視点
インド、世界5位の経済大国
インドが、自国で植民地支配を行っていたイギリスを抜いて、世界5位の経済大国となりました。
インド経済は2021年の第4四半期において、イギリスを追い抜きました。
IMF国際通貨基金は、インド経済がイギリスを追い抜くことを予測していましたが、これはイギリスがエネルギー価格の高騰やインフレ上昇と格闘していることによります。
インド経済がイギリスを追い抜いて世界第5位にのし上がったことは、20世紀半ばまでイギリスの植民地であったインドが、特に輸出品の生産を中心に据えた国内の能力に依拠して、経済分野における自らの地位を回復させることに成功したことを意味しています。つい10年前までは、インド経済は世界で11位、イギリスは5位となっていました。
7%以上の経済成長率の達成という目標設定および、こうした政策の実現に向けて国家のすべての能力を駆使したことにより、インドは過去10年間で、経済大国がひしめく中で順位を6段階も上げ、イギリスを追い抜いて世界5位に浮上しています。
過去8年間でインドが平均経済成長率8%を達成したことから、経済誌エコノミストは2022年の世界経済の展望の分析において、世界最速の経済成長を見せた国としてインドを挙げました。
もっとも、インドの経済成長のための主要なインフラは過去10年のみで作られたものではなく、同国の過去の歴代政権が国家経済の成長の大きな変革に果たした役割もまた、これに影響しています。
インドの経済成長は、3つの時代、すなわちインドの独立から1980年代、1980年から1990年、そして1990年代の初めから現在までに分けられます。
経済専門家らは、インドではこのうち第3の成長期が、同国の目覚しい経済成長プロセスに最も影響した、との見方を示しています。
この時代には、輸入代替による工業化戦略は放棄され、自由市場に適した政策が課題とされました。
そのほかのインド経済の変革的な措置として、構造的に公平な体制の実施、農業への補助金・関税の削減、投資法の簡素化、公共部門の縮小が挙げられ、これらは過去およそ10年間で同国の経済成長を8倍にまで引き上げたのです。
2018年のインドでの銀行危機発生、そしてこの3年間の新型コロナウイルスの大流行は、同国および世界の経済に大きな影響を与えました。しかしインド政府は2022年、ナレンドラ・モディ首相が描く大いなる野望に沿って、これら2つの要因によって引き起こされた経済的後退の一部の迅速な補填に成功しています。
イギリスを追い越して世界5位の経済大国にのし上がるというインドの経験は、そのほかの後進国または発展途上国が、自国の物質・人材面での能力に基づき綿密で長期的な計画をたてることにより、世界経済における地位の向上を可能にできることを示すものなのです。