1月 22, 2020 21:55 Asia/Tokyo
  • ヴェレスク橋
    ヴェレスク橋

今回は、イランにある最も重要な橋の1つであるヴェレスク橋をご紹介してまいりましょう。

 

アルボルズ山脈にそびえる山々の間から時折聞こえ、岩山の間に響き渡る轟音には、思わずはっとさせられるものがあります。

列車は、山々の中の線路を走り、山腹に残る城砦の廃墟の脇を通って、時には陰になった場所から明るい場所へと向かって進んでいきます。

今から87年前、デンマークのある企業が、イランの北部から南部を結ぶ鉄道の敷設協定に調印しました。この企業の責任者は、重責を担ったことを感じていました。というのは、それ以前に欧米諸国の企業がアルボルズ山脈の間を切り開く作業に失敗していたからです。しかし、アルボルズ山脈の航空写真を目にした彼らは、北部マーザンダラーン州の村アッバースアーバードに大きな困難が存在することに気づきました。

アッバースアーバード村は、マーザンダラーン州の山岳地帯を背にし、かつては伝統的な村落とされていましたが、時代の経過とともに別荘地となり、現在ではヴェレスク村として知られるようになりました。

一部の人々の間では、ヴェレスク村という名称は、外国人技術者の名前からきたものだと考えられていますが、中にはこの村に自生する、ヴェレスクという潅木に由来する、と考える人もいます。

かつては、列車でアッバースアーバード村を通過し、10キロもの道のりを経て、600メートルにおよぶ山中の路線を、峠のトンネルに向かって進まなければなりませんでした。しかし、このような上り坂を列車で上る事は不可能であるため、山の斜面に3段階に渡る路線を敷設する計画が立案されました。これらは黄金の3大路線として名声を博しています。

 

ヴェレスク橋

 

しかし、この黄金の3大路線が存在するにもかかわらず、アッバースアーバード村における作業場の困難は根強く残りました。この美しい村は、110メートルもの落差のある峡谷に位置していた事から、山の向こう側の村との連絡や行き来が極めて困難であり、しかも列車の終着点はその通過点にありました。この問題を解消するため、あるスイス人技師がこの谷間を結びつける橋の設計を思い立ち、測量を実施しました。

イランにおいて、ヴェレスク村の測量技師として知られていたあるオーストリア人は、今から84年前の秋に、橋梁の建設作業の現場監督を開始しました。この橋は、当時の工学技術の最高傑作となり、ヴェレスク橋としての名声をほしいままにしました。

この橋の建設に当たっては、有能なイラン人労働者や手製の簡素な機材により、まずはじめに2つの柱が、それからコンクリートの足場が造られ、その上に橋の基礎部分が建設されました。この建設作業の段階の一部は、ヴェレスクの測量地図に記載されています。

ヴェレスク橋は最終的に、今から82年前に開通し、テヘランがイラン北東部の町ゴルガーンと結ばれることになりました。この橋が開通した日に関する一部の言い伝えにおいては、パフラヴィー朝の国王レザーシャーの命令で、この橋を始めて列車が通る際に、技術者のリーダーがこの橋の下に立ち会ったとされています。それは、この橋を列車が通れるとは誰も信じていなかったことによります。語り伝えられているところでは、列車の運転手さえも、この橋を通り抜ける勇気がなく、石炭を追加する役目の作業員が、列車を橋の下から通過させた、ということです。

ヴェレスク橋は、全長73メートル、アーチになっている部分の全長は66メートルあり、1つの大きなアーチと小さな10箇所のアーチがあり、谷底からは100メートルの高さに位置しています。

ヴェレスク橋は、山岳地帯の厳しい自然に打ち勝った、人類の知恵と技術の勝利のシンボルであり、砂利とレンガ、セメントのモルタルが使用されており、その本体にはコンクリートが使われています。

この橋は、第2次世界大戦中はナチスドイツ軍により、包囲されたソ連軍に新物資を送る役割を果たしていたことから、当時のイギリスのチャーチル首相により、勝利の橋と呼ばれていました。

これらの山岳地帯や谷において、鉄道が長持ちしていることは、酷暑酷寒の中でも列車が、線路上をゆっくり走行していることによります。

ヴェレスク橋は、テヘランからマーザンダラーン州南部の町ガーエムシャフル、サヴァードクー、ヴェレスク峡谷までの85キロのルート上に位置し、これまでどおりテヘラン北部全域の鉄道を結ぶ架け橋となっています。

 

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