名古屋城復元工事のバリアフリー計画に、障害者団体が抗議
名古屋城の木造復元事業で、名古屋市が天守閣にエレベーターではなく小型昇降機の設置を検討していることについて、愛知県内の障害者団体などが市に抗議文を提出しました。
毎日新聞によりますと、抗議文は7日、県内約15の障害者や関係者の団体で構成された「名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会」が、県内26の障害者団体からなる「愛知障害フォーラム」と連名で提出しました。年内にも回答するよう求めています。
名古屋市は5日、天守閣を上り下りする設備としてエレベーターの代わりに小型昇降機を設置する計画を明らかにしました。この昇降機は、名古屋市内にある三菱重工業の子会社「MHIエアロスペースプロダクション」が船や飛行機に搭乗する際の技術を応用して開発したもので、車椅子利用者1人と介助者1人、または4人が乗車可能な設備(1・5メートル×1・6メートル)を各階に設置し、壁をつたって昇降する仕組みです。エレベーターと違い、柱などを傷めないのが特徴とされています。
名古屋氏の河村たかし市長は同日の記者会見で「合理的配慮をしないといけないので、(昇降機は)それが十分だと言える設備ではないか」とし、昇降機が上がれる階数については2階までとし、それ以上は市長がこだわる史実に忠実な復元を損なうとして拒否する考えを示しました。
今回の抗議文では、河村市長のこの発言について、「反バリアフリー的で、合理的配慮とは何か全く理解しない発言」と批判。昇降機そのものについても「車椅子1台が乗り降りできる、限られた設備でバリアフリーからはほど遠い」としました。
しかし、河村市長は抗議をうけてもなお、「復元して残していくのが任務。よく話をすれば分かってもらえると思う」と述べ、昇降機でも2階までしか上がれない設計については、「撤回するわけがない。最上階まで上がることが合理的配慮なのか」と反論しました。
河村市長は2018年、「史実に忠実な復元」を理由として、復元後の天守閣にはエレベーターなどを設置しない方針を表明しました。その後、障害者団体などからの抗議をうけ、代替設備の設置を検討する方針に軌道修正していました。