日本政府が「ロシアが北方領土を不法占拠」の立場を鮮明に、平和条約交渉は難化
北方領土について日本政府はウクライナ情勢を踏まえ、日本固有の領土でロシアが不法に占拠しているとの立場を鮮明にしていますが、ロシアとの平和条約交渉は一層困難な情勢になる見通しです。
NHKによりますと、北方領土をめぐって政府は、安倍政権当時の2019年にはロシアとの平和条約交渉に支障をきたすおそれがあるとして、「固有の領土」かどうかの認識について答えを控えたいとする答弁書を決定しています。
しかし、ウクライナにおけるロシアの特殊軍事作戦が続く中、岸田首相は今月7日の国会で「私自身用語を使い分けた記憶はないが、いずれにせよわが国の固有の領土だ」と述べ、政府としてこれまで控えていた表現で明確に答弁しました。
林外相は今月8日、「今までは外交的な観点から『わが国が主権を有する島々』との表現を用いてきた」とした上で「今の状況に鑑みると平和条約交渉の展望を申し上げる状況にはなく、そうしたことも踏まえて申し上げている」と説明し、ウクライナ情勢を踏まえたものだとの認識を示していました。
また「ロシアによる北方領土の占拠は法的根拠を何ら有していないという意味で不法なものだ」と述べ、北方領土をめぐる立場を鮮明にしています。
政府としては北方領土に対する原則的な考え方を訴えるとともに、力による一方的な現状変更の試みを認めない姿勢を国際社会に強く打ち出すねらいもあるものとみられ、ロシアとの平和条約交渉は一層困難な情勢になる見通しです。
一方、ロシアのガルージン駐日大使は先月25日、「日本政府がロシアと日ロ関係に対して逆効果となる措置を取ったのは大変遺憾だ」と述べ、北方領土問題に影響が出ることを示唆しました。
ロシアは先月24日より、ウクライナ東部から独立を宣言したドネツク共和国およびルガンスク共和国を支援するため、ウクライナでの特殊軍事作戦を開始しました。
ロシア政府は、「ウクライナでの自国の作戦」は開戦目的ではなく、あくまでも世界レベルでの戦争の阻止が目的であるとしています。
しかし、日本やヨーロッパ諸国、アメリカを初めとする世界の多くの国は、直ちにロシアのこの行動を対ウクライナ戦争だとして非難し、ロシアに対する経済制裁・外交的圧力の強化を開始しました。
ロシアはこれに先立ち、何度も西側諸国に対し、ウクライナ東部のロシア系住民に対するウクライナ軍の攻撃や人権侵害が配慮されていないことに関して警告しています。