六ヶ所村再処理工場、26回目の完成延期 核燃料サイクル「破たん」の指摘久しく
日本原燃株式会社は、青森県六ヶ所村で運営する使用済み核燃料再処理工場の完成時期について、目標の今年度上半期を断念すると発表しました。同工場の完成延期はこれで26回目です。
日本原燃の再処理工場は1993年4月に建設工事が始まり、1997年に完成予定でした。しかし、その後技術トラブルや審査の条件を満たしていないなどの理由で、今日まで完成が延期されてきました。
日本原燃の増田尚宏社長は29日の記者会見で、同工場の今年度上半期中の完成目標を断念すると発表しました。延期は2020年8月以来です。
東京新聞によりますと、再処理工場は2020年7月、原子力規制委員会の審査で新規制基準に合格しました。その後、設備着工に必要な詳細設計などの審査について、日本原燃は3回に分けて申請する計画をつくり、昨年12月に1回目の申請を規制委に出しました。
しかし、審査が始まると、規制委側の質問に答えられないなど原燃の準備不足が露呈。今年4月末には、原燃の役員が規制委側に審査用の資料の用意ができたと伝えたものの、実際にはできていなかったことが発覚するなど、社内で進捗状況が全く共有されていない有様でした。
追い討ちをかけるように、7月2日には工場内の放射性廃液の冷却機能が8時間あまりにわたって喪失する事故が発生しました。
六ヶ所村の再処理工場は、建設費だけで当初約7600億円と見込まれましたが、昨年時点で3兆円超と約4倍に膨らんでいます。
そもそも、日本の核燃料サイクルの現状を見たとき、再処理工場自体が不要という指摘もあがっています。六ヶ所村には使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理工場と、取り出したプルトニウムにウランを混ぜるMOX燃料工場の2つがあります。
MOX燃料による発電をプルサーマル発電と呼びますが、その代表格だった高速増殖炉「もんじゅ」は、2016年末に政府が廃炉を決定。国内の他の原発で、プルサーマル発電が可能なのはわずか4基です。
そのため、プルトニウムの消費量は一向に増えず、内閣府が7月12日に発表した統計では、昨年末時点で各電力会社が保有するプルトニウムは計約45.8トン(うち約36.5トンは英仏で保管)に上ります。
内閣府は、四国電力・伊方原発3号機によるプルサーマル発電で、プルトニウム保有量が前年より0.3トン減ったとしています。しかし、プルサーマル発電によるプルトニウム消費量は1基あたり年最大0.5トンで、国内4基すべてが稼働しても年2トンしかプルトニウムを消費しません。その間にも他の原発から出る使用済み核燃料でプルトニウムは溜まっていきます。
使い道がなく、行き場のないプルトニウムを出し続ける日本の核燃料サイクル。すでに破たんしているとの指摘が出て久しいものの、政府・電力業界ともになし崩し的に計画を続行しています。