視点
米の内政干渉に抗議するパキスタン人のデモ
パキスタンで、政治・宗教活動家らが抗議デモを開催し、同国の内政に対するアメリカの内政干渉を非難しました。
このデモに参加した人々は「アメリカに死を」の反米スローガンを連呼し、アメリカ国旗に火をつけて、アメリカの脅迫めいた対パキスタン政策への怒りを表明しています。
パキスタンの政界やメディアではこの数日、特にパキスタンの野党連合が同国議会にイムラン・カーン首相の不信任案を提出してからというもの、同国に対するアメリカの内政干渉問題が大々的に提起されています。
カーン首相は、自らを解任させようとする工作は、国外勢力による陰謀を国内の反体制派が実践している結果だとしています。
ロイター通信によりますと、カーン首相は「わが政権は、わが国にあるアメリカ大使館に対し、わが国への内政干渉について正式に抗議した」と語りました。
また、軍事・政治勢力間の分裂の扇動を初めとした、パキスタンに対するアメリカの過去の二重基準的な政策を指摘し、「わが国は一イスラム教国として、他のいずれの国にも隷属しない」と述べています。
そして、「2001年9月11日の米同時多発テロ事件発生後のアフガニスタン戦争で米に協力したことにより、パキスタンは7万人の国民の死亡など甚大な被害を受けた。しかし、それでもなおアメリカの敗北を理由に、我々はアメリカ側から非難の矛先を向けられている」と語っています。
これに先立ち、パキスタン外務省は同国イスラマバード駐在のアメリカ行使を呼び出し、パキスタンへの内政干渉を不当だとして厳重に抗議しました。
これまでに、パキスタンの歴代首相はいずれも任期を全うできた試しはありません。現職のカーン首相は2018年に当選していますが、パキスタンの首相らがその座で活動を続けていけるかは、パキスタン軍が投じる信任票および不信任票が重大な鍵を握っています。
政界の一部は、パキスタン政府の最近の立場表明にアメリカが強い不満を示していることを強調し、アメリカがカーン現政権への対抗をもくろむ重大な要因として、アフガニスタンにおけるアメリカの屈辱的な敗北を挙げています。政界のこの視点から見ると、アメリカはアフガン問題、さらにはウクライナ危機に関してパキスタン政府がこれまで以上にアメリカの政策に足並みを揃えるものと期待していました。しかし実際にはこの思惑は外れてそのような行動を取らなかっただけでなく、パキスタン政府は国内軍事基地をアメリカに委ねることに反対し、アメリカの逆鱗に触れる結果となっています。
パキスタンの傑出したアナリストの1人、Imtiaz Gul 氏はこれについて、「アメリカは、地域で地政学上これまでになく孤立していることから、アフガンからの軍事撤退後は思考の混乱にさいなまれることになった。パキスタンをはじめとする地域諸国は、米に自国の軍事拠点を使わせることに反対し、アメリカを想定外の困難に直面させている。この点で、アメリカがパキスタンに対し憤激しているのもうなずける」との見方を示しています。
こうした中、パキスタン市民らが米の内政干渉を非難して抗議デモを実施したことは、アメリカの内政干渉・植民地主義的な政策に関する一般市民の嫌悪や怒りの片鱗を垣間見せるものだといえるでしょう。