4月 04, 2017 14:26 Asia/Tokyo
  • イラン大統領のロシア訪問

ローハーニー大統領の2日間のロシア訪問は、イランとロシアの政府関係者が2国間関係と地域情勢、国際情勢に関して話し合いを行うための機会を設けました。この会談の後、ローハーニー大統領とロシアのプーチン大統領の立会いにより、2国間で領事業務、観光、経済、通信、司法分野などにおける14の協力覚書が調印されました。

新たな協力覚書の調印は、イランとロシアの協力が新たな段階に入ったことを示しています。ロシアのプーチン大統領は改めて、ロシアはイランとの戦略的関係を求めていると強調しました。

イランとロシアは、両国の関係が戦略的に深い関係にあることから、地域問題の中で、安全保障協力を拡大する傾向にあります。このため、両国の協力は、戦略的なレベルに高まっています。この関係のレベルは、地域に重要な影響を及ぼしています。この両国の影響力行使は、シリア危機において明らかであり、イランとロシアの関係は安全保障関係にまで及んでいます。このことは、両国の関係が複雑なものとなっている要因のひとつです。

ローハーニー大統領のロシア訪問の終了に際して、両国の大統領による共同声明が発表されました。これは「集合的戦略協力への推進」とされ、まさにこの見解が述べられました。この声明は、二国間協力や地域協力など、さまざまな分野の協力拡大に向けた今後のアプローチが含まれています。

この共同声明では2016年から2020年までにおけるイランとロシアによる通商協力と産業協力のプロジェクト実施に関するロードマップの完全な実現が強調されています。また、イランとロシアは協力のレベルの引き上げと集合的戦略協力の拡大に向けて、新たな措置をとると表明しました。さらに、国連やそのほかの地域的、国際的機関における協力の拡大と強化に向けた用意を明らかにしました。

およそ2年前、イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師は、プーチン大統領とテヘランで会談し、イランとロシアの関係における重要な点に触れました。ハーメネイー師はアメリカとその同盟国の地域における長期的な役割に触れ、「彼らはシリアを支配し、その後、地域における抑制を拡大し、西アジアの支配の空白を埋めようとしており、この役割は、すべての国や国民、特にイランとロシアにとって脅威だ」としました。

ハーメネイー師はプーチン大統領との会談で、二国間、地域、国際のレベルにおける協力の拡大を歓迎し、地域問題、特にシリアへの影響力ある関与を賞賛し、「地域におけるアメリカの長期的な計画は、すべての国、特にイランとロシアの国民にとっての損害となり、賢明に、緊密な協力を行い、これを無力化すべきだ」と述べました。

この会談で、プーチン大統領も、イランを独立した、大変好ましい展望を持っている国だと評価し、「イランは地域と世界における信頼できる同盟国だ」と語りました。

この共通の見解は、安全保障や共通の安全保障戦略におけるイランとロシアの協力に適した下地を整えています。両国の地域における影響力ある役割に注目すると、両国の関係は様々な面で、互いに結びついています。

イランとロシアは安全保障問題に関して、そして地域、世界の危機の解決において、積極的な協力を行っています。プーチン大統領はローハーニー大統領との会談で、このことの重要性を強調し、イランは地域と世界における信頼ある同盟国だとしました。

プーチン大統領はシリア問題におけるイランとロシアの立場は非常に近いとして、この問題に関する協力の重要性に触れ、ロシアの立場からも、シリア危機の解決は政治的な方法によってのみ、シリア国民の意見や、シリアのすべての人々、グループの要求を受け入れることによってのみ可能だとしました。

イランとロシアの明白な立場は、両国が、安全保障と過激派対策の立場を固めており、暴力や過激主義の根源への対策のために、緊密な協力と共同の計画を有しているという見解に基づいています。この協力レベルは、特にシリア危機において示され、イランとロシアは地域協力のために必要な動機を持っています。

防衛協力においても、両国は防衛力強化のための潜在能力を活用しています。これは、両国の国防大臣の訪問や会談で追求されている内容であり、これに関する合意が締結されています。

イランとロシアの戦略的な協力の影響は、経済的な分野においても、およそ3年前から、天然ガス輸出国による国際機関を設立する中で発揮されています。

このOPEC・石油輸出国機構の天然ガス版ともいえる機関創設の理念は、ハーメネイー師により始めて、プーチン大統領との会談の中で提示されました。この会談で、ハーメネイー師は、天然ガスの輸出国は、OPECのような組織を持つべきだとしました。この戦略的な計画は、現在も実行中です。

イランとロシアは、ともに石油・天然ガスの生産国で、これらの市場で多くの調整を行っています。OPECの加盟国とロシアを含めた非加盟国が出席した昨年のOPEC会合でのこの協力により、石油生産の安定と、国際的な石油価格の回復に向けた歴史的な合意が締結されました。

地域の貿易などにおけるルートの多様化、南北の輸送ルートの完成、国際運輸ルートに関する合意覚書の作成など、これらも両国の関係者の間で話し合われた内容です。

トランジットルートの完成を目的とした、昨年夏に行われたローハーニー大統領のアゼルバイジャン訪問の中で、トランジット協力と、アスタラ-ラシュト間を結ぶ鉄道接続のための、イラン、ロシア、アゼルバイジャンの3者協議が行われました。北と南を結ぶルートの中継地のひとつとなるこのプロジェクトは、すでに始動しています。

現在、ローハーニー大統領のモスクワ訪問の中で、この協力は新たな段階にはいっており、この訪問における随行使節団の多様性により、新たな合意が締結されています。

ローハーニー大統領は、モスクワで行われたロシア在住のイラン人との集会で、イランとロシアの関係のこれまで以上の強化は、両国と地域の人々の利益となり、この3年間で両国の関係が進展に向かっているとし、この訪問では、両国の関係のレベルの高さにより、数十億ドル規模の合意が締結されており、両国は年間の貿易額を100億ドルにまで引き上げることを決めていると述べました。

イランとロシアの公益認可機関の合意覚書、IT技術分野での協力、鉄道に関する協力、イラン原子力庁とロシアの原子力企業・ロスアトムとの協力覚書、イラン国営石油会社とロシアの地質学関連企業及び、ロシアの天然ガス企業、ガスプロムとの天然ガス分野における協力、商工会議所間の協力覚書、ギャムサールの鉄道路線の電化に関するプロジェクトなどが、イランとロシアの間で締結された合意覚書です。

これらの合意覚書はBRICsや上海協力機構といった国際的な団体の活動により、中国やインドなど、そのほかのアジアの大国とのより強い関係を構築する下地を作り出すことができます。

こうした協力の影響は、経済のみならず、イランとロシアの政治や安全保障、軍事的な協力にとっても重要です。このため、ロシアとイランは地域の脅威への対策など、あらゆる分野において、2国間関係を拡大したいと考えています。ローハーニー大統領のモスクワ訪問は、この目的の実現のために重要な措置だったのです。

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