イラン最高指導者:「イスラム共同体にとって最大の利益は団結」/メッカ巡礼哲学をめぐる視点
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メッカ巡礼関係者およびカアバ神殿巡礼者らの群衆に応えるイラン最高指導者のハーメネイー師
イラン・イスラム革命最高指導者のアリー・ハーメネイー師が、「神がイスラム教徒のメッカ巡礼・ハッジの義務を定めた目的は、人類の統治に方向性を与える完全なモデルの提供にある」とし、「この義務の構成と外形は完全に政治的であり、その構成要素の内容は全人類の利益が確保されるよう完全に精神的かつ信仰的なものとなっている。今日、イスラム共同体・ウンマの最大の利益は、イスラム世界の問題を解決するための『団結と相乗効果』である。この団結があったなら、ガザやイエメンのような問題は起こらなかったはずだ」と語りました。
ハーメネイー師は4日日曜、メッカ巡礼関連業務の関係者やカアバ神殿の巡礼者の群衆との会合で、先般イラン南部バンダルアッバース市内の港湾で発生した悲惨な事件で命を落とした人々の遺族に哀悼の意を表すとともに、これらの同胞と遺族らの忍耐強さと平安を祈願し、「神は、様々な状況で人間が示す忍耐に対して、千倍もの価値ある報酬を与えられる」と強調しています。
また、「自然・人為的災害による施設の損害は他の機関の努力と能力の助けによって補填が可能だ」との見解を示し、「人々の心を焼き焦がすのは、この事件を我々全員にとっての悲劇とせしめた『失われた愛しき家族』である」と述べました。
さらに、「巡礼者にとって、メッカ巡礼の目的及びその様々な側面への理解・認識や英知は、この義務の正しい遂行にとって非常に重要である」とし、イスラムの聖典コーランの複数の節を引用して「メッカ巡礼に関連する多くの節では「人類」という用語が使用されている。このことは、神がイスラム教徒だけでなく全人類に関する事柄を統治するためにこの義務を定めたことを示すものだ。したがって、メッカ巡礼を適切に行うことは人類への奉仕ということになる」としています。
そして、メッカ巡礼における認知すべき点を説明する中で、「メッカ巡礼は、その形式と構成が100%政治的なものとなっている唯一の義務である。メッカ巡礼では毎年、特定の目的のために人々が同じ場所と時期に集めるため、この行為の本質は政治・政策的なものである」とした上で、「メッカ巡礼の構成要素の内容は 100%精神的かつ信仰的なものであり、その各々が人間の生活における諸問題や必要事項に象徴的、教訓的に言及している」と語っています。
加えて、これらの象徴について説明するにあたり、「カアバ神殿の周囲を回る行為・タワーフが教示する内容は、一神教が中心的存在であること、及び中軸の周囲を回ることの必要性である」とし、「タワーフという行為は人類に、政体、生活、経済、家族、そして人間生活の諸問題が一神教を中心に構築されるべきことを教えている。またこの場合に、残虐行為や子供の殺戮、行き過ぎた行動は鳴りを潜め、世界は楽園となる」と述べました。
また、「サファーとマルワの2つの丘の間の試練(メッカ巡礼で巡礼者が試練への忍耐としてこの2つの丘の間を7往復する行為)」を、多難をはらむ山々の中で人が絶えず努力する必要性や、中断および躊躇、怖気が許されないことを示すものだとし、「祈祷の場・アラファト山、テント生活の場・マシュアル、投石の地・メナーへの移動」を、常に前進し停滞を避けるべきことを教え、また犠牲とは、人間は時には最愛の人をも犠牲にし、何かを擲ち、あるいは自らも犠牲にならなければならないという事実を象徴するものでもある」と付け加えています。
さらに「ジャマラートと呼ばれる石打ちの儀式は、人間が悪魔と人間を識別し、悪魔はどこで見つけても攻撃し滅ぼさなければならないという点を神が強調したものである」とし、「特別な状態にあることを示す特別の白衣・イフラームを身にまとうことは、神の御前における謙虚さと人類が全て平等であることのしるしである。そして、これらすべての行為は人類が生きていく上での指針を示している」と語りました。
加えて、コーランの一節を引用し、「メッカ巡礼により生まれた『大群集』の目的は人類の利益の多様性を理解し、実現することにある」とし、「今日、イスラム共同体にとって団結以上に大きな利益は存在しない。もしイスラム共同体の間に団結、調和、そして相互成長・相乗効果があれば、ガザとパレスチナで現在起こっている悲劇は起こらず、イエメンがこのように圧迫されることもないはずだ」と述べています。
そして、「イスラム共同体の分断・分裂は、植民地主義者、アメリカ、シオニスト政権イスラエル、その他の偏狭な輩の利益と野望を各国に強要する上での前提条件である」とし、「イスラム共同体の団結があれば、イスラム諸国間の安全、発展、相互成長、そして相互援助が可能になる。メッカ巡礼の機会もこの観点から捉える必要がある」としました。
また、メッカ巡礼の真実と目的を説明する上で「イスラム諸国の政府、特に受け入れ国の政府の役割と義務は重大である」とし、「政府の役人、学者や知識人、文筆家、世論に影響を与える人々は、メッカ巡礼の真実を国民に説明する義務がある」と語っています。
なお、ハーメネイー師の声明に先立ち、同師のメッカ巡礼および巡礼問題担当代表でイラン人巡礼団長であるアブドルファッターフ・ナヴァーブ師は、今年のメッカ巡礼のスローガンに「コーランに従った現行、イスラムに沿った同調、抑圧されたパレスチナへの支援」を掲げ、今年の巡礼者向けの同組織の計画について説明しています。
またイラン・メッカ巡礼機構の代表を務める同師は報告書において、「今年は8万6000人のイラン人が123の空港から574の団体を結成して啓示の地へと旅立つ予定だ」と語りました。
ちなみに、今回の会合の冒頭でメッカ巡礼関係者が行った演説の項目には「過去8か月間における21万回の巡礼(ウムラ)の実施」、「巡礼本部部隊とサービス提供者の能率向上」、「今年のメッカ巡礼のうち2団体を在外イラン人向けに充当」、「イラン人巡礼者への最大限のサービス提供に向けたメッカ巡礼業務の実行担当者とサービス提供者による完全な準備」などとなっています。