京都新聞社説
ワクチンへの異物混入に求められる丁寧な説明
京都新聞が、5都県8カ所の接種会場で今月16日以降、使用前の新型コロナウイルス予防ワクチンに相次いで異物混入が見つかり、ワクチン接種の信頼性に関わる事態が発生していることを明らかにしました。
京都新聞によりますと、厚生労働省は今月26日、接種会場で米モデルナ製ワクチンの瓶から異物が見つかったと発表しました。
同省はこれを受け、同じ製造ラインで作られた計163万回分のワクチンの使用見合わせを要請しましたが、対象のワクチンは全国に配布され、京都府が今月21、22両日、922人に使用されたとしたほか、滋賀県でも19~25日に2660人にすでに接種済みとなっています。
河野太郎行政改革担当相は27日土曜、使用を見合わせるとしたワクチンのうち「50万回強は接種済みと把握している」と述べており、この表明に照らせば約3分の1が使われた計算になります。
しかし厚労省は、当該のワクチンが全国863カ所に納入されたとする一方で、具体的な場所は「整理中で、とりまとめができていない」として明らかにしておらず、また「安全性の問題は確認されていない」と表明しています。
問題のモデルナ製は、自治体の集団接種や企業などの職域接種で使われており、問題のワクチンはスペインの工場で作られたものです。また問題異物は「黒い小さな物質」で、金属片の可能性もあるとみられますが、特定には至っていません。
これらの一連の問題に関して、京都新聞の社説は、「異物の分析や混入した原因究明が急がれる。国民の不安を払拭(ふっしょく)するため、リスクに関する確かな情報発信が必要」、「これでは疑念は増すばかりだ」として問題提起しました。
また、日本国内で「結果的に異物混入の可能性があるワクチンの使用が広まってしまった。 各地では接種が急きょ中止になり、混乱が広がっている」として、「いずれも目視で確認し、混入の可能性は低いとしているが、接種を受けた人の不安には丁寧に応えてほしい」と要求しています。
さらに、関係者側の「対応の遅れも見過ごせない」として批判し、混入の情報を得てから使用停止の判断をするまで、厚労省や、販売・流通を担う武田薬品工業はもっと早く対応できなかったのか。各地では接種が急きょ中止になり、混乱が広がっている。スケジュールが滞らないよう、安全性を確認した代替品を速やかに供給する必要がある」として迅速な対応策を講じるよう訴えています。
最後に、「感染拡大が収まらない中、政府はワクチン接種を対策の切り札としているが、受けるかどうかは任意だ。副作用が心配などと不信感を抱く人もいる」として、 今回の事態でワクチンそのものへの不信を広げないためにも、「迅速で正確な情報開示と十分な説明が求められる」と結びました。
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