視点:2020米大統領選第1回討論会ー敗者は米国民(動画)
2020年アメリカ大統領選のテレビ討論という形を借りたトランプ共和党現職大統領とバイデン民主党候補による第1回の直接対決は、90分間の口論、喧嘩、侮辱、憤慨、無計画性という結果に終わりました。
候補者らの行状の悪さの点で米史上例がないと酷評されたこの討論で、トランプ大統領とバイデン候補がそれぞれ辛らつな口調で相手に対する舌戦を繰り広げ、互いに相手を嘘つき、不道徳、人種主義者、対外依存等々、非難を浴びせました。本来この討論会は、候補者らのこれまでの経歴や、新型コロナウイルスや失業問題、安全保障、エネルギー、環境問題対策など、自らの方策・方針に絞られるはずでした。しかし、結果的にこの討論会は何百万人もの視聴者を前にして、前代未聞の政争の場と化しました。
2人の候補者は相手の話をさえぎり、討論会の司会者クリス・ウォレス氏が落ち着いて会を進行させることすら許しませんでした。トランプ氏は何度も、バイデン候補の息子をロシアからの収賄で非難し、バイデン候補もこれに対抗して、トランプ氏をロシアの操り人形だとしました。バイデン氏は何度も、辛らつな口調でトランプ氏を黙らせたのに対し、トランプ氏はバイデン氏を鈍感だとして侮辱しました。2人の候補者のこうした対応から、CNNは「第1回討論会、大混乱の極み」と報じ、米時事ニュース雑誌ザ・アトランティックも「民主党にとって忌まわしい夜」との見出しをつけています。
ABCニュースの著名なジャーナリスト、ジョージ・ステファノプロス氏はツイッターで、「今回の討論会は、脱線しつつある列車のゴミ箱の汚物だった」と評しました。
もっとも、トランプ氏とバイデン氏の口論は実際には、アメリカの政治空間の危機的状態の全容を映し出していると言えます。アメリカは今や、政治対立により分断され、怒りの中で炎上しているようなものです。今回の討論会は、アメリカの政治家が互いに相手を認めることができず、権力奪取や維持のためにはあらゆる疑惑や侮辱、さらには相手の家族を俎上に載せることさえ辞さないということを示しました。さらに、米2大政党の間にはいささかも協調が存在せず、どちらも自らの要求を譲歩させないことも明らかにして見せました。このため、近年ではアメリカにおいてはごく小さな政治・社会的な問題ですらも、奥深い行政上の危機と化しているのです。例えば、3兆ドルもの予算を有する国が50億ドル程度の国境壁の建設をめぐって、3週間もの政府の閉鎖を招いたことが指摘できます。ほかにも、外国の指導者との電話でのやり取りが原因で、トランプ氏が弾劾裁判の場に立たされた出来事は、世論の記憶に新しいものとなっています。ペロシ米下院議長などは、一般教書演説の場で、トランプ氏の演説後に原稿を全員の目の前で破り捨て、トランプ氏もまた、1年近く下院議長とは言葉を交わしていません。
しかし、こうした中で最も重要な点は、今回の討論会の司会者が最後に、今度の大統領選で落選した場合、その事実をどのように受け入れるか、という質問を投げかけたことです。このような質問がなされたこと自体、アメリカが政治・社会的な大混乱の瀬戸際にあり、こうした状況が続けば「アメリカの民主主義」なるものが危機的状況に陥る、ということを意味します。このため、民主・共和両党の選挙本部が、第1回討論会で相手を敗者呼ばわりするのはさておき、この口げんか同様の前代未聞の討論会における敗者は他でもない、アメリカ国民だということになります。
そして当のアメリカ国民はまさに現在、貧困、失業、感染症、抑制不可能な暴力と戦い、日々激化する政治家同士の口論を見せ付けられているのです。
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