人ものアメリカ市民がフードスタンプ(低所得者向けに行われている食料費補助対策)に頼っており、しかもトランプ現政権は食糧援助の予算を削減しています。この対比は、アメリカの経済モデルについて深い教訓を与えるものです。ジニ係数0.42は、不平等の度合いを示すとともに、犯罪の増加、人種間の緊張、政情不安といった社会的な影響も浮き彫りにしています。

株主の承認を得たマスク氏のボーナスは、社会正義よりも「株主価値」を優先する姿勢を反映しているといえます。しかし、このモデルは果たして持続可能なのでしょうか?過去の歴史は、極端な不平等が革命や改革運動につながることを物語っています。例えば、2011年の「ウォール街を占拠しよう」運動は「1%」の富裕層に反対する運動でしたが、今日では富裕税(バーニー・サンダース上院議員が提案)などの政策への支持が高まる中で、新たな波が生まれつつあります。

結局のところ、マスク氏への1兆ドルの報酬と4200万人の飢餓という状況下で拡大するアメリカの所得格差は、変化を求める呼びかけだと言えます。政治家は税制の平等化、賃金の引き上げ、そして教育と医療への投資に注力すべきであり、そうした改革がなければ、アメリカはさらに矛盾に満ちた国と化すと思われます。

 

 


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