イラン観光の魅力;イラン中部ナタンズ行政区、心地よいそよ風がなびく砂漠(画像)(動画)
(last modified Wed, 14 Sep 2016 07:43:02 GMT )
9月 14, 2016 16:43 Asia/Tokyo

イラン中部の町カーシャーンと歴史的な街イスファハーンの2つの町の近隣に、美しい古代都市ナタンズがあります。

ナタンズには、美しい自然と数十もの観光名所があることから、毎年数多くの観光客がここを訪れています。

ナタンズは、砂漠の近隣に位置していますが、その気候は温暖で心地よいものです。この町の西部と南部は、キャルキャス山の谷間にあり、格別の緑に恵まれています。

 

ナタンズ

 

この町の緑の豊かさは、背の高い樹木や数多くのいずみの存在などによるものです。この地域では、各種の果物や穀物が収穫され、中でも西洋梨とざくろは特に有名です。

 

旧跡・史跡について

ナタンズには史跡・旧跡が数多く存在することから、この町は紀元前4000年ごろから存在していることが認められています。この町は、気候的、地理的に好ましい条件を有していることから、かつてはイラン南部および中部の隊商の一行の通過地点とされていました。特に、サーサーン朝時代には、この地域は非常に重要な地域とされていました。

 

ロバート・サングの要塞

 

ナタンズは、サファヴィー朝時代に隆盛を極めました。

この時代から残る遺跡には、この町の北部と南部にあるアッバースアーバードとタージアーバードの宮殿、またキャルキャス山脈の頂の1つにそびえるゴンバド・バーズが挙げられます。

 

タージアーバード宮殿

 

アッバースアーバード宮殿

 

ゴンバド・バーズ

 

 

ゴンバド・バーズ

 

 

巡礼施設

 

ナタンズ中心部にある緑豊かな庭園に入るとすぐに、背の高いミナレットと、その脇に立っているピラミッド型のドームが目を引きます。これらは、14世紀の高名な神秘主義者シェイフ・ヌーレッディン・アブドルサマドの墓廟と金曜モスクの驚くべき建造物群の一部です。

 

ナタンズのジャーメ・モスク

 

 

シェイフ・アブドルサマドの墓廟は、ブルーのタイルと赤いレンガの絶妙な組み合わせによる美しい建造物であり、今から700年以上前に建設されました。

シェイフ・ヌーレッディン・アブドルサマドの墓廟

 

金曜モスクは、シェイフ・アブドルサマドの墓廟のすぐ脇に建てられており、今から700年以上前に建てられたものです。このモスクの小さな中庭には、小さな池があり、その周囲には2つの階の礼拝スペースが設けられています。このモスクの中庭からは、デイラム王朝時代の簡素なレンガ造りのドームが見えます。

 

アーガー・アリーアッバースの霊廟

 

 

ナタンズ周辺には、これらのミナレットや史跡に加えて自然、特にキャルキャス山脈の周辺の谷の山岳地帯の美景、ミネラル分を含む清水の沸く泉、天然の洞窟、ダマスカスローズの咲き乱れるバラ園、伝統的なセラミックや陶器を製造する工房などが存在しています。

これらの工房では、手の込んだ美しい細工が施された木材による装飾品が製作されており、ナタンズの見所を語る上で旅行者にとって話題に事欠きません。

 

アブヤーネ村

この村は、その文化的な特徴や独自の風俗習慣、古来の建築様式が維持されていることなどから、常にイラン国内外の観光客で賑わっています。

この村は海抜2500メートル、イスファハーン州ナタンズ行政区から40キロ離れた、比較的急傾斜の斜面に位置しています。

見所のある美しいアブアーネ村は、ザグロス山脈の一部に当たるキャルキャス山脈の北西部にあります。

この村の人々の基本的なニーズ、そして農地や庭園の灌漑というニーズを満たしているのは、キャルキャス山脈の谷間を流れるバルズルード川であり、この村の緑の豊かさの鍵を握っています。

数多くの自然の絶景を有するアブアーネ村は、多数の史跡の宝庫でもあり、この村からの出土品は、イランの豊かな文化を物語っています。

 

アブヤーネ村の全景

 

 

アブヤーネ村の人々は、人口の集中する大都市や、各地を結ぶ幹線ルートから離れた山がちな地域に生活しているため、数百年間にわたって他の地域や諸都市とは交流がなく孤立した状態で生活してきました。

その結果、服装や言語をはじめとするこの村独特の民俗的な風俗習慣の多くが、今なお昔ながらのまま保持されています。

一部の研究者の間では、アブヤーネ村の人々が話す言語は、ゾロアスター教の経典アベスターに用いられたアベスター語にルーツを有し、使用される語彙には、中世ペルシャ語であるパフラヴィー語や中期イラン語のパルティア語、アケメネス朝時代の古代ペルシャ語の語彙が混ざっています。

