視点;米石油産業の復活を約束した米大統領
(last modified Wed, 22 Apr 2020 10:10:33 GMT )
4月 22, 2020 19:10 Asia/Tokyo
  • アメリカの石油危機
    アメリカの石油危機

原油価格の前代未聞の暴落によるアメリカの石油危機が、新たな段階に突入しています。現在、現状打開を訴える声がより大きくなる中で、トランプ米政権にはこの事態に本格的な措置を講じるよう要求が高まっています。

トランプ大統領はツイッター上で、米国の石油・天然ガス産業の復興を約束しています。

米国では20日月曜、原油価格が急落し、マイナス38ドルという前例のない安値を記録しました。この原因は、原油の貯蔵庫が今や飽和状態となったことにあります。これは即ち、石油の生産国側にもはや原油の貯蔵スペースがなく、その備蓄石油の放出のために費用の支払いを迫られていることを意味します。

米国での原油価格の急落がたとえ貯蔵スペースが満杯になったことが一因であるにせよ、特にロシアとサウジアラビアによる原油価格戦争をはじめ、この数ヶ月間の情勢変化は、新型コロナウイルス蔓延を原因とした世界的な原油需要の大幅減少とともに、この問題に大きく関与しています。

トランプ大統領

トランプ大統領は、ロシアとサウジ間の石油の価格戦争が最高潮に達したことを受け、この問題が米シェールオイルの生産企業に悪影響を及ぼすことを理由に、この2カ国による石油戦争の終結を求めました。そして最終的には、OPEC石油輸出国機構と非加盟の主要産油国=OPECプラスによる2回に渡る緊急会合の開催後、産油量全体をおよそ1000万バレル削減するという合意が成立しました。

しかし、サウジとロシアによるこうした石油価格戦争は、石油市場に悪影響を及ぼしています。

ジェームズ・インホフ米上院軍事委員長は、同国商務長官に宛てた書簡において、原油の値下がりにサウジとロシアが大きく関係していることを強調するとともに、「ロシアとサウジは互いに協力して、市場備蓄を飽和状態にして米国の石油・天然ガス産業を崩壊に追い込もうとしている」と語りました

トランプ大統領は、今でこそサウジとロシアによる石油戦争の収束を求める態度を見せたものの、それ以前は原油価格の低下に伴い米国内市場でのガソリン価格の低下につながったことから、この両者の対決を事実上歓迎していました。トランプ大統領から見れば、この状況は今年の米大統領選でトランプ氏の支持率アップにつながるはずでした。ところが、原油価格の暴落が米石油企業に甚大な損害をもたらしたことから、これらの企業はロビー活動を展開して、これまで以上にトランプ政権に現状打開を迫るようになってきたのです。

シェールオイル企業の状態の悪化、そしてこれらの企業の破綻・倒産のプロセスの開始とともに、米国の産油企業はトランプ大統領に宛てた書簡において、原油価格暴落の要因に関するはぐらかしにスポットを当て、この問題には中国が関与していると申し立ててトランプ大統領に警告しました。これらの産油企業はトランプ大統領に対し、「中国政府は現実に、2年間という期間に米国から524億ドル相当のエネルギー製品を購入する約束を順守していない。今は中国の行動に対し断固とした態度に出る必要がある」と表明しています。

この書簡ではさらに、「中国政府は、サウジやロシアからの輸入増に踏み切っている。だが、その一方で米国との信頼できる貿易関係維持のために必要な措置を講じるべきだ」としています。

これに関して、米国生産者協会のベネ・バルドバリ会長は、「今年に入ってから最初の数ヶ月間で、中国は米国からわずかの量しか原油を輸入していない。だが、同時期にサウジやロシアからの輸入は大幅に増やしている」と指摘しました。

現在、トランプ政権に対しては、シェールオイル企業への資金援助が期待されると同時に、主要な石油生産国に減産を促し、あわせて中国に米国産石油の購入量を増やすよう強く迫ることが求められています。

 

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