サウジアラビアの攻撃によるイエメンの女性と子供たちの心痛
既に皆様もご存知のように、サウジアラビアとその同盟国によるイエメン戦争は、特に同国の女性と子供たちに悪影響を及ぼしています。
2015年3月26日、サウジアラビアが主導する地域のアラブ諸国の連合軍の空爆により、「決意の嵐」作戦と称したイエメンへの軍事介入が始まり、しばらく経ってからは「希望の復活」作戦という名目で続行されました。この戦争では、ペルシャ湾岸協力会議の加盟国のうち、オマーンを除いた全てのアラブ諸国、即ちアラブ首長国連邦、カタール、クウェート、バーレーンがサウジアラビアの主導のもとに、防衛手段を持たないイエメン国民との戦争に突入し、ヨルダン、エジプト、モロッコ、そしてスーダンがこのアラブ連合軍に加わりました。
イエメンのメディアと情報筋は当初から、シオニスト政権イスラエルがサウジアラビアを支援し、協力していることを強調していました。この問題に対し、この2つの政権は沈黙を決め込みましたが、一部の西側諸国のメディアはシオニスト政権軍がこの戦争に参加し、軍事支援を行っていると報じました。アメリカ、イギリス、フランス、トルコは、この犯罪行為の中で殺人犯としてのサウジアラビアの指導者たちを支援したのです。アメリカのホワイトハウスは正式に、同国のオバマ大統領がアメリカ軍に対し、軍事や情報面でのサウジアラビアへの支援を許可したことを明らかにしています。
それから1年以上が経過した現在、サウジアラビア主導のこの攻撃は失敗に終わり、攻撃を仕掛けた側は決定的な勝利を収められないままとなっています。彼らがイエメン戦争で得たものは、この国でのテロ組織ISISの勢力の拡大、そしてイエメン国民の基本的人権の侵害、貧困や飢餓、そして情勢不安のみでした。
イエメン戦争における国際人権法や国際人道法に対する完全な違反行為の例として、女性や子供を初めとする民間人の殺害、国際医療支援団体「国境なき医師団」が運営する病院など、医療機関への爆撃、クラスター爆弾などの禁止兵器の使用、イエメンへの人道援助物資の移送妨害、イエメンの経済機関やインフラの破壊などを挙げることができます。
イエメンの法的機関は、昨年の3月26日から現在までに、8200人のイエメン人が殉教しており、そのうち女性は1519人、子供が1996人だったと発表しています。さらに、これまでの攻撃で、1万5184人のイエメン人が負傷し、そのうちの3000人以上が女性と子供であるとしています。
しかし、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、今年2月26日付けの最新の統計において、この戦争によるイエメン人の死亡者数を3万5000人と発表しました。この人権団体はまた、サウジアラビアがイエメンの住宅地域やインフラを標的とし、過去1年弱の間に3万5000人以上を虐殺した上に、イエメンの国内外で250万人以上の難民を発生させたことを裏付ける、決定的な証拠が存在すると表明しています。
この戦争で、サウジアラビアはイエメン国内のインフラや重要な施設を破壊しました。その内訳は、14の空港、10の港湾、512の橋と道路、125の発電所、164の貯水槽、167の通信基地、32万5137棟の住宅、615軒のモスク、600以上の教育機関や学校、16の通信社、328の保健衛生センター、970の政府系機関、353の市場や商業施設、食料や燃料を運搬するトラック584台、300以上の燃料の給油所、546の食料の貯蔵庫、およそ180箇所の史跡や観光名所、190の作業所、42のスポーツ施設となっています。さらに、この戦争で3750の学校が休校となりました。
国連難民高等弁務官事務所によりますと、イエメン国内で269万人の難民や住む家を失った人々が、サウジアラビアによる攻撃の影響を受けているということです。これまでに、17万人のイエメン人が主にジブチやエチオピア、ソマリア、スーダンに避難しています。これに対し、国連の予測では、今年中にさらに16万7000人の難民が発生するとされています。アラビア語のニュースサイト、アフバール・アルサによりますと、1週間に500人から800人のイエメン人が、サウジアラビアによる爆撃を逃れるため、ジブチに避難しており、同国において灼熱の太陽が照りつける中、水や食物、衣料品を初めとする最低限の必要物資さえもない劣悪な状態での生活を余儀なくされているということです。
