May 01, 2018 20:55 Asia/Tokyo

4月19日から27日まで、ファジル国際映画祭が開催されました。この時間は、この映画祭についてお話しします。

イランに映画が入ってから120年が経過します。映画はこの間、他の国々とともに、イランでも成長を遂げました。映画は人々の大きな人気を集め、イランの映画関係者は、国内でも成功を収めると同時に、海外でも高い評価を得ています。

 

 

ファジル国際映画祭は、イランの重要な映画・文化イベントであり、イランの著名な映画監督であるミールキャリーミー氏が事務局長を務める中、テヘランで開催されました。

 

 

ファジル国際映画祭の開会式では、イラン映画120周年を記念するケーキが配られました。今年のこの映画祭は、マジード・マジーディ監督の映画「雲の向こう側」の上映によって開幕しました。

 

 

映画「雲の向こう側」は、インドで制作され、ファジル国際映画祭で上映された後、34か国で公開されています。

 

ファジル国際映画祭は、国際コンペティション、アジア・イスラム諸国の映画、さまざまな映画祭の映画といった部門で開催されました。

 

 

この他、古典映画の編集版、さまざまなジャンルの斬新な映画、イスラム世界の出来事に関する映画、イタリアとジョージアの映画、ドイツの短編映画といった部門も開催されました。

 

ファジル映画祭と同時に、イラン、地域、世界の若い映画監督が出席するイベントも開催されました。さらに、哲学と映画、宗教と映画、の2つのテーマについて考える会合や、映画界の巨匠を称えるイベントも開催されています。

 

 

今年は、ファジル国際映画祭に、世界45か国の長編・短編映画が参加し、国際コンペティション部門では、12本の海外長編映画と3本のイラン映画が上映されました。

 

今回の映画祭の重要な部門のひとつは、イスラム世界の出来事を扱った作品の部門でした。この部門には12本の映画が参加しました。そのうちの一つが、「writing on snow」でした。

 

 

この映画はパレスチナ人のラシード・マシュハラーウィー監督によって制作されました。マシュハラーウィー監督は次のように語っています。

 

「映画は、ガザに暮らし、シオニスト政権イスラエルと戦う5人のパレスチナ人の物語である。この映画は、彼らを困難に追い込んでいる見解の違いを物語っている。この映画は、考え方の違いを持ちながらも、シオニスト政権に対抗する上で団結すべきだということを教えている。なぜなら、団結こそ、私たちの力を強化し、敵に打ち勝つエネルギーとなるからだ」

 

「writing on snow」のパレスチナ人監督、ラシード・マシュハラーウィー

 

今年のファジル国際映画祭には、さまざまな国からおよそ300人の映画監督、プロデューサー、研究者、映画評論家などが出席しました。

 

今年の映画祭のゲストは、世界中から参加しましたが、その多くは、ドイツ、フランス、スウェーデン、スイス、イタリアといったヨーロッパ諸国の人々でした。世界の主要なメディアからも、この重要な映画イベントを取材するために報道陣が訪れました。

 

イラン映画の国際的な地位に注目し、1998年2月に初めて、イラン映画国際マーケットが開催されました。この中で、タイムズが、ミレニアム特別号で、イラン映画を世界の芸術映画産業の柱として紹介しました。

 

2015年から、ファジル国際映画祭・映画マーケットが、国内の部門と切り離され、独立した形で4月に開催されることになりました。今年の映画マーケットには、国内から26社、海外17社が参加しました。

 

映画マーケットの主催者の重要な目的は、合作映画の制作でした。例えば、ヨーロッパ諸国の企業がこの分野に投資を行い、映画祭に参加しています。「イスファハーン、世界の半分」と、「トルクメン族の花嫁」という2つのドキュメンタリー作品は、ヨーロッパの企業とIRIBの協力によって生まれた作品です。今年のファジル国際映画祭のマーケット部門では、イランの長編映画31本が上映されました。

 

アメリカのオリバー・ストーン監督も、ファジル国際映画祭の招待客として、イランを訪問しました。オリバー・ストーン監督は、これまでに20本以上の長編映画を制作しています。

 

ファジル国際映画祭でのオリバー・ストーン監督

 

オリバーストーン監督は、映画関係の学生が参加した会合で、ハリウッド映画の時代は終わりに向かっているとし、若い監督に、世界のサイバー空間の出来事に関する作品の制作を呼びかけました。

 

「現在、サイバー空間の広がりにも拘わらず、政府が私たちについて知っている事柄を正しく理解する者は誰もいない。私たちは知らないが、最悪の状態を想定すべきである。アメリカでは、人々は監視者を信頼しているが、この考え方は誤っている。サイバー空間は、政府に無限の力を与えている。そしてそれを抑制するものはない。軍事費が大幅に増やされる一方で、社会に投じられる費用は削減されている」

 

「今、私たちはサイバー戦争を目にしており、それに多額の費用が投じられている。アメリカにはサイバー司令部が存在し、実際、軍の第五の柱となっている。民間企業が情報を購入し、時には政府がこれらの企業と協力することもある」

 

オリバー・ストーン監督は、アメリカの政策に反対する内容の映画について、次のように語りました。

 

「アメリカでは、引いてはイランでも、私が今まで生きていることから、CIAの局員なのではないかと考える人々がいる。しかし私は、CIAの局員に会ったことすらない。とはいえ、この組織は、私のプロジェクトに影響を及ぼそうとしている。なぜならハリウッドに大きな影響力を持っているからだ。2013年のアカデミー賞の作品賞を『アルゴ』が受賞したとき、この発表はホワイトハウスから生中継で行われた。これはハリウッドとアメリカ政府がどれほど深い結びつきを有しているかを物語っている」

 

オリバーストーン監督は会合で、自身の作品「アレキサンダー」の歴史の歪曲に関するイラン人学生の質問に対し、次のように語りました。

 

「私は自分の見方をもとにこの映画を制作した。その見方はあなた方のものとは異なっている。残念ながら、ワーナーブラザーズは、この映画の26分間をカットした。私が本当に伝えたかったこの映画のDVD版をぜひ観てほしい」

 

映画祭の開催中、外国人ゲストの何人かに、イラン映画に関するインタビューを行いました。審査員の一人、トーマス・クロル氏は、ドイツ映画のカトリック委員会のメンバーで、一部の映画は、自分の生活について考えるきっかけになるとしています。また、映画によって人生が変わることもあるとし、人生のさまざまな出来事を考える上で、映画を活用するよう勧めています。

 

トーマス・クロル氏

 

ソハン・パンシャ氏は、今年のファジル国際映画祭のイスラム映画部門の審査員でした。パンシャ氏はイラン映画について次のように語っています。

 

「イラン映画は世界的に知られている。イラン映画は、人々の生活を反映しており、製作費はそれほど多くないにも拘わらず、強いメッセージ性を持っている。私の祖国マレーシアでは、イラン映画がテレビで放送されていて人々にも人気がある」

 

ソハン・パンシャ氏

 

中近東の映画を専門とする映画研究者のコリン氏は、これまでのすべてのファジル国際映画祭に参加しています。コリン氏は、映画祭の開催方法について次のように語りました。

 

「この映画祭は非常に計画的に開催されている。これまでの参加経験から、この映画祭はまもなく、大きな成長を遂げると考えている」

 

コリン氏

 

審査員の一人、ワレリー・デマルナク氏は、初めてのイラン訪問についてこう語っています。

 

「テヘランは非常に美しい山の景色を持つ。まだ映画祭は始まったばかりだが、人々の温かさを感じている。私はイラン映画に関心を持っていて、イランに来る前から、イラン映画を通してよいイメージを持っていた」

 

ワレリー・デマルナク氏

 

アメリカの映画評論家のデボラ・ヤン氏は、これまで12回、イランを訪問しており、常にイラン映画に関する情報を気にしていると語っています。

 

ヤン氏は、イラン人の映画製作者は独自の考え方を持っており、ハリウッドやボリウッドに追従していないと強調しています。また、重要なのは、イラン映画にはさまざまな声が存在することだとし、イラン人の女性監督の映画を観るのが好きだと語っています。

 

デボラ・ヤン氏