2月 15, 2018 20:28 Asia/Tokyo
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    セメント

この時間は、イランのセメント産業についてお話ししましょう。 

セメントは、各国の経済の基盤を整える上で重要な要素のひとつです。各国のセメントの年間消費量と経済成長は、直接、関係しています。セメントは、経済成長の素ともいわれ、多くの国、特に工業国では、セメントは戦略的な製品となっています。

 

1980年代以降、一部の経済学者は、さまざまな指標により、各国の経済開発の度合いを示してきました。マクグラナハンが示した、各国の経済成長を比較する指標モデルでは、セメントの生産量が、人材開発や平均寿命、教育といった指標とともに用いられています。

セメント

 

現代の世界において、セメントは、最も基本的な建築資材であり、開発や建設プロジェクトの基盤となっています。一部の人々は、セメントは金属よりも重要だと考えています。

 

セメントは、粘土を含有する石灰石や石膏を焼いて粉末にしたものです。水を加えて練ると、化学反応によって固まります。主成分は炭酸カルシウムですが、少量のシリカ、酸化アルミニウム、酸化鉄、マグネシアなどが含まれています。

 

考古学者や研究者によって古代の建物の廃墟から発見されたものや歴史家の記述は、ローマ人が、火山灰と石灰を混合した最初の人々であることを示しています。この新たな物質は、橋やダム、桟橋などを建設するためのニーズにこたえるものでした。

 

現在、世界では30種類以上のセメントが生産されています。2015年には、世界で40億トンを超えるセメントが生産され、その半分以上が中国で消費されました。中国は、世界最大のセメントの消費国、生産国です。2015年、イランは世界のセメント生産国10か国のひとつでした。

 

歴史は、イラン人が建築資材の確保において長い歴史を有していることを示しています。イラン各地に昔から残る建物は、この分野でイラン人が科学的な情報を持っていたことを物語っています。

                                                               

イランは地理的な点から、石灰岩が堆積した山脈にかこまれています。そのため、セメントの生産に必要な原料がイラン国内で常に採掘されます。1928年、イランに最初のセメント工場を建設し、そのために必要な埋蔵量を見積もるための最初の調査が開始されました。その5年後、テヘランの南7キロの場所に、日量100トンの生産が可能な最初のセメント工場が稼働を開始しました。

テヘランセメント工場(1952年)

 

現在、イランでセメントが生産されてから80年以上が経過し、この産業は、国の基盤産業の一つとなり、イランのサービス産業の多くと関係しています。セメントの重要性は、建設活動における根本的な役割からくるものです。

 

イランのセメントは、世界でも良質なセメントのひとつとなっています。現在、イランでは70を超える工場がセメント産業において活動しており、さまざまな種類のセメントを生産する可能性を有しています。

 

イランには93本の生産ラインがあり、そのうち40本以上は、稼働から10年も経っていません。イランのセメント産業に直接かかわる人材の数は、2万人を超えており、主にこの産業の専門家です。セメント産業はまた、間接的に12万人以上の雇用を創出しています。

 

イランのセメント産業は、この10年の間に153%と大きく成長し、生産量は、年間3200万トンから、8300万トン以上に増加しました。イランのセメント産業は常に成長を続けており、この10年で、イランのセメントの生産と輸出は、この分野で活動する国々の中でも成長しています。

 

イランに対する制裁にもかかわらず、セメント産業は、原料を確保するために輸入の必要がなく、工場の機械や設備も、制裁の影響をそれほど受けていません。セメント産業のイランの専門家は、その能力や技術の高さにより、この産業のハード面での問題を解決することができています。

エスタフバーンセメント工場

 

イランのセメント生産にかかるコストは低くなっています。エネルギーが安価であること、原料が豊富であること、質が高く技術が存在すること、設備のおよそ80%が国内で生産されていることにより、イランのセメントの消費市場における価格は、競争の中で利点を有しています。

 

近年、イランで生産されたセメントの一部は、イラク、アフガニスタン、中央アジア、アフリカ諸国に輸出されています。イランのセメント産業の2025年までの展望により、各種のセメント1億2000万トンの生産が見込まれており、そのうちの4分の1以上を他国に輸出することが、この計画の目標となっています。

 

2025年までの計画には、競争力の拡大、エネルギーや水の消費状況の改善、下流部門の拡大、質の向上、国際水準の確保などが盛り込まれています。

 

現在、世界では、セメントクリンカー1トンを生産するのに、1トンの二酸化炭素が排出されます。しかし、セメントを生産する際に別の物質を添加することで、環境汚染を減らすことができます。セメントの生産による環境汚染の影響を減らすため、イランのナレッジベース企業が、スラグという物質を利用し、クリーンクリートを生産することに成功しました。

 

クリーンクリートの利点の一つは、最小限のエネルギーの消費の他、普通のセメントと比べた際のその耐久力にあります。また、化学合成物を加える必要がなく、二酸化炭素の排出量が少なくなっています。

 

 

セメントの消費を抑えるため、イラン中部にあるイスファハーンのセパーハーンセメント会社の研究者らは、ABSという名の物質を開発することに成功しました。この物質は、鉄鋼スラグを基盤にした混合物です。鉄鋼スラグは、その使用することによって環境汚染を減らすことができます。ABSをセメントに加えることで、コンクリートの価格を抑えるとともに、それが固まるのを遅らせることができます。この特徴は、コンクリートを遠い場所まで運ぶことを可能にします。

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