視点
アメリカによるイラン石油輸出への追加制裁
アメリカ財務省が先月29日に声明を発表し、イラン産原油輸出助長を理由に、10の企業と船舶1隻を制裁対象者リストに掲載したことを明らかにしました。
この制裁が行使された一方で、米国の制裁の効果の喪失に関する新たな事実が具体化しつつあります。最近、米国財務省は、「制裁の望ましくない影響」を調査するための部署を設立しました。この取り組みは、トランプ前大統領の在任中に制裁に過剰に依拠したことから、制裁という刃の切れ味が鈍ったというアメリカ政府の認識のもと、バイデン現政権によってなされたものです。どうやら、アメリカ政府は制裁の効果の下降傾向を止めようとしているものと思われます。
イランに対する新たな制裁、特にその石油輸出を対象とする分野におけるバイデン政権の行動は、イランに対する最大の圧力キャンペーンの継続と見なされます。このキャンペーンは2018年5月に対イラン核合意から離脱したトランプ前米大統領の在任中に始まり、核、ミサイル、地域などの分野における米国の違法かつ、非論理的な要求をイランに呑ませる目的で開始されました。核合意からの離脱後、トランプ米前政権は、イランに対する最大の圧力キャンペーンの一環として、イランの石油販売を短期間でゼロに封じ込めると主張していました。しかし、イランを屈服させるという目標を達成できないまま、トランプ氏は2021年1月に大統領の座から引き摺り下ろされました。その一方で、イランはアメリカの圧力をものともせず、石油輸出を成功裏に続行していました。
バイデン政権の当局者と多くのアメリカの政治家はこれまでにも繰り返し、イランに対する最大の圧力キャンペーンの失敗という事実を認めています。コネティカット州選出のクリス・マーフィー民主党上院議員は様々な見解表明やツイートにおいて、核合意からの離脱により、イランとより強い合意を締結できるとしたトランプ氏の主張を誤りだとし、「核合意離脱を過去半世紀のアメリカの対外政策における愚の骨頂の最大の事例だ」と語りました。そして、イランに対するトランプ氏の最大の圧力行使制裁からは何も得られておらず、米の核合意離脱によりイランがさらに強くなったことを認めています。
こうした中、核合意復帰という、バイデン現米大統領の当初のスローガンに反して、アメリカ政府は実際にはそれに反する行動をとり、トランプ前政権の失敗した対イラン政策に従い、トランプ氏の二の舞を演じています。新たな対イラン石油禁輸制裁も、イランの行動を変えさせアメリカの要求に従わせるためには、大規模な制裁を有効だとする、トランプ前政権と同じ失敗した論理に従って実行されているものです。特に、核合意復帰という米の提案に対するイランの回答・反応により、バイデン政権の当局者はもはや、イランがその論理的および法的要求を破棄するのでは、という望みをもてなくなりました。
イランは、制裁解除の検証確認、核合意の恒久性に関する保証の取得、IAEA国際原子力機関の保障措置面での疑惑点の解消を、制裁解除協議における主な要求として提示し、いくつかの制限と引き換えに、イラン国民にとって可視的な経済的利益をもたらす二者間合意のみに復帰し、それを受諾すると強調しています。これまでのところ、バイデン政権の先延ばしとイランの正当な要求の受け入れ拒否により、オーストリア・ウィーンでの制裁解除協議が長引いています。実際、これらの交渉の失敗の可能性については米国が責任を負うことになるのです。