2月 16, 2016 23:10 Asia/Tokyo
  • イランの選挙(1)イランの憲法における議会の役割

今月26日には、イラン全国で第10期国会議員選挙と、第5期専門家会議選挙が同時に実施されます。

イランでは、国会やその体制はどれほど重要な存在なのでしょうか?また、イランの憲法では、国会の役割はどのように定義されているのでしょうか。今回は、イランの憲法における国会の位置づけについて考えていくことにいたしましょう。

イランの憲法では、国家の行政は国民の投票に基づいて行われ、それは国会議員選挙という枠組みで実現されるべきだとされています。イランの国会議員は、国民の直接、あるいは間接的な投票により選出されます。イラン憲法第76条では、国家行政のすべてにおける調査の権利は国会にあると定められています。イラン憲法では、国民の代表者である国会議員は、自らの見解の表明において完全に自由であり、国会で自らの見解を述べた、あるいは国民の代表としての責務を果たす立場において意見を述べたことを理由に、彼らを訴追、逮捕することはできません。一般的にイスラム評議会とも称されるイランの国会の議員は、法律の制定と監視という2つの主要な責務を担っています。

イラン憲法第71条によれば、国会は一般的な法律を定める資格を有するとされ、次のように述べられています。

「国会は、一般的な問題に関して、憲法の範囲内で法律を制定できる」

これに基づき、法律の起草や提案は法案、及び草案という2つの名目で国会に提出されます。法案とは、法的な段階を経た後に、法律という形で可決されるために政府から国会に提出される内容を指します。草案とは、少なくとも15名の国会議員や各州の高等評議会により提出される提案を意味します。

このほかに、国会議員が担う責務には、予算法などの可決や国際的な取り決め、国境線の変更、戦争などの緊急事態における国として必要な制限措置の行使の承認などが挙げられます。

イラン国会は、法律の制定の責務に加えて、監視・監督の責務も担っています。憲法第133条により、閣僚は大統領によって指名された後、信任投票のため国会に推薦され、国会はこれらの指名された人物1人1人に信任の是非を通知します。憲法第76条では、国会は国会行政の全てを調査する権利があるとされています。この条文によれば、調査の内容は政府や各省庁をはじめとする、国家の全ての部門を含む普遍的なものとなります。

事実上、国民によって選ばれた国会議員による法案の可決は、多くの決定や計画の立案の中軸となります。イランの法律では、国会は社会、経済、政治、広報、軍事、倫理、そして司法権とも呼ばれる刑事といった様々な分野における社会のニーズの全てのために法案を制定し、可決する機関とされています。

実際に、国会は国民の投票を突き詰めたものといえます。また、法律は選挙権と被選挙権を有する条件、そして選挙の実施方法についても定めています。イラン憲法では、立法権の幅広い権限や責務の説明が憲法全体の3分の1を占めるほど、立法権が非常に重視されており、これは国会に特別な立場や権限を与えています。このため、イスラム共和制における国会は行政の長とされ、憲法第59条ではイランにおける決定の最も重要な柱とされています。

イラン国会は、これまでの第9期まで定期的に結成され、イスラム共和制において重要な役割を果たしていることから、イランに国会が存在しなかった時期はありませんでした。国会議員の任期は4年とされ、国会の不在という事態が生じないよう、いずれの国会議員選挙もその前の国会の任期が満了する前に実施されることになっています。

現在、イランの国会議員数は290人となっています。1989年の国民投票以来、10年ごとに政治的、地理的な要因などを考慮したうえで、最大限20人までを議員に追加してもよいことになっています。さらに、ゾロアスター教徒やユダヤ教徒も、それぞれ1人ずつ代表議員を有しており、またアッシリア東方教会とカルデア教会に属するキリスト教徒全体で1名の議員を選出します。さらに、南北アルメニア系のキリスト教徒も、それぞれ1人ずつ議員を選ぶことになっています。

国会議員は、一般的な問題において、憲法に定められた範囲内で法律を制定できます。イラン憲法第72条によれば、国会議員は国の正式な宗教の戒律や原則、或いは憲法に反する法律を定めることはできないとされています。憲法や宗教に違反するか否かの識別は、憲法第96条により護憲評議会が行うことになっています。

法案は、閣僚により承認された後に国会に提出されます。イラン国会では、少なくとも15名の議員の提案により法的な草案を作成することができます。イラン憲法では、閣僚と大統領が国会に対する責任を負うことが定められています。このため、国会議員は閣僚のあり方に疑問を呈し、必要な場合には全内閣あるいは閣僚のいずれかを弾劾でき、さらに必要であれば不信任を表明します。国会が信任表明をしなかった場合、内閣は総辞職、或いは弾劾の対象となった閣僚のみが解任されます。

議員全体の少なくとも3分の1が、国家行政や行政権の運営の責務を実施する立場にある大統領を弾劾すべきだとした場合、大統領はこのときから1ヶ月以内に国会に出頭し、提示されている疑問を十分に釈明する必要があります。議員らの賛成、反対意見の陳述と、大統領の釈明の後、議員全体の3分の2が大統領不信任決議に賛成票を投じた場合には、憲法第110条第10項の実施に当たっての事情が、最高指導者に通達されます。

さらに、国会や行政、司法のやり方に不服がある者は、その内容を文書にて国会に提出することができます。国会はまた、こうした不服をも審議し、十分な回答を示す責務があります。

国会で可決された内容は全て、護憲評議会に提出される必要があります。護憲評議会は、これを受け取ってから最大10日間のうちに、それらを憲法やイスラム法と照合して審理し、憲法やイスラム法に違反すると判断した場合には、再検討のためこれを国会に差し戻すことになっています。これ以外の場合には、国会の可決内容は実施可能となります。

イラン憲法によれば、イスラム法学者や法律家で結成される護憲評議会は、国会での可決内容においてイスラムの戒律が擁護され憲法が完全に遵守されるため、可決内容や法律を認証する責務を有しています。護憲評議会は、最高指導者により選ばれた公明正大で現代の時勢や問題に精通している6人のイスラム法学者、さらに司法府長官により国会に紹介され、国会の採決により選出された6人の法律家の、合計12名で構成されています。

国会で承認された内容がイスラムの戒律に反していないかどうかの判定は、護憲評議会の多数票によって決まります。護憲評議会はまた、専門家会議選挙、大統領選挙、国会議員選挙の監視及び監督、そして行われた選挙や国民投票の結果について審議する責務を有しています。

イランの第1期国会議員選挙は1980年6月、イスラム革命の創始者であるホメイニー師のメッセージにより開始されました。イラン国会は実際に、イラン国民の意志を示すものであり、法律の制定のために選出された議員は全ての国民の代表といえます。これらの代表者がイランの国会を結成しており、国民に対する責務を負っているのです。