6月 05, 2022 14:55 Asia/Tokyo

イランの広大な大地は、多くの自然や観光名所を有し、エコツーリズムの可能性という点で、世界のトップ5に名を連ねています。この番組では、イランの自然の恵みをご紹介して参りましょう。

イラン北西部・アゼルバイジャン州にあるサハンド山は、その山すそに美しいひなげしの花が広がることから、「イラン山岳地帯の花嫁」とされています。この一帯は、多くの泉が存在し、豊かな緑が生い茂ることから、特に春から夏にかけて、自然を愛する多くの観光客がやって来ます。また、サハンドの高山地帯のスキー場、鉱泉、緑豊かな渓谷、そして山すそに広がる集落、これらは、この地域の景観の美しさをさらに増大させています。サハンド一帯の自然の魅力のひとつ、キャンドヴァーン村は、岩で出来た住居が集まり、現在もそこで人が暮らす、世界でただ一つの観光地となっています。

●キャンドヴァーン村

キャンドヴァーンの歴史的な村は、サハンド山の麓、タブリーズの南西52キロのところにあります。サハンド山は、火山地帯で、およそ50の火口が存在しています。また、この山の周囲には渓谷が数多く存在しますが、キャンドヴァーン村も、この渓谷のひとつに位置しています。キャンドヴァーン村には、160世帯、750人を超える人々が暮らしており、主に牧畜業や農業、手工業を営んでいます。キャンドヴァーンは、世界に3つある奇石の村であり、他では見られない魅力を備えています。キャンドヴァーン村の驚嘆に値する建築、古くから残る岩の住居での人々の生活は、世界でも類を見ないものです。この他、奇石で有名な場所は、トルコのカッパドキアや、アメリカのダコタがありますが、これらの場所には現在、人が暮らしておらず、観光客は、住居跡を見て回るだけとなっています。

●キャンドヴァーン村の歴史

キャンドヴァーン村の歴史は、少なくとも13世紀にまで遡ります。この村の家は、

凝灰岩(ぎょうかいがん)で出来た、円錐形の岩で、「キャラーン」と呼ばれています。キャラーンは、2階から4階建てとなっており、多くは、上階が住まいとして利用されています。あるイギリスの考古学者は、イランを訪れ、世界最初の郵便ルートを発見し、このルート上にあったキャンドヴァーンの歴史を、人類の創造、人間の定住、社会生活に関する理論の根拠に挙げています。

●地質学的な観点から

地質学者の調査によれば、キャンドヴァーンの円錐形の岩は、地質学の第一段階において、山の移動によって、溶岩が堆積し、この形になり、後に、浸食の結果、表面が完全になめらかな現在の状態になったとされています。この岩にある穴は、岩が生まれる際、内部にあった空気やガスが放出され、穴が出来たと考えられています。地質学者によれば、岩の内部には、より軽い物質が存在し、それが自然の要因によって次第に消滅し、大きな穴の形の空洞になったということです。

●キャンドヴァーン村の人々の生活

キャンドヴァーン村は、実際、円錐形の岩の集落であり、村の人々が岩の内部を削り、住居の形に仕上げました。キャラーンと呼ばれる岩の内部は、末広がりで、上部にいくにしたがって狭くなります。イランの他の村の住居は、縦と横に広くなっていますが、キャンドヴァーンの住居は、上に向かって延びており、中には、3階建て、4階建てのキャラーンもあります。

下の階は、家畜小屋として使われており、2階や3階が、村人の住居となっています。4階建てのキャラーンでは、最上階は、物置に使われています。キャラーンは、それぞれ独立しており、内部の空間が限られているにも拘わらず、適した生活空間が整えられています。例えば、キャラーンの側面の壁は、棚のような形に削られ、ランプや鏡、本といった物が置かれています。キャラーンの中には、ランプを吊るすために、天上に留め金がつけられているものもあります。

この村には、イランの寒冷な山岳地帯にある多くの村と同様、パンを焼く釜が、居間の床にあります。しかし、キャンドヴァーンの多くの家庭は、家の外にパンを焼く釜を作っているため、家の内部の釜は、ほとんど使用されていません。キャラーンの入り口には、セメントで囲った小さな水場があり、低い壁によって、居間との間が仕切られ、衣類や食器を洗ったり、また住民が体を洗ったりするのに使われています。現在、キャンドヴァーン村には、上水道が敷かれています。

キャラーンの壁には、生活用品を保管しておくための穴が掘られており、彼らの言葉で、物置を意味する「キャズネ」と呼ばれています。キャラーンの中には、少し高さのある石の台があるものもあり、これらは、絨毯やジャージーム、ゲリムなどで覆われ、家族のくつろぎの空間として利用されています。また、キャラーンの壁は外気をシャットアウトする性質を持つため、夏は涼しく、冬は比較的暖かくなっています。キャラーンの多くは南向きであり、住人は、寒い季節でも、晴れた日には窓を開け放ち、太陽の光を存分に浴びることができます。壁が厚いこと、凝灰岩の質が硬いこと、それゆえ削る作業が困難なことから、入り口は低く、高さ160センチほどで、幅は1メートルから1メートル20センチほどとなっています。雪や雨の進入を防ぐため、窓や扉は、キャラーンの内部に取り付けられています。キャンドヴァーンの集落の路地は、かつては水が流れていた畦溝でした。

キャンドヴァーン村の岩の住居と、その周囲の景観は、美しい世界をかもし出しています。数個が連なっているもの、2つが組み合わさっているもの、小さなもの、円錐形、あるいは方錐形など、様々な形のキャラーンが集まった集落は、非常に見ごたえがあり、イランの自然の見所のひとつとなっています。また、この地域の気候は、キャンドヴァーン村周辺の土壌を肥沃なものとしています。キャンドヴァーンの最良の畑は、村の正面にある高台の美しい平原にあります。また、この地の北から南にある、緑豊かな渓谷は、イラン山岳地帯でも、美しくさわやかな気候を持つ場所とされ、比較的規模の大きな小川に加え、鉱泉もあり、治療効果も望め、腎臓結石に効くと言われています。また、サハンド山の緑豊かな牧草地は、重要な放牧地であり、キャンドヴァーン周辺の山裾は、家畜の飼育に非常に適した場所のひとつとされています。

 

 


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