1日1冊、本の紹介(55)
成人とは異なる存在であり、特殊なニーズや要望を持つ、子どもへの注目は、いつごろから始まったのでしょうか?
イランの児童文学の歴史はいつごろから始まり、また子どものために執筆された初めての書籍は、どのような内容だったのでしょうか?
初の児童書の登場は突発的なものではなかったことは言うまでもなく、児童文学の出現や児童文学作品の出版における長い歴史においては、複数の要因が関係しています。そうした要因には、教育や躾に対する捉え方の変化や、児童青少年の間で大衆的な物語や伝説が好まれる傾向が続いていること、ペルシャ語の散文の簡易化、イランに印刷機が導入されたこと、児童心理学の発展やこの分野における子どものニーズへの注目、といった事柄が影響しています。
『イラン児童文学史』という書籍は、10巻にわたる全集であり、イランにおける児童文学の歴史の変遷や、その建設的な要素について知る上での助けとなります。この書籍の編纂者は、信用できる史料や学術的な根拠の助けを得て、この分野に関する疑問の1つ1つに回答しています。この研究計画の筆頭になっているのは、イランにおける文化と文学という概念の出現、口承文芸あるいは大衆文化、伝説、子守唄、童謡というカテゴリーについての研究です。
この全集における項目は、子守唄や童謡、子供向けの伝説を初めとする口承文芸と古代、イスラム時代のイランの文化の研究、立憲革命時代におけるイランの児童文学の歴史、イランの社会に対する西洋文化の進出と影響、イランにおける現代児童文学の形成、1921年から1961年にかけてのイランの児童文学の教育、1961年から1979年のイスラム革命の勝利の時期までの児童文学、となっています。
この著作は、包括的な研究書といえます。それは、古代や口承文学の時代の開始以降の児童文学の形成過程をたどっているのみならず、アゼルバイジャン文学やクルド文学、アッシリア文学、アルメニア文学、ユダヤ文学といったイランの様々な民族や宗教の児童文学を研究対象としているからです。
この全集の編纂に当たったのは、モハンマド・ハーディー・モハンマディ氏とゾフレ・ガーイーニー氏であり、この全集はこれまで12年間にわたって、段階的に出版されています。