May 09, 2018 21:17 Asia/Tokyo

今回は、前回ご紹介しましたイラン西部ケルマーンシャー州に隣接しているハメダーン州に視点を移し、この州の見所の一部をご紹介してまいりましょう。

イラン西部に足を踏み入れると、必ず訪れてみたくなるのがハメダーン州です。ハメダーンは、イランに起こった初の王朝であるメディア王朝時代の最初の首都が置かれていた場所でもあります。しかし、このことを抜きにしても、この町には数十に上る偉人の墓地や史跡があることから、ハメダーンを訪れることは、イランはもとより世界でも有数の古代都市に触れることになります。

 

映像によるハメダーン市巡り

 

さて、ハメダーン巡りのクライマックスとされ、最も思い出に残るとともに、ぜひこの町を訪れてみたくなる重要なきっかけの1つは、やはり何と言っても世界で最も長い水の洞窟「アリーサドル洞窟」を見学する事ではないでしょうか。この洞窟は、ハメダーン州キャブーダラーハング行政区・アリーサドル村の近辺に横たわる丘陵の内部にあります。この洞窟内には、幾重にも曲がりくねった道や大きな湖、すなわち地底湖が存在します。なお、この洞窟内は小船などを利用してのみ見学可能となっています。

 

アリーサドルの洞窟

 

 アリーサドル洞窟が誇る大自然の摩訶不思議と美しさは、フランスのラスコー洞窟やショーヴェ洞窟、そしてオーストラリアのゴールドコーストにある「光る洞窟」といった、世界でも数少ない洞窟に秘められた大自然の驚異に匹敵します。アリーサドル洞窟内の湧き水は非常に透明度が高く、普通の明るさでも肉眼で、10メートルの深さまで見る事ができます。

もっとも、この洞窟内の地底湖の水は、石灰塩が含まれているために飲料水にはならず、またこの湖には生物は一切生息していません。この洞窟内の一部の天井の部分には、様々な物質が堆積、沈殿して動物の形や幾何学図形のような奇妙な形状が見られ、何ともいえない不思議な世界を生み出しています。

一方で、洞窟内の地面、すなわち水のない場所には、いわゆる鍾乳石が連なり、針山やカリフラワーのような奇妙な形を形成しています。ここはまさに、夏は涼しく冬は温和であるという心地よい状態であるとともに、言葉では表現しがたいほどの不思議な世界といえるでしょう。

注目すべきことは、この洞窟内に漂う、人工的な音の存在しない絶対的な静けさです。ここでろうそくの火を灯してみると、炎が全く揺れないことがわかります。

 

アリーサドル洞窟内の映像

 

これまでに、アリーサドル洞窟内にはおよそ14キロに及ぶ通路がある事が確認されていますが、そのうち見学ルートとして通行できるのはおよそ4キロのみです。いずれにせよ、この洞窟では大自然が生み出した大傑作の1つに触れることができます。

頭上に沈殿物や堆積物の結晶が延々と続く、幾重にも曲がりくねった見学ルートの散策、また透明度の高い地底湖での小船による遊覧、そして数千年の時を経た面白おかしい形状の鍾乳石が生み出している光景は、言葉ではとても表現しきれるものではなく、とにかく実際に足を運んで自分の目で確かめるに限ります。まさに、百聞は一見に如かずというにふさわしいでしょう。

 

さて、洞窟内を探検した後にはロープウェーに乗って、大きな岩の表面に刻まれた楔形文字の碑文・ギャンジナーメの見られる観光施設群を楽しんでみましょう。それではここで、IRIB通信記者のハメダーンからの報告です。

「ギャンジナーメ観光施設群のロープウェーは、ハメダーン市から5キロ離れた町アッバーサーアーバードの緑豊かな谷間、そしてギャンジナーメの美しい滝と、悠久の歴史を誇る碑文の近隣に位置しています。このロープウェーは、緑に覆われたアルヴァンド山系の1つで、メイダーネ・ミーシャーンと呼ばれる地域の方向に延びています。さらに、このスポーツ・観光施設群の自然、歴史面での魅力は決して見逃せません。この施設群は、ハメダーン市から西に数キロ離れたアルヴァンド山系の中に位置しています。そして、楔形文字で刻まれたギャンジナーメの碑文は、アケメネス朝のダリウーシュ王とクセルクセス王の時代のものとされ、緑豊かなアッバーサーバードの谷の突き当たりに刻まれています」