イエメンでの人道上の危機により、イエメンの総人口の80%以上が深刻な食料不足に瀕しており、180万人の子供が学校に行けない状態にあります。国連の報告によりますと、イエメンの総人口の80%に当たる2120万人が現在、人道支援を必要としています。イエメン戦争のため、少なくとも32万人の5歳以下の子供が、著しい栄養障害に陥っています。
ユニセフは、最近の報告において、イエメンでは1日に平均して6人の子供が死傷していると発表しています。「瀬戸際に立つ子供たち」というタイトルで発表されたこの報告書には、次のように述べられています。「イエメンに対するサウジアラビアの侵略が始まってから、これまでにイエメン人の子供934人が死亡し、1356人が負傷した。さらに、およそ1万人に上る5歳以下の子供が、栄養不良や医療手段がないために命を落としている」 この報告によりますと、イエメンでは子供の迫害が拡大しており、これらの子供たちの多くが戦争に駆り出されています。しかも、この子供たちのうち848人は10歳未満だということです。
イエメン人の女性たちは、この戦争による経済、社会面での打撃という悲しい思いを抱えながら、日々の生活を続けています。彼女たちは、他に選択肢がないため、こうした状況を受け入れざるを得ません。イエメン国内での衝突は、女性たちにとって危機的な状態を生み出しています。イエメン人の女性の多くが、家計を支えるために奮闘していますが、その一方で保健衛生、教育サービスや就労の機会がないことから、彼女たちは益々厳しい状況に追い込まれています。
さらに痛々しいことに、戦争の爪あとは終戦後数年先まで後をひきます。親を失った子供や、夫を亡くした女性たちはその後も家計を支えるために、戦争により生じた状況との厳しい戦いを継続しなければなりません。イエメンでのジェンダーの平等の問題を担当する国連人口基金の専門家、アフラム・ソファン氏の見解では、戦闘地域で最も被害を受けやすいのは、未成年および成人の女子であるということです。夫が戦争に参加することで、妻が家庭の運営を負担してきましたが、彼女たちの多くは自分や子供たちを守り、また基本的なサービスを利用するため、他の土地への移住を強いられました。この点で、現在の戦争において女性は益々被害を受けやすい状態にあります。突然のしかかってきた家庭の運営監督の負担、また度重なるほかの土地への移住、適切な住居がないこと、個人的な生活空間の侵害、貧困や食糧難により、女性たちは大きな精神面での圧力にさらされています。
イエメン戦争は、女性をはじめとする民間人に醜悪な結果をもたらしています。イエメンを攻撃した国々は、女性や子供の安全やその他の権利を侵害し、人道法に違反して戦争犯罪を起こしたのです。中でも、女性はデリケートで傷つきやすい性質であるために、より大きな被害を受けることになります。さらに、女性であることは女性に対する一部の性犯罪の引き金となります。これにより、特にイエメン人の女性たちに醜悪な事態が生じており、その後遺症は戦後数年先まで残ると考えられます。
イエメン人の女性が危険にさらされていることは明白です。女性に対する性的暴力も発生しており、子供の強制的な結婚、精神的な虐待、必要な便宜手段の不足、性的虐待や強姦もイエメン人の女性たちに深刻な被害を与えています。国連の人権プロジェクト調整官によりますと、サウジアラビア人の高齢の男性とイエメン人の少女との婚姻は今では通常のものとなっているということです。これらの男性と結婚した少女たちの多くは、法定年齢に達していません。
最近、イエメンでの停戦が叫ばれています。ユニセフのイエメン事務所代表のジュリアン・ハーネス氏は、4月10日から、イエメンでの停戦が成立すれば、イエメン人の家族は国連からの食料や医薬品などの支援を受けられる望みが出てくる、と述べています。 しかし、実際には今回の戦争による身体的、精神的な被害は、今後数年先まで続くと思われます。イエメン戦争は、この国の人々の虐殺、難民や孤児の大量発生、女性たちへの耐え難い圧力以外には、何の成果ももたらさなかったのです。
イエメン人の女性たちは、甚大な精神的苦痛を抱えています。夫を失い、子供たちは親を失い、自宅から退去させられ、迫害されています。それまで住んでいた町は廃墟と化し、生活の手段が失われました。今後は、イエメン人の母親たちが夜に子供に語り聞かせる物語は、侵略や略奪、人間性の破滅という恐ろしい内容でしかありません。それは、博愛主義を主張する一部の国の政府の沈黙と支持により、このような形に出来上がった代物なのです。