11月 02, 2016 18:48 Asia/Tokyo
  • 社会性を身につけること

社会化という用語は、文字通りの意味では人間が社会に触れ、これに適応することとされています。

社会学では、この概念は人間が社会の一員となるに相応しい特徴を身につけていくプロセスと解釈されます。言い換えれば、社会化することは一種の相互作用であり、人間が自分の身の周りの環境や集団に存在する社会的、文化的、社会的な慣習や価値観、そのほかの要素を学び取り、自分のものにしてこれを自分の人格と一体化していくプロセスということになります。

社会化することは、重要な機能を担っています。その主要な機能の1つは、ある社会の持つ文化が次の世代に継承される下地ができることです。これにより、社会の存続が保証されることになります。また、社会性を身につけることにより理解、記憶、論証、憶測、何かを信じるといった認知能力が発展します。さらに、人間の人格において愛情、嫌悪、同情、自分に対する自信が芽生え、完成されます。言うまでもなく、こうしたプロセスにおいて個人的な習慣や習癖、願望も形成されます。

社会化することにより、人間は社会生活において受け入れられている方法に触れ、自らのニーズを社会に受け入れられる方法で満たすことを学びます。これにより、人々は社会生活に必要なスキルを身につけるのです。実際に、人間は他人と効果的な方法で関係を構築し、社会的な役割や物の見方、それに基づく期待や傾向、慣習や価値観、言語、信条、考え方や行動のモデルを学び取ります。

社会化することは、ある意味で会性を身につけることに等しく、人間や社会に重要な影響を及ぼします。明らかに、社会化するプロセスは、人間が自分の身の周りの環境や人々、集団と初めて関係を持ち、接触することで生まれるものです。このことから、家庭は人間が社会性を身につける最初の環境ということになります。その後、時間の経過とともに他人とのコミュニケーションの範囲が広がるにつれて、同年齢の人々や学校などの教育環境、マスメディアなどが家庭の責務の一部を担うようになり、これにより第2の、あるいは再度の社会化が行われます。

既にお話したように、社会性を身につける上で最も重要、そして最初の要因は家庭です。家庭は、幼少期という重要な時期にある子供に社会性を身につけさせる責務を担っています。人間が受け入れる価値観や、自分に期待される様々な役割を果たすことなどは、まず家庭環境の枠組みにより学び取られるものです。このため、家庭や家族関係は、非常に価値があり、また熟考に値するものです。アメリカの社会心理学者ジョージ・ハーバート・ミードは、社会性を身に着けるプロセスの様々な段階は、家庭で一緒に生活している人との相互反応により形成される、と考えています。

家庭では、人間の人格のモラル面での成長の基盤が築かれます。子供は、両親の行動を見ることにより、自分の両親やそのほかの家族が特別な基準に従っていることに気づきます。このため、子供は自分の家族を見本にすえ、家庭生活のあり方を決定している価値観や物の見方、行動様式を自分のものにすることを学びます。文化形成のために家庭内に存在する可能性は、ほかの組織には存在しないことから、互いを尊重する家族関係は、人間の成長や発展のための下地を整えることになります。

言い換えれば、家庭は子供たちの欲求や、彼らに対する他人の応対の仕方、ものの考え方や信条に影響を及ぼす、ということになります。子供は、愛情のこもった行動の多くを自分の両親から学びます。子供は、家庭内で母親の行動を観察し、まじめな状態にあるか、また機嫌がよいか、怠惰であるか、冷静であるかなどを読み取ります。さらには、父親の態度も子供に影響を及ぼします。この点において、家庭の雰囲気に緊張がなく、家族が互いに連携していればいるほど、子供が社会性を身につけるうえで好ましい下地が整うことになります。

家庭は、子供が社会性を身につける適切な下地を作るとともに、彼らの社会への適応や社会的な教育にとって効果的な要素だといえます。この点において、社会学者は若い世代に社会性を身につけさせる上で、家庭を最高の場所であるとみなしています。彼らは、社会的な教育とは社会や人々に必要とされる法規範、慣習、スキル、モデル、動機付け、行動様式、人間関係に通用する教育体系が家庭を通して形成され、家庭に基盤を持つ事柄から自らが学び取ったものに基づき、役割を果たせるような流れであると考えています。アメリカの社会学者タルコット・パーソンズは、家庭の主な機能の1つは子供に社会性を身につけさせることであり、それは家族の親密で愛情のあふれる関係によってのみ可能である、と述べています。

人間が生活していくうえで、社会性を身につけることが必須事項であることに疑いの余地はありません。人間は誰でも、他人との社会的な関係を必要としています。社会性を身につけさせる教育が正しく行われ、子供が家庭で良質な教育を受ければ、様々な意味で自分と同じような部類とされる人々に対する自分の権利と義務を、最高の形で認識し、意識的に自らの義務を遂行できます。こうした健全な人々は、自分の社会の将来を素晴らしいものにすることができます。さらに、家庭は個人的、社会的な弊害を阻止する上で効果的な役割を果たします。ここで大切なことは、現代において提起されている重要な問題の1つが、社会的な弊害と家庭であるということです。これについては、次回にまた詳しくお話しますが、重要なポイントは、家庭環境を適切なものにし、子供との親密な関係を築くことは、子供の成長や発展に加えて、健全かつ躍動的な社会の下地でもあるということなのです。

社会構造の変化や工業化社会の拡大に注目すると、現在の状況では人々に社会性を身につけさせるための大きな役割を担っているのは、学校などの教育機関だといえます。今日、人々を社会化することにおける家庭の主なライバルは学校とされています。社会学者は、学校が子供に社会性を身につけさせる上で効果的な役割を果たしており、人々の運命に影響を及ぼしうると考えています。