 

ギャンジナーメ観光施設群に関するある行楽客のコメント

 

アルヴァンド山系の心地よい陽気、緑豊かな谷、ミーシャーン平原の美しい眺めが大変魅力的であることから、この地域にはイラン国内外から観光客が訪れます。

この観光村では、落差はそれほどないものの、横幅の大きいギャンジナーメの滝を見学できます。また、この観光施設内に設置されたロープウェーや、スキーリフトにも乗れるほか、全長200メートルのつり橋をわたることなどもできます。

 

 

そして、ハメダーンを訪れたからにはぜひ、12世紀のイランの詩人で神秘主義者のバーバーターヘルの墓廟に足を運んでいただきたいものです。バーバーターヘルは、特に二行詩と呼ばれる対句形式の詩を吟じた事で知られています。

この詩人の墓廟には、非常に細やかで美しい装飾の化粧タイルが使用されているとともに、24枚の石版上に24の対句による彼の詩が刻まれています。また、この詩人の墓廟の脇には、ハメダーン州手工芸博物館が設置されており、ここも一見の価値があります。

 

バーバーターヘルの墓廟

 

そして、ハメダーンにあるもう1人の著名な学者の墓廟として、世界的にも名高い中世イランの医学者イブン・スィーナーの墓廟を忘れてはなりません。この大学者の墓廟は、楕円形をしたまったく同じ名前の広場に佇んでいます。イラン式庭園をイメージしたこのイブン・スィーナー広場には、池とともに樹齢の多いスズカケノキの木立が並び、心休まる憩いの場を生み出しています。

イブン・スィーナーの墓廟の建物の設計は、現在のイラン北東部の町ゴンバデ・カーヴースにある、最も古いイスラム建築の1つ、すなわち中世のイラン北東部の支配者カーブース・ブン・ヴシュマギールの塔をモデルにしています。現在のイブン・スィーナーの墓廟の南側の広間は、博物館になっており、ここには紀元前千年紀のものとされる発掘物、古い貨幣や陶磁器などが収蔵されています。また、北側の広間には、イブン・スィーナーの作品や手書きの写本など、貴重な品々が集められています。

 

上空から撮影したイブン・スィーナーの墓廟

 

ハメダーンの見所は、ここまでご紹介してきたものだけではなく、まだまだ続きます。この世界的な古代都市に、ほかにも今なお残る重要な見所として、現在のハメダーンの名称の旧名のついた「ヘグマターネの丘」を挙げることができます。

 

 

古代ギリシャの歴史家ヘロドトスは、ハメダーンの町には7つの壁があったと述べています。また、近年における考古学者の発掘調査の結果、この地区には壮観な宮殿が存在しており、そこがまさにヘグマターネの丘にあたることが判明しました。さらに、この古代都市には当時すでに、先進的で秩序だった配水網が存在していたことは注目に値します。

ヘグマターネの再現映像

 

さらに、ハメダーン州ニハーヴァンドには、ギヤーン湖と呼ばれる、イラン人にもあまり知られていない湖があります。この湖は、ある意味で忘れられた天国といっても過言ではありません。その周りには樹齢の高いスズカケノキの木立が並んでいることから、この地域は長い歴史を持つ事が見て取れます。また、こんこんと豊かな水が湧き出るこの湖には蜃気楼が見られ、これはまさに、まだ開発が進んでいないこの地域の原始的な大自然の摩訶不思議といえます。

 

 

これまでお話してきたことを総括すると、ハメダーンの美しさは自然、文化、歴史的な魅力にあるといえます。ハメダーンは珍しい動植物から緑豊かな谷に至るまでの、いわば大自然の博物館そのものであるといってもよく、さらにはレンガ造りの美しいドームを備えた巡礼地イマームザーデ、アーケードや美しいドームつきの昔ながらのバザールなどは、この古代都市の氷山の一角に過ぎません。いずれにせよ、ハメダーンに足を運ぶことは、誰にとっても魅力的で忘れがたい経験となることでしょう。

 

 

次回もどうぞ、お楽しみに。

 

 

 

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