五輪汚職、疑惑の焦点は森喜朗氏に
東京五輪のスポンサー選定に絡む汚職疑惑で、東京地検特捜部は五輪組織委会長を務めた森喜朗氏に任意で事情聴取しました。また、森氏がスポンサー候補だった出版大手2社のトップと面会していたことが判明するなど、ここにきて森氏が疑惑の中心に急浮上しています。
毎日新聞によりますと、特捜部は森氏への聴取で、逮捕された組織委元理事の高橋治之容疑者(78)が理事に就任した経緯や職務権限について確認したとみられます。
産経新聞は今月1日、大会スポンサーだった紳士服大手・AOKI前会長の青木拡憲容疑者(83)が、森氏に対して現金200万円を手渡したと特捜部に供述したと報じました。
青木容疑者は、AOKIが五輪スポンサーに選定されるよう高橋容疑者に便宜を依頼し、賄賂を贈った疑いが持たれています。
産経新聞によると、青木容疑者は、森氏に2回にわたって「がん治療のお見舞い」として、現金を直接手渡ししたと供述しているということです。
捜査関係者は、青木容疑者が高橋容疑者に依頼して、2017年7月に森氏との面会の機会を得、その後複数回にわたって会食するなどしたということです。青木容疑者は面会時の会話を録音しており、特捜部が押収しています。
また、毎日新聞は10日、高橋容疑者が2017年にスポンサー調整のため、出版大手・KADOKAWAと別の大手出版社双方のトップが面会する機会を設け、そこに森氏も同席していたと報じました。
それによると、高橋容疑者はKADOKAWAと別の出版社がともに五輪の出版分野のスポンサーとなることを企図し、この面会をセッティングしたということです。面会は2017年5月に東京・赤坂の飲食店で行われ、KADOKAWAからは角川歴彦会長、顧問の芳原世幸容疑者(収賄容疑で逮捕)が、別の出版社からは同社社長、さらに高橋容疑者の知人で、KADOKAWAからの賄賂の受取先に指定されていたコンサルティング会社を経営していた深見和政容疑者も同席していたということです。
この席で森氏は、過去にこの出版社が出した雑誌記事に因縁を持っていたため、その場で「嫌いだ」などと発言し、両者が合同でスポンサーになる計画は流れたといいます。その後、2018年にこの出版社は正式に五輪スポンサーを辞退、翌2019年にKADOKAWAが協賛金2億8000万円でスポンサーに選ばれました。
なお、週刊文春はこの別の出版社を講談社と報じています。
KADOKAWAはその後2021年1月まで、複数回にわたって深見容疑者の会社にコンサル料との名目で約7600万円を振り込んでいます。
芳原容疑者と一緒に逮捕された、元KADOKAWA社員の馬庭教二容疑者(63)は特捜部の調べに対し、この7600万円がKADOKAWAのスポンサー選定に対する元理事側への謝礼目的だったと認めています。