クリントン氏のメール問題を巡る権力闘争
アメリカ大統領選挙の民主党候補、クリントン氏の私用メール問題は、同国での権力闘争を引き起こしています。
アボルファトフ解説員
アメリカの民主党の幹部は、FBI連邦捜査局のコミー長官を選挙結果に影響を及ぼそうとしていると非難しています。こうした中、共和党は、クリントン氏は政府の電子メール使用における安全規約を踏みにじったことから裁判にかけられ、収監されるべきだとしています。
こうした表明は、共和党と民主党の対立が、政党のレベルを超えて、権力闘争の側面を帯びていることを示しています。これ以前のアメリカの大統領選挙の多くでは、候補者は互いの政策や政治家としての経歴を攻撃していましたが、今年の選挙はアメリカの未来についての議論が提示されています。トランプ氏は、選挙をアメリカを救出する最後の機会だとしています。クリントン氏も、この選挙はアメリカの民主主義の救出に向けた道だと強調しています。このような立場の強調は稀なものであり、保守派とリベラル派の二大政党は、選挙で勝利するためにあらゆる手段に訴えています。
クリントン勢は、トランプ氏を女性関係や道徳の点から非難しています。彼らはトランプ氏が11年前に記者との私的な会話の中で、女性に関する卑猥な発言を行っているビデオを公開しました。このビデオは、選挙戦の終盤に影響を及ぼす「オクトーバーサプライズ」として、大統領選挙の勝利のチャンスをトランプ氏から奪いました。
ところが、ビデオの公開は、今年の選挙の最後のオクトーバーサプライズではありませんでした。FBIがクリントン氏の私用メール問題に関して再調査を行うと発表したのです。
この数十年で最も緊迫したアメリカ大統領選挙の実施まであと10日となり、アメリカの主要な治安機関のトップが民主党を治安法の違反で非難しました。この問題はFBIが司法省を通じ、政府系の機関の傘下にあると見られている点で、また現在の政府も民主党の候補者を決然と支持しているという点で重要性を有しています。
FBIの関係者とクリントン氏の反対者は、ここ数日、FBI長官の決定を、FBIの責務の枠内でのものであり、非政治的な行為であるように広めようとしています。
一部ではこの権力闘争は大統領選挙の実施により収まることはなく、その結果は勝者を超えて、この国の政治や社会の深い対立の源になると見られています。