南部シーラーズのエラム庭園;イランの素晴らしい歴史的庭園 + 写真
エラム庭園は、他では見られないイランの優れた歴史的庭園のひとつであり、イラン南部ファールス州の中心都市シーラーズにある庭園の中でも代表的なものです。
総面積11万平方メートルにおよぶエラム庭園は、長方形の敷地に建てられており、その噴水は世界的に有名です。
シーラーズ市は、サアディーやハーフェズのような世界的な詩人の出身地として知られているだけでなく、昔から緑あふれる庭園と花々、美しい歌声を持つナイチンゲールの街として、世界的にその名声が広まっていました。そのような名高く見所にあふれた庭園の一つが、エラム庭園です。
謎に包まれたエラム庭園の歴史
エラム庭園の実際の歴史や建設の過程については、明らかになっていない部分が多くあります。この庭園の建設についての現存する初期の歴史的資料には、いくつかの旅行記に見られる記述が挙げられます。
庭園の名前となっている「エラム」という言葉は、天空を意味するアラビア語の「イラム(Iram)」に由来します。この言葉は、イスラム教の聖典コーランでも幾度も用いられています。
資料によれば、この庭園の建設は、セルジューク朝のスルタン・サンジャル(在位:西暦1118年~1157年)によってアターベク・ガラ―チェがファールス地方の統治を任されていた時代に遡るとされています。
エラム庭園内にある建物は、今から約200年前のガージャール朝時代に建てられました。この建物で最も目を引く部分は、2階建ての中央ポーチで、その上の半円形の部分には、歴史、神話、文学作品の人物などをモチーフとしたタイル装飾が施されています。
エラム庭園はガージャール朝時代、75年間にわたりガシュガーイー族の指導者たちによって使用されていました。ガージャール朝の為政者ナーセロッディーン・シャーの治世には、庭内に今も残る新たな建物が加わりましたが、その建築様式、彩色、タイル装飾、漆喰装飾は、イラン建築の傑作の一つに数えられています。
3階建てのこの新たな建物は、色鮮やかなタイルと美しい漆喰で装飾されており、半地下にある最下階の部屋は、夏の暑い日の休息所として使用されていました。また、上部の階には、遺跡・ペルセポリスから運び込んだ柱が設置されています。
敷地内にあるそれぞれの建物と庭園
この建物内に冷却装置がなかった時代、住人たちは夏の酷暑をしのぐために地下室を利用していました。壁と床が色とりどりのタイルで装飾された地下室は、夏の集まりに好ましい雰囲気を醸し出しています。
庭園内の扉や窓も、他に劣らない美しさを備えています。格子で模様を作った鉄製の窓を持つこの建物には、採光も十分なものです。扉も、そのほとんどがチーク材で作られていることから、今日までその姿を留めています。これらの扉には象嵌細工も施され、それぞれが素晴らしい芸術作品となっています。
円形のアーチ、実物と見まがう油絵、タイル装飾、丸天井の浮彫り、庭に面した大きな窓、堅固な石柱、漆喰装飾、象嵌細工、石の彫刻などは、すべてが他の場所では見られないものであり、この庭園の建物の特色となっていいます。
エラム庭園は、2011年にユネスコの世界遺産に登録された、9つのイラン式庭園のうちの1つです。他の8つの庭園は、ファールス州マルヴダシュトのパサルガダエ庭園、中部イスファハーン州のチェヘルソトゥーン庭園、中部カーシャーン州のフィーン庭園、北部マーザンダラーン州ベフシャフルのアッバース・アーバード庭園、南東部ケルマーン州のシャーフザーデ庭園、東部・南ホラーサーン州ビールジャンドのアクバリーイェ庭園、中部ヤズド州のドウラト・アーバード庭園およびパフラヴァーンプール庭園となっています。
観光客が多く訪れるエラム庭園
ファールス州の文化遺産・手工芸・観光局長であるムハンマド・サーベト・エグリーディー氏は、今年3月14日~30日までに同州を訪れた観光客が131万1628人に上ったと発表し、その主な訪問先の一つがエラム庭園であったとしました。