この村の人々は、パフラヴィー語などの古いペルシャ語を話し、彼らの服装はイラン中南部のバフティヤーリー族のものに類似しており、それはサーサーン朝時代のものとされています。

この村の男性は、普通のシャツに丈の長いゆったりとした黒いズボンをはいており、女性は数多くのひだのあるスカートのほか、白地に赤やピンクの花柄のついた、大きめのスカーフをかぶっています。

 

アブヤーネ村の地元民の民族衣装

 

アブヤーネ村の女性たちは、農耕や牧畜での作業において男性とともに就労することに加えて、薄手の絨毯ガーリーやギーヴェと呼ばれる靴、銀製の装飾品などの製作といった手工芸にも携わっています。

この村の人々の独自の風俗習慣として、イスラム暦モハッラム月に行われる追悼行事があり、これはイラン中部のそのほかの地域のものと類似しています。

彼らは、特にイスラムの預言者ムハンマドの孫に当たり、圧制者と戦って殉教したシーア派3代目イマーム・ホサインを追悼する行事を初めとする宗教的な追悼儀式を、イスラム暦モハッラム月の9日(タースーアー、アラビア語で9を意味する)及び、10日(アーシュラー、アラビア語で10の意味)の日に、独自の方法で盛大に執り行います。このため、他の市町村からこの儀式に参加するため、数多くの人々がアブアーネ村にやってくるのです。

 

アブヤーネ村におけるモハッラム月の追悼儀式の様子

 

 

アブアーネ村における古来の、そして民俗性あふれる建築様式がこの上なく美しいものであることから、この村の家並みの全景は世界最大の見所とされています。

この村の歴史的な建造物としては、サーサーン朝時代のゾロアスター教寺院、アーナーヒーター寺院、モスク、要塞、巡礼所、サファヴィー朝時代の家屋、貯水槽などです。

数多くの古びた扉に刻まれている日付や、昔ながらの建物の造りなどから、この村の歴史が遠い昔に遡るものであることがうかがえます。

この村に現存する建造物を歴史的に調査すると、それらは主にセルジューク朝、サファヴィー朝、そしてガージャール朝時代の家屋の3つに分類することができます。

アブヤーネ村に存在する家屋は、銅分を含む赤茶けた泥でできており、時には4階建てのものも存在し、大変興味深く見ごたえがあります。

鉱物を含む赤土は、この村の外部から調達されたもので、しかもこの土には雨に打たれれば打たれるほど強度を増すと言われています。

 

アブヤーネ村

 

 

アブヤーネ村は、山の急な斜面に立地していることから、下の階の家の屋上が上の階の中庭になるという面白い構造になっており、このことからこの村の全景を遠くから俯瞰すると美しい階段が連なっているように見えます。

家屋の建築様式、内部空間の造りや間取りは、この村の気候風土の特徴に注目したもので、特に暑い季節と寒い季節におけるエネルギーの浪費を防ぐため、様々な工夫が凝らされています。

例えば、外壁の素材には分厚い日干し煉瓦を用い、また壁や屋根には泥と藁を混ぜた素材を使用しているほか、天井は木材でできています。さらに、冬用と夏用の空間が別個に設けられていることも、アブヤーネ村の建築様式の特徴といえます。

 

アブヤーネ村の全景

 

 

外的な景観の点においても、この村にある家屋の窓枠や扉は全て、天然色の木材で造られています。昔ながらの造りの建物の窓枠には、細かい細工が施されており、また扉にも美しい彫刻が見られます。

外の路地に面したテラスが設けられているのは、山岳地帯の美しい展望を活用していることに加えて、家並みの景観に美しさを添えるものであり、さらに、太陽熱や太陽光線が合理的に活用されることになります。

アブヤーネ村

 

アブヤーネ村のもう1つの見所は、ジャーメ・モスクであり、様々な時代に改修工事が行われています。このモスクの内部にある、メッカの方向を示す壁がんは、胡桃の木を素材とするこげ茶色の木材でできており、エナメル細工が施されているとともに、コーランの章句が刻まれています。なお、この壁がんは今からおよそ1000年近く前に造られたものです。

 

アブヤーネ村のジャーメ・モスク

 

 

アーブヤーネ村にあるそのほかのモスクのうち、ポルザレ・モスクはイルハン朝時代、そして、ハージャトガーモスクはサファヴィー朝時代のものとされています。

このモスクの天井の表面には、美しい幾何学模様によるデザインや縁取りが見られ、緻密で興味深い木材が使われています。

また、この村の中心部にあるハールパーク・拝火壇は、サーサーン朝時代の建造物の1つとされています。

全体として、アブーヤーネ村は歴史的な名所旧跡の存在もさることながら、赤土で出来た美しい家並み、日焼けした顔に色鮮やかな民族衣装を身につけた人々が存在し、村全体が今なお生き続ける民族博物館のような様相を呈しているのです。

 

アブヤーネ村

